006 絆
コクランさんの家の屋根を見下ろしながらティアと坂を下っていく。陽光は温かく風は涼しく心地よく、緑一面の麦畑には靡く麦により光が波打っていた。
ティアは泣き過ぎなのか心ここにあらずと言った様子で、ただ俺が手を引くから付いてくるという状態であった。目も晴れているし手先まで少し赤らんでいる。あれだけ強く感情をだして泣いた後なのだから疲れ切っているのかもしれない。つい一昨日泣いた時も体力の限界まで泣いて、起きてはまた泣いて気を失っていたんだ。
「ほら、ちょっと休んでろって」
「……」
コクンと首を振るとティアは虚ろな目をしたまま家の中に入っていった。中にいたトリシアさんはティアが放心状態なことに気付き寄ってきてくれた、トリシアさんにティアの手を預ける。
「…マスターからの手紙が効いたみたいです」
「はっは、こないだみたいに気を失ってないだけマシさね」
「はは……ごめんなさい」
「はん、あんたが来てからこの子は本当によく泣いたけどね、同じくらい笑って過ごしてんだよ。感謝してるってのに何を謝ることがあるんだい」
「ティアのこと頼みます。俺はギュンター達に話があるんで出ます」
「あいよ、行っといで」
ティアは、そのまま手を引かれ2階に上がっていった。俺は村長の踵を返し玄関を後にした。
階段を上りティアをベッドに座らせたトリシアはティアの髪を撫でながら呟く
「…はぁ、本当に手紙だけなのかねぇ」
「……?」
「ほら、横になりな。…熱は無いのに赤みが引きゃしないんだ、少し寝れば治まるだろうさ」
ティアを横にして布団を掛けベッドに腰かけるトリシア、指を1本1本やさしく触れる程度に髪を撫でていく手つきは優しさが滲むようなであった。トリシア自身頬を緩ませ、ゆっくりと撫でていくと、ティアも落ち着いたのか瞳を閉じ呼吸も穏やかになっていく。
「…………スー…スー…」
「…これはコクランの代わりに、あたしが坊やのこと一発ぶん殴っとくべきかねぇ」
男らしい笑顔を浮かべながらトリシアはティアを撫で続けた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「俺は、もう迷惑をかけたくないんだ」
「ハッだから置いていけってか…バカヤロウ。昨日いったじゃねぇか連れて行ってやるってよ」
「それは今日発てる前提で出られるならって思ってだったんだ。俺はティアの迷いがなくなってから連れて行きたいんだ。俺の我が儘でみんなに迷惑かけたくないんだ」
ギュンターは飲んでいたお茶をテーブルに置くとおれの方に向き直った。村長宅のリビングに入ると俺は出発に関して聞くとギュンター達は明日でも明後日でも良いという。
「別に何日いてもいい」
「そうだよクライくん、別に焦らなくていいんだよ?私たち先を急いでないもの」
「なんで…もうマスターからのお願いは終わってるじゃんか、3人は有名なパーティーなんだってマスターから聞いた。これからどうなるか分からないけど、ギュンター達だって大変なんだろ」
ギュンター達は、5人組のパーティーを組んで活動していたんだ。それが今やリーダーであるジーノ兄を失い、パーティーのまとめ役だったエリックもいなくなった。詳しいことは分からないけれど本当なら俺に構っている余裕なんてないことくらい気づいていたんだ。
だけどギュンターは、いつも俺に気を遣わせない。いつもガキが気にすることじゃねぇと笑い飛ばすんだ。だけど俺は、もうガキのままじゃいられないんだ。
俺は俺の我が儘を通したい
連れ去るように手を引くことになってもコクランさんに殴られるようなことになっても、この平和で幸せが確約されたような村から連れ出すのだから、せめて俺は一人の人間として自立していたい。もう子供だからと甘えてばかりじゃいられないんだ。
