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ガンギマリズム3 日常編  作者: 九空のべる(旧:ジョブfree)
第二章「流転する関係」
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14. 組み合わせ、技を見い出せ

小太郎は物陰に隠れて静かに様子を見守ったままであり、漆紀と世理架は小太郎に気付かずやりとりを続けている。

「漆紀君、魔法を活かせる戦術を色々考えてみたけど、やはり強力なのは霧だよ。水の放出や水の壁より、この霧こそが戦術的には非常に強い」

十分ほど話した世理架が漆紀にそう結論を出す。

「霧が?」

「ああ。シンプルに視界不良を起こして自分の姿を消す。もし敵に囲まれても、これをやれば全てリセットして反撃に出れる。こんな強力な魔法はなかなかない」

霧を出す魔法の戦術的強みは、視界不良にさせる事による状況逆転性にあるのだ。一対多数の戦闘となっても、霧を起こせば敵は漆紀の姿を捉えられず攻撃できない。散りじりになった敵を、漆紀は一対一を繰り返すことで安全に戦うことが出来るようになる。

「世理架さん。霧の中でも俺が使ってる魔法だからか、敵の位置はなんとなくわかるんだよ。霧の中なのに、どの辺に敵が居るとか、そういうの感覚でわかるんだ」

「そうなのか? なら、索敵能力もあるわけだ。他の魔法がなくてもこの霧だけでやれるほど強力じゃないか。戦う時は、初手で霧を出せばまず負けないだろう。敵も無防備だしな」

「なら、それでいいんでは」

「とはいえ油断するな、その霧の魔法は無敵ではない。やはり他の魔法の応用も考えた方がいい。まあ、実際にやるのは君だ。君の魔法についてわたしに出来るのはアドバイスだけだ。宗一君の時も、魔法に関してはアドバイスしか出来なかった」

そう言いながら世理架は宗一に魔法を教えた頃の事を軽く脳内で思い返す。

「じゃあ、色々戦術考えて来るよ世理架さん。あと、父さんに魔法を教えたのって……父さんが一体何歳の頃に?」

「何歳だったかなぁ……君より少し歳上の頃だったか? んー……」

「世理架さん、やっぱり長生きしててボケ入ってるんじゃ」

「失敬な! わたしは見た目の通り、脳も若いままだ! と、に、か、く!! 何かいい戦術や魔法の応用を思いついたら、わたしが相手になってやるからやってみると良い」

世理架は自信満々にそう漆紀に伝える。漆紀はというと、頭の中で既に魔法の応用や戦術を色々思考に耽り始めていた。

(俺の魔法、組み合わせたりするのも考えた方が良いか。こういうパズルみたいに組み合わせて良いものを考えるって、自分だとノーヒントでなかなか思い浮かばないなぁ)

漆紀が顎に右手を当てて考え込む。

「いざ本気で自分の魔法に向かい合ってみるとどうだい漆紀君、なかなかいい戦術や方法は簡単には思い付かないだろう?」

「そりゃそうだけど、世理架さんは得意なのかよ」

「わたしも得意ではない。が、コツならある。実践だよ、実際に自分に出来る魔法をいくつか何通りも組み合わせてみて使うんだ」

「実践あるのみ、か……んじゃ、早速やってみるか」

漆紀は右手に再び村雨を出すと、すぐさま村雨の刀身から霧を出す。

「で、何をやる気かな?」

世理架が少し期待を込めて問うと、漆紀は勢いよく村雨をフルスイングし。

「全方位ぶっ飛ばしだ!!」

霧で視界不良の中で、村雨の切っ先から一気に大量の水を放出した。

フルスイングによって漆紀の後方から斜め前方、計150度ほどの角度の範囲で津波の如き水が迸った。

「うわっ! 漆紀君、今何をした! いきなりわたしに水がかかったぞ」

「あ、やべ」

漆紀が霧の魔法を解くと、ずぶ濡れになった世理架が姿を現した。シャツが透けて、薄っすらと下着の影が見える。この格好で街中を歩くと好奇の目で見られてしまうと思い、漆紀は「やってしまった」と申し訳ない気持ちになる。

「だがまあ、良い使い方だ。霧で視界不良にして、周囲の敵を大量の水で押し流す。屋外では遠くに押し流すだけだが、これを屋内で囲まれた時に使えば、水圧で圧殺もできそうだ。わたしでなければ流されていたぞ」

「逆にあの水量で立ってられる世理架さんは何なんだよ……」

霧と水の放出。視界不良からの攻撃の組み合わせだが、屋外でやっても圧死や溺死は狙えないようだ。

「んじゃあ、違う組み合わせしてみるか。んー、次は…………どうしよ」

「おい、一応他人様をずぶ濡れにしたんだからごめんなさいぐらい一言ないのか」

「その……悪かったよ。言いづらかっただけなんだ。それより、早くも良さそうな組み合わせが思い付かない」

「んー、組み合わせを考えるなら魔法の性質や特徴に注目するのも良いだろう。例えば、今やった水の放出は……切っ先からしか出来ないのかい?」

「あっ……ムラサメ、切っ先以外から水出せるか?」

漆紀が鉄塊の首飾りを軽く握ってムラサメに問うてみると。

『いや、刀のどんな部分からでも出せる。鍔からも、柄頭からも』

そう言われ漆紀は首を傾げる。

「世理架さん、柄頭って何?」

「刀の柄の後ろの部分だ。尻尾の部分。底って言ってもいい」

世理架が教えると、漆紀は間抜けた顔で「へー」と感想にもならない声を漏らす。

「ん? こんな後ろの方から水出せるなら……」

漆紀が村雨を逆手に持って、槍投げの構えで振りかぶる。

「てや!」

廃墟のコンクリートに向けて刀を投げるが、投げる瞬間に柄頭から一気に水が放出され刀が投げ飛ばされる際の勢いが大幅に増す。

刀は勢いよくコンクリートにぶち当たると切っ先がコンクリートに突き刺さり、刀の重さでそのまま地べたに落ちた。

「おお、結構な威力だね。それを竜化した状態で投げたらひとたまりもないなぁ」

世理架が竜化という単語を出すが、漆紀は顔を顰める。

「竜化って、文字通り竜と化すってことだよな」

「そうだ、竜王は竜化ができる。君も出来るはずだが」

そう言われ、漆紀は佐渡島で宮田と戦ったことを思い出す。宮田との戦いのおり、漆紀は確かに人の形をした竜と化していた。その身体能力や膂力は普通の人間ではなく、まさしく人外のものであった。

「あれと組み合わせると、か」

「竜化の経験、あるんだね」

「それが早く出来てれば、父さん助けられたかもな……はぁ」

ため息が出てしまうが、世理架は「余計な事を思い返すな」と漆紀の想起を止める。

「もっとあれこれ魔法を組み合わせるんだ。パズルの総当たりや六面キューブみたいにね」

もう一度村雨を右手に呼び出すと、漆紀は次に何を組わせるか考えながら構えた。

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