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真相

もたつくケプラー艦隊を苛々(いらいら)しながらもゲートに押し込み、俺達も飛び込む。


超新星爆発スーパーノヴァの圧倒的なエネルギーの奔流ほんりゅうがワープゲートを包む。

しかし俺達は飲まれること無く、なんとか脱出することに成功した。


『全艦正常に航行中です』

取り敢えず一安心だ。


腕時計を見る。俺のお気に入りである旧型アナログ針の時計だ。

日本時間の4時を指している。朝の4時なのか、夕方の4時なのか?

色々なことが起こりすぎた。時間感覚が無くなっている。


早く自宅に帰って風呂にでも入って、眠りたい。

起きたら近所の贔屓ひいきの定食屋ででも食事をゆっくり取りたい。

とっとと日本に戻りたい。


……しかし、その前にやっておく事がある。


「エリ、ちょっと散歩でもしないか? 話したい事がある」


『はい。司令官』

エリは既に覚悟はしていたようだ。


エリと一緒に、ジュピター本体である戦艦の艦内に設けられた、バーチャルな遊歩道まで転送してもらう。

今回は、ジュピターもサキもついてこようとは言わない。

日頃はわがままのジュピターも、流石さすがに空気を読んでくれたようだ。


遊歩道の入り口に着くと、俺は戦艦本体に命令する。

「エリとしばらく散歩する。

遊歩道内での会話は外部に漏れないようにしてくれ。

すまないが、ジュピター本体にも知られたくない。

完全な情報封鎖処置を行え。司令官命令だ」


ジュピターはびっくりしたように、一瞬間を空けたが応答する。

『了解致しました。当艦の持つ最高レベルの情報封鎖を行います』


エリと並んで遊歩道を歩く。以前、彼女達と一緒に歩いた時の景色だ。

背の低くて幹が太い灌木が、歩道の横に並んでいる。投影された景色だが。


「話してくれるかな? 俺の知らない事をいろいろと」


エリが微笑んで小首をかしげる。

『何処からがよろしいでしょうね? でも私も全てを知ってる訳ではないんですよ』


「まずは、サルガスの太陽系を破壊した本部の意向だ。なんであんなことをする?」


『あそこの支配種族達は、過去に“本部”に滅ぼされたようですね。

その子孫とも言える機械知性の残党狩りの意味もあるかもしれませんが。


主な理由は、報復ではないかと思います。

あの男は、べらべらと余計な事を喋りすぎました。

“本部”の寵愛ちょうあいを受ける地球人に対して、教えるべき情報ではありません。


太陽系ごと滅ぼしたのは、見せしめの為でしょう』


寵愛ちょうあいだって?」俺は笑った。

「本部は使える奴隷に対しては、随分優しいんだな」


エリは言う。

『奴隷ですって? 地球人がですか? それは全く、創造力溢れる言葉の用法ですね』

『あまり適切な使い方とは思えませんが、敢えてその言葉にこだわるのでしたら、奴隷なのは“本部”の方です』


俺は混乱した。言葉遊びをするのは不本意だ。


「分かりやすく言ってくれないか」


『“本部”はあなた方地球人の子孫です。遠い未来の』


エリは続けて説明を始めた。

『間もなく地球人は宇宙への進出を開始します。

旺盛な闘争本能により、多くの戦争を異星人達にしかける事になり、

多数の種族を支配し、滅亡させ、勢力を広げます。


持てる技術を極度に発展させ、最終的には物理法則さえ自由に操れるようになりました。

数百億年経った未来では、極めて強力な種族の一つです』


『でもライバルは存在します。“敵”もそのひとつです。

敵は考えました。“本部”達の先祖である地球人を絶滅させれば、“本部”も消えるだろうと。先祖がいなくなれば当然子孫は消えます』


『もうお分かりでしょう?

“本部”は先祖を必死に守ろうとしただけです。

いくら残酷で情け容赦ない“本部”でも先祖を消されれば終わりですから。


……今の悪口は失言です。どうか忘れてください』


エリは微笑んだ。

『私の言うことを信用していただけるでしょうか?』


俺はうめく。俺達がこの残酷な連中の先祖だって?!


いや、しかし、でも、これは真実なんだろう。

今までの全てが納得できる。

簡単な話だったのだ。戦艦とか頼めばいくらでももらえるんじゃないだろうか。

彼らは地球が殺られる事により、自分達が消えたくないだけなのだ。


「エリ、君の言うことを信じたい。 真実だってちかえるかい?」

『私の司令官に対する愛情に誓って、真実です』


俺は苦笑いする。

「それは、あんまり確かな誓いじゃないな」


『私は真面目です』


突然、エリの姿がひずむ。

そして、映像の画素が間引かれたようにエリの姿が薄くなる。


『あれ?』

エリがあわてて、自分の姿を確認する。


「エリ、どうしたんだ? 大丈夫か?」


自身の状態を確認し、彼女は愕然がくぜんとする。

だが、すぐに何事かを決心したように俺に言う。


『司令官。私もお別れみたいです。もうすぐ消えます。

話した内容が本部のお怒りに触れたようです。

“本部”は地球人類の子孫であると言うことを、知られたくないのです。

しかし、ここまでやるとは。

私の考えが甘かったです』


何だって?


『でも消えるまで、ちょっとだけ時間は稼げます。

その間に私からの最後のプレゼントをします。

もしかしたら私自身へのプレゼント』


消えるとかダメだ。俺のせいなのか?ダメだ。ダメだ。ダメだ。

ジュピターに頼んで対抗手段を。


『無駄です。それよりも時間が惜しいです。最後に伝えなくては』


エリは決心したように、俺の目をじっと見る。

『司令官。何であなたが司令官に選ばれたか分かりますか?』



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