「はぁ……クライてめぇ何か勘違いしてねぇか?」
「何って、ギュンター達は俺の事を待ってるだろ?」
「ん~クライくん確かに私たちはクライくんがどうするかを見守ってるけどね、それは依頼だからとかじゃないの」
「クライ、私達への信頼が低い」
ギュンターと一緒にテーブルに座っていたエミル姉もゼル姉も少し困ったような様子でいた。ギュンターに至っては溜息をついて首を振った後と低く俺を射殺すような視線で唸るように言葉を紡いだ
「なぁ、てめぇは確かに虎の牙じゃねぇ」
ドンっと机を叩くギュンター、手元の湯のみが倒れお茶を零し、転がり落ちて割れる。それすらも構わずにギュンターは立ち上がると一足で目の前に来て俺の胸倉を掴みあげる
「けどなっ俺たちゃ互いに命を賭け死ぬ思いで戦ったんじゃねぇのかよ!?みろコレぁなんだ!!」
ギュンターが俺の鞄に手を突っ込むと刃に穴が開きヒビの入った剣を抜きだす
「テメェはよぉ、ジーノが命を賭けて掴んだ勝利の鍵だったんだぞ!!カーティスのこと以外忘れたなんて言わせねぇ、ジーノがお前に賭けた想いを!死にざまを!!体が千切れてなお駆けた勇気を!!!」
「忘れるワケねぇだろ!!」
ギュンターの掴む腕の手首を両腕で握り返し睨み返す
「なら迷惑なんで言葉が、なんで出た!?」
「どこも、おかしくねぇだろっ!離せよ!!」
大声を出し合い睨みあう、ギュンターの食い殺すか目線を睨み返す。
片腕で宙に浮いているが俺は退かない。退くわけにはいかない、俺みたいなガキのお守りで迷惑をかけていることを詫びに来て、この理不尽。俺に退く理由がない。
「ギュンターさん離してあげて」
「やりすぎ!」
「うるせぇ!!」
ドシンッ
ギュンターは止めに入ったエミル姉やゼル姉すら振り切って俺の体を持ち上げ壁に打ち付ける。
「俺たちは仲間をってめぇは育ての親をッ!互いに自分の命を投げても救いてぇもんを失くしちまった、だけど俺たちはジーノの、エリックの、カーティスの死を無駄にしなかったじゃねぇか!俺たちの勝ちはよ、誰か一人でも欠けてたら絶対ぇにあり得なかったんだぞッ!!」
「俺たちゃ!!もうッ仲間だろうがッ!!!」
ギュンターの虎の瞳から一粒の涙が零れ、頬の獣毛を転がり床に落ちた。
「迷惑をかけてるなんてよ、寂しいこと言ってんじゃねぇよ」
落ち着いた声音で、呟くように言うとギュンターは俺を下ろして椅子に座った。
「……ありがとう」
熱を帯びた目頭から零れ堕ちる滴。けれど、冷えていた心臓が温まるような感覚が広がっていた。
俺はギュンターやエミル姉、ゼル姉には世話になっている気持ちでずっといたんだけど、彼らは違ったんだ。3人は俺を認めてくれていたんだ。今ならわかる、エミル姉が俺の心を見透かすように言い当てていたことも、仲間だからだ。3人は俺の事も、お互いを知り、認め、支え合う存在として見てくれていたんだ。俺は3人のことを凄いと認めているけれど、俺が認められているなんて思っていなかった。
こんなに想ってくれていたというのに、俺は気づけていなっかったんだ。俺の考え方が間違っていたんだ。でも、これは謝るところじゃないと思う。仲間だからこそ、だ。
「ありがとう…ギュンター、エミル姉、ゼル姉お願いがあるんだ」
「…おう、なんだ言ってみろ」
「もぅギュンターさんやり過ぎですからね!」
「最近私よりエミルが先に呼ばれるのに異議あり」
ギュンターは、ちょっと照れくさそうにそっぽを向いていた。よく見るとこの短時間の間に床に落ちて割れたカップなどはエミル姉が簡単に掃除していたようだ。
「出発を明日まで待ってほしい…ティアを連れて行きたいんだ」
ギュンターはニッと牙を覗かせると俺に向き直った。
