20. 再び食卓、談笑する二人
土曜日の夜。
漆紀は自宅に帰ると、相変わらず勝手に侵入してくる彩那を見てため息を吐く。
「どうしました竜王様?」
「いや……もう、なんか……慣れてきてる自分が嫌だっていうか」
「?」
なんのことか分からず彩那は首を傾げる。
「よし。ささっと着替えて夕食作りするか」
漆紀は自室に行くとそそくさと着替えて、洗面所で手を念入りに洗ってキッチンへ向かう。
「今日は俺がメニュー決める日だな」
そう言うと、漆紀は材料を取り出す。
「思いつきなんだけどタコスソースを買って来た。コイツでタコライスを作る」
「タコライス?」
漆紀は買い物袋からタコスソースを出すと、今度は冷蔵庫から挽き肉とトマトケチャップ、人参、ミニトマトを取り出す。
「手早く作れて旨い。んじゃ、まず人参を細かく切って、ミニトマトを半分に切るか。竜蛇、ミニトマト頼む」
「おっけーです」
漆紀と彩那はそれぞれまな板と包丁を用意し、漆紀が人参、彩那がミニトマトを切っていく。
「一通り切りましたよー」
「俺も大体細かく切れた。フライパンをコンロに置いて温めて……」
フライパンが温まってくると、食用油を入れてから人参を入れる。人参をヘラで動かしながら軽く炒めると、今度はフライパンに挽き肉を入れてヘラで動かしながら炒める。
しばし挽き肉を炒めて色が変わってくると、今度はミニトマトもつぎ込み少し炒めてからタコスソースを入れて味付けしていく。
「ここで少しトマトケチャップも入れて……あとは塩コショウを軽く振って炒めて……竜蛇、今のうちに皿にご飯盛ってくれ。カレー食う時みたいに」
もうすでに食欲を掻き立てる良き匂いが漂っている。
「了解です!」
彩那が平べったい更に白米を盛っていく。漆紀はフライパンの上に出来上がったタコスミートを見て満足げな表情を浮かべる。
コンロの火を止め、彩那が用意してくれた皿の上の白米にタコスミートを乗せていく。
「おっし。これでタコライス完成」
「早く食べましょうよ!」
漆紀は戸棚からスプーンを二人分取り出し、彩那に一つ渡すと二人ともテーブルに着く。
「よっしゃ、いただきます」
「いただきます」
出来上がったタコライスを早速漆紀と彩那は食べていく。
「炒め物をささっとやってご飯ってのでもいいけど、たまにはちょっとだけ洒落たもの食べても良いかなって」
「おいしいですよ。いいんじゃないですかぁ竜王様。明らかにダサい前髪の角なんかやってる割にはいい案だと思いますよ」
「あー……やっぱ前髪のこの角のヘアスタイルダメか? 鬼の角! って感じでやってるんだけど、妹からもダッサとかキッショとか言われちまったけど、アレは妹だからの感想かなぁって」
「いやそれは普通にダサいです普通に前髪下ろしてるほうがまだマシです」
「ぐっ、竜蛇も結構キツイこという時ってあるんだな」
「そういう変に特徴出そうとか考えるの、キョロ充とか弱者男性とかって言われる人の考えに当たっちゃうから無難なことをやってた方がいいですよマジで。一緒に歩くなら、私恥ずかしくてちょっと嫌です」
「えぇー……てか一緒に歩く気なのかよ竜蛇……この前の結婚ネタまだやる気かよ」
「そういう明らかに痛い勘違いヤローみたいなのはほんと気を付けたほうが良いと思いますよ」
「わかった、わかったから、これほどくから、これ以上言わんでくれ」
漆紀は前髪を鬼の一本角のようにゴムで束ねていたが、それを解いて前髪を下ろす。
「あー……」
「え?」
「前髪下ろしたらそれはそれでなんか引きこもりみたいでちょっと……」
「えぇー」
「あれですよ、かき上げればマシになりますよ」
「わ、わかった……」
彩那に思わぬ指摘をされた漆紀は申し訳なさそうな様子でタコライスを頬張った。




