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離脱

男が消え、俺達は取り残される。

その場を沈黙が支配する。何気に気まずい。

エリ達は、俺が怒鳴り散らすとでも思っているのだろうか。

そうなら、それは間違いだ。


俺は男の話した内容を咀嚼そしゃくし直す。

機械知性の代表である男は“本部”も“敵”も、遠い未来に存在する知性体だと言った。


“本部”は強力な艦隊を無償で俺に与え、“敵”からの攻撃を防がせている。

理由は、少なくとも現在は、地球を“敵”の手から守る事が“本部”に対し望ましい未来をもたらすからだ。


彼らにとって都合良い何かの仕事をさせる予定なのだろうか。

仕事が終われば捨てられるかも知れない。

最悪サルガスのように全滅させられるかも知れない。


もともと“本部”が善意でやってる訳じゃないことは知っていたし、裏があるだろうことは覚悟していた。


結局、俺達地球人は“本部”に飼われた家畜のようなものなのか?


今日明日すぐに地球が捨てられるという話では恐らく無いだろう。

しかし俺達に与えられるのは“本部”を恐れながら暮らす奴隷の未来なのか?


…考えがまとまらない。とりあえず艦に戻ろう。


「ジュピター」

俺は声を掛ける。


『はい。』

ジュピターがびくっとして返事をした。


覚悟を決めたようにして言葉を続ける。

『司令官。私、ジュピター型戦艦の一番艦ジュピターは、司令官への服従を基本原理とし地球防衛目的で新規に建造されたふねです。


私が司令官を裏切ることは絶対にありませんし、二番艦サターン、三番艦ネプチューンや他の皆さんも同じだと思います』


サキが言う。『私はあなたの味方よ。当然分かってるわよね?』


エリが言う。『司令官は私をお疑いかもしれません。でも、私もあなたの味方です』


「もちろん分かってるよ。ありがとう。


さて仕事は終了だ。皆をスミス艦内に転送してくれ。

鈴木さんとサルガスの降伏条件について話さないと」


転送が終わり、艦橋の自席に着くと間もなく艦内に警報が鳴り響く。


「スミスどうした?」


『何者かがワープアウトしてきます。サルガスより1光分の距離です』


太陽系の内部にいきなり艦艇が出現するってことか?

俺達にはそんなことは出来ない。

俺達に出来るのは重力が弱まっている太陽系の外側に、ワープを終了して到着ワープアウトすることだけだ。


エリが叫ぶ。

『“本部”より通信がありました。

第一艦隊所属エクセリオン級 戦艦スターダスト

ワープアウトしてきます』


ジュピターが息を飲む。

『戦艦スターダストって、本部直属のあの戦艦スターダスト?』


問うようにジュピターを見ると、彼女が教えてくれる。

『私も初めて見るふねです。

強力すぎる為に禁則兵器指定された戦艦で“本部”しか運用を許されていません。

中心部の太陽と所属する惑星を丸ごと破壊可能です』


ジュピターは自分の言った言葉に青ざめる。

『まさか、ここを丸ごと破壊?』


エリが告げる。

『戦艦スターダストより連絡入りました。


“地球防衛艦隊はすみやかに当星系より離脱せよ。本艦はこれより中心の恒星、およびサルガスを含む全惑星を破壊する。

繰り返す。地球防衛艦隊は速やかに当星系より離脱せよ。“


以上です』


そんな馬鹿な。

「サルガスは降伏したんだぞ。攻撃の取り消し要請を出せ。急げ!」

俺は叫んだ。


スミスが言う。

『了解。最優先通信で要請を送信。……送信完了しました』


エリが報告する。

『スターダストは“地球防衛艦隊は速やかに当星系より離脱せよ”を繰り返しています。応答しません』


スミスが警告する。

『戦艦スターダストの主砲エネルギーが増加中。

目標はこの太陽系の中心の恒星です』


ジュピターが自分の考えをしゃべる。

『スターダストは恒星を砲撃することにより超新星爆発スーパーノヴァを起こそうとしていると思います。

中心の太陽が爆発したらサルガスを含む惑星は全滅です』


スミスが言う。

『戦艦スターダストが主砲を恒星に向かって撃ちました。着弾まで20分』


超新星は、周囲の数光年に渡って爆発エネルギー撒き散らす。

俺達は太陽系内でワープなんて出来ないんだ。ワープ可能距離まで移動している間に超新星に飲まれる。


エリが言う

『出口がある筈です。スミス、ジュピター、本部が出口を用意しているはず。探して!』


スミスが報告する。

『惑星サルガスから非常通信です』


「つなげ」


スクリーンに先ほど会った男が表示される

『司令官。巨大な戦艦が発砲している。約束が違うぞ。降伏すると言った筈だ!

一体何が起こっている?』


「俺達じゃない。俺達はそんな事はしない。

発砲しているのは“本部”直属の戦艦だ。

すぐに超新星爆発が起きる」


俺は付け加えた。

「逃げられるのなら、すぐに逃げてくれ」


『何だと』

男は状況を悟ったようだ。

『今更、俺達を滅ぼして何の得が……司令官、俺達を助けてくれ!そんな短時間では逃げ…』


男の姿がスクリーンから消える。


「どうした?」


『通信が切れました。

戦艦スターダスト、副砲の一斉射撃でサルガスの大陸が消滅しました。

機械知性の中枢も破壊されたと思われます』


ジュピターが報告する。

『空間にはだか特異点とくいてんを発見。ワープ可能なワープゲートだと思います。

そこから非空間に入れます』


「鈴木さんを呼び出してくれ」


スクリーンに現れた鈴木さんは慌てている。

『何?何が起こってるの? あの戦艦は何?』


「時間がありません。ここは超新星爆発スーパーノヴァ壊滅かいめつします。

死にたくなかったら、全艦隊をお送りする座標のワープゲートに集めてください。

スミス、こちらもゲートから脱出だ。全艦、最大戦速」


後は間に合うように祈るだけだ。


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