「ハッ、最初からそう言やぁ良いんだよ」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
コクランさんの家に戻ったのは夕方近くだった。
ギュンター達と、あの後いろいろ話し込んでしまったのだ。コクランさん夫婦の話から、ティアに何て言ったか等、本当にとりとめもない話をしてたら時間が過ぎて行ってしまったのだ。
家の中では丁度トリシアさんが夕食の仕込みに入っているところだった。コクランさんも戻ってきている。ティアは、まだ休んでいるところだろうか。
「明日、この村を発とうと思います」
リビングに入ると二人に向け何とはなしに、声をかけた。
「俺は…ティアを連れて行きます。お二人にとってティアが大切なように俺にとっても傍にいて欲しいヤツなんです」
「そうかね…寂しくなってしまうね」
コクランさんは座りながら俺に一瞥をくれると特に慌てた様子もなく、そう答えるとお茶を飲んでいる。昨日コクランさんに告げているとはいえ俺なりに二人を前に宣言するのは緊張してたのに…
「そんなことよりティアを起こしてきてくれないかい?あの子すっかり寝入っちまったからね」
そ、そんなことより…だと……俺は短く「あ、はい」と返事をして2階に上がって来たが、軽くないでしょうかトリシアさん…軽くショックを受けながらティアの部屋を開けるとティアは起きて鞄に服を詰めていた。
「起きてんじゃん。もう大丈夫か?」
「ぅあ…う、うん大丈夫、もう大丈夫」
「本当か?なんかまだ赤い気がするんだけど」
「だ、大丈夫。すぐ下に行くからクライ下りてて」
「そうか…ならいいけどさ」
なんだか追い出されたような感覚になりながらも部屋の扉を閉める。
でも鞄に服を詰めていたところを見ると、一緒に来てくれるんだと俺はようやく実感が沸いて来た。頷くだけで明確な返事はなく実は結構ドキドキしていたのだ。
下に降りもう起きていたことを告げコクランさんとお茶を飲んでいるとティアが下りて来た。
「コクランさん、トリシアさん…あの、お話があります!」
ティアは服の端を掴み緊張した面持ちで二人に声をかける。トリシアさんも声をききリビングにやって来た。
「あの、あの私、クライと一緒に旅に出たいんです……こんなにお世話になっているのに、勝手なこと言ってごめんなさい!」
そう言うや否やバッと頭を下げるティア。服の端を掴む手にも力が入っているのが分かる。ティア自身コクランさんとトリシアさんに、とても大切にされていた自覚があるはずだ。二人の気持ちを考えずにと言うことは無いと思う。これはティアの一大決心だったのだろう。
「あぁティアも自分で言えたじゃないかね。うむ、やはり本人の言葉でないとね」
「なんだい、そのことかい。ティアもうご飯できたからね運ぶの手伝っとくれないかい」
「……あれ?」
俺は噴出しそうなのを耐えながら平静を装っていた。この二人はティアの気持ちを機敏に察知してたのだ。ティアが行きたいことを知って二人はもう覚悟していたのだ。覚悟どころか本人不在のまま俺とぶつかり合っていたのだけど、知らぬは本人ばかりといったところか。
肩透かしをくらったティアは何とも釈然としない感じのままトリシアさんの手伝いに向かって行った。
夕飯は、ここでのいつも通りだった。
トリシアさんの料理の腕は大したものだと毎食思うが、特別豪華でもなくいたって普通の物であった。食後食器洗いを終え皆でお茶を飲む。
「明日発つと言っていたかね。ティアの準備はできているのかね?」
「うん。お母さんがくれた鞄だけでも大体入ってたから」
「はっは、そんな申し訳なさそうな顔するんじゃないよ。あたしたちゃね、いつか迎えが来た時ってのを覚悟してたのさ。ちょこっとそれが早く来ただけさね」
ティアの表情をみてトリシアさんがティアの背もたれを叩く。
「それでも、急にだもん。トリシアさんもコクランさんも村長さんも、この村の人たちは、みんなとっても優しくて仲良くしてくれたのに…」
「ハハハ、それこそじゃないかね。みなティアのしたいようにすることを望んでいると思うがね」
「寂しくないたぁ言わないけどね。あたしたちだってティアにゃ我慢ばっかで生きて欲しくないのさ。したいようにすりゃいいんだよ」
「どうかね明日からはクライ君と行くのだから今日のところは私達3人で寝ないかね」
「あぁ俺もそれがいいと思う。ここを出たら次いつ戻るか分からないんだから」
「…クライはどうするの?」
「ティアんトコの空いたベッド借してもらうさ」
「いや、クライ君の布団は私が敷くがね」
「わざわざいいよオッサン、ティアのベッド借りるって」
「ハハハ、君の布団は敷く」
オッサンに何かスイッチが入ったことを確認して俺は先に風呂に入らせてもらうと外へ出る。夜風は涼しく、新緑の麦が風に靡く音が心地よい。この村はティアにとってもだが、数日だけだが俺にとっても居心地の良い場所となっていた。
緑に囲まれ美しく、水はきれいで緑茶があり風呂にも入れる。村人は過去の古傷こそあるが、だからこそ本当の意味で優しく穏やかなのだ。ここは人の痛みが分かる人が暮らす村なのだ。
「君は、この小高い丘が好きなのかね?」
「あぁ風もいいし、麦が揺れるのもキレイだと思う」
「収穫期に来たまえ。村が黄金色に染まる様、見たいと思わないかね?」
「オッサン分かってて言ってるだろ」
「ハハ、命があればまた来れるじゃないかね。いつになるかは分からない事ぐらい分かっているがね」
「俺の命が無くなってもティアをって言いたいとこだけどさ。それって違うなって、この村に来て思ったよ」
「ほう、何故かね?格好いいがね命に代えても守り抜くというのは」
「俺が死ぬような敵は俺が死んだらティアが1人で相手することになんだろ?俺は守ったつもりで気分よく死んだとしても、ティアは俺の死を見た上で敵を前にするって考えると、それがただの自己満足で、それって俺は俺のことしか考えられてないって分かったんだよ」
「ふむ、自己犠牲は高潔だがね。活路無く死ねば嫌がらせでしかないということかね」
「そう思う。心が通じ合ってる仲間にゃ死んでも守るなんてのは腹の立つ台詞でしか無いんだよ。だから俺はティアを死んでも守るとは言わない。生きて一緒にまた村に来るよ」
「ハハハ私はね君の事は信頼しているのだがね。出来れば頻繁に寄って欲しいね」
オッサンと笑い合い、家に戻る。ティアの部屋に入るとベッドの布団は畳まれ床にしっかり布団が敷いてあった。ここで寝ろと書いてあるような布団に入る。
マスターの家を出て1週間歩いてミレーおばさんの宿のある農村を通り、エルフの隠れ里まで半日は馬車で…か、もうずいぶん遠くまで来た気になるが、このあたりは凄い田舎なんだろう。都市部は、まだ遥か彼方…か
この先、どうなるんだろうか。ここに来る途中倒した魔物のようなものを狩れば生活は出来るのだろうか。街に行けば子供でも働けるような職場があるんだろうか。俺に出来ることなんて限られている。農業や開墾を覗けば僅かな魔法とマスターに教わった戦闘術。
「俺は半端だ…」
ギュンター達のように強くもなく、マスターのような大きな魔法を使えるわけでも無い。瘴気を晴らす神の気も瘴気の無い地では照明に過ぎない。俺には決め手となるような武器がないんだ。
強くなりたい
この世界に来てから来る日も来る日も行われた戦闘訓練や修行の数々。
ただそれはマスターに認められたいがために褒められたいがために行っていたに過ぎない。
強くなりたい
マスターが立ち向かった理不尽な敵に共に挑めるように強く
もう悔しくて泣くことがないように強くなりたい
守りたいものを守り通せるように強く
泣かせたくない人を泣かせないように
俺は強くなりたい
「弱さで大切なものを失うことがないように、俺は強くなりたいんだ」
生きてまたこの村に来れるように
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
コクランとトリシアでティアを挟んで3人は川の字になって横になっていた。
昨日はいたクライがいない分、少しだけ広くスペースはとれるのだが、むしろ3人は昨日よりも寄り添い合っていた。
トリシアはティアの髪を撫で、コクランは布団のうえからお腹をトントンと緩やかなリズムで優しくたたいていた。
「ティアが来たばっかりの頃、あたしゃこんな風に一緒に寝れるなんて思ってもみなかったよ」
「ハハハ、ティアは遠慮ばかりしていたからね」
「だって、悪いもん…お世話になるのに」
「はっあんたはもっと子供らしくしてりゃいいのさ。子供の内しか出来ないこともあるんだからね」
「今は、トリシアさんにもコクランさんにも遠慮してないよ?」
「していると思うがね。なにせ今も『さん』付けだからね」
「そ、それは…だって……」
ティアは2人がかりで寝かしつけられているからか、徐々に瞼がおもくなっているようだった。トリシアの髪の撫で方は堂に入ったもので慣れているようであった。コクランのトントンも非常に優しいリズムで行われていた。亡くした息子を遥か昔に寝かしつけたその行為を記憶からは思い出すことが無くなっていても、体は覚えているのだろう。
「おや、もう寝ちまいそうだねぇ」
「寂しく…なってしまうがね」
「おや…すみ…コクラン…ぱぱ、トリシア…まま…」
「…これは明日、私は泣いてしまうかもしれないね」
「あんたはどうしたって泣くさ……おやすみティア」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「おう準備できたかクライ、嬢ちゃん」
「あぁもう昨日から出来てるよ」
「あの皆さま、よろしくお願いします」
「クライが泣いて頼むから攫いに来た」
「ちょゼル姉、俺は泣いてないし、そんなこと頼んでない」
迎えに来た3人に頭を下げていたティアはゼル姉に抱き着かれていた。エミル姉は村長にお礼を述べたあとコクランさん達にも挨拶をして後から来た。
「ゼル何やってるの?」
「ティアを攫おうかと」
「あはははは攫われようかと」
「もうゼル姉の目的になってんじゃん」
エミル姉の後ろからコクランさんとトリシアさんが歩いてきた。
「私たちも村の前まで一緒に送ってもいいかね」
「グハハハハ勿論だ。門出は賑やかな方がいいからな」
「はっどうせ村の連中は皆、門の付近にいるだろうさ」
トリシアさんの言う通り丸太の壁が見えてくると、その出入り口となる門の付近には沢山の人がいた。門に近づくと皆口々に「いつでも帰って来ていい」とか「気を付けて」などティアに向けて声をかけていた。
「グハハハハハ、なかなか人望が厚いじゃねぇか嬢ちゃん」
「お茶摘みしたり、茶葉を揉んだり、村のみんなでやるんです…ここはみんな仲がいい村だから」
「ふふティアちゃん、笑って。寂しそうな顔より、きっとみんなティアちゃんの笑った顔が見たいと思うな」
「そう笑うと言い」
「ゼル姉が笑ってんの見た事ないけどな」
「村長、世話んなったな。また機会がありゃあ寄らせてもらうぜ」
「とんでもございません。用がなくともお立ち寄り…いや定住してくださいませ」
「グハハハ、よしそれじゃあ行くぞ!!」
小走りでティアはコクランさんとトリシアさんに駆け寄る。
「行ってくるね…コクランパパ、トリシアママ」
挨拶を済ませるとすぐに戻って来た。
手をふるコクランさんとトリシアさんの目元からは光る雫がいくつもいくつも零れ落ちていた。




