上陸
◆
サルガス地下にある敵中枢の制圧の為に、地上部隊を編成する。
と言っても御存知の通り、上陸可能なメンバーはサキ、エリ、ジュピター、俺の4人だけだ。
上陸ポイントは、敵戦艦が出現した時に使用していた射出口の側にする。
周りは何もない平原だ。
身を守るものがない平原に出現するとか普通だったら自殺行為だが、俺達の場合は能力を考えればそっちの方が動きやすい。
サキの能力と、ジュピター本体からの艦砲射撃を考慮した結果だ。
全員、耐環境スーツを着用して地表への転移に備える。
耐環境スーツは、宇宙服の軽量版のようなものだ。
惑星大気はそのままでも呼吸可能な筈だが、毒ガスとかウィルス等への用心を兼ねている。
地球製の不格好な宇宙服とは違い、アウトドア用ジャケットに使われる程度の薄い素材で全身を覆い、フルフェイスのヘルメットが付属している。
地表の安全を確認してから、後をスミスに任し転移開始だ。
転移の終了と同時にサキが攻撃無効化のフィールドを展開する。
展開前に狙撃とかされると、ヤバかったんだが乗り切ったようだ。
『本当に殺風景な所ね』
フィールドの展開を終えるとサキが呟く。
重質量弾の影響で、巻き上げられた塵が空を覆いやや薄暗い。
周囲は土くれだらけの荒野で、背の低い雑草のようなものがわずかに散りばめられている。
500m位先に、黒い樹脂状の物で造られたドーム型の蓋を持つ、開口部が見える。敵の巡洋艦の射出に使われた出入口になる。
俺達は開口部近辺を調査し、地下に通じる通路、もしくは破壊可能な箇所を探して侵入するつもりだ。
事前に決めておいたフォーメーションどおりに進み始める。
先頭は、待ち時間無しで同時に数十個の光の矢を展開可能なエリだ。
『やっぱり、先頭はちょっと怖いです』
エリが心細そうに呟く。
代わろうか、と男の見栄で言いたいところだが肉弾戦なんて全くやった事がない自称平和主義者の俺では無理だと思うので止めておく。
サキが言う。『大丈夫よ。無効化フィールド展開中だから、攻撃なんて当たらないって。私が生きている間は大丈夫』
『生きてる間とか怖い事言わないでください』
『大丈夫ですよ~ここはまだ戦艦本体から見えてるし。いよいよとなったら船から主砲&副砲の全力斉射いきますし。もっと危なくなったら重質量弾ずば~~んって』
……ジュピター全然懲りてねえ。って言うか、それやったら俺達も危ないよね?
先頭から2番目はサキで、3番目がジュピター。
ジュピターは“生身の身体の私は無力です~”と主張したので俺と同じ後衛扱いだ。
俺自身はジュピターの隣に並んでいる。
200mばかり進むと敵が侵入者を検知したらしく、向かっている射出口から装甲車両らしきものが複数湧きだして来る。
装甲車両と言ってもキャタピラとかタイヤは無く、戦車の砲塔のようなものが、小さなボディに乗っかって浮遊している。
10台ほどがこちらに向かって来る。
『後方にも多数の反応。小型の戦闘ロボットと思われます。数53体』
ジュピターが告げる。
振り向くと、何処から湧いたのか、短い胴体に長い足が2本、頭が銃身のお化けのようなロボットらしきものが遠くから向かってくる。
なんと言うかロボットと言うより、抽象画に出てくるオブジェみたいな異様な物体だ。
『えい!』と言う掛け声と共に、エリが右手を上げ、すぐに振り下ろす。
同時に何十本もの光の矢が、頭上に出現し夫々(それぞれ)の目標に向かいだす。
10数本の矢が前方の戦車らしきものに向かい、残りの矢は空中で急ターンして後方のロボットに向かう。
目標の中心部に吸い込まれるように消えると全体が爆ぜる。
爆風はサキの無効化フィールドに遮られてこちらには届かない。
1本の矢の攻撃力が重戦車の主砲と同じ威力と聞いている。
エリは役に立たないとか言っていつも謙遜するが、目の前で見ると恐ろしい攻撃力だ。
サキが喜ぶ。
『よし! 練習の成果でたわね。立派、立派!』
新たな敵を見つけたジュピターが、歓声を上げて報告をする。これ楽しんでるよね?
『半径1kmの円周上に多数の開口部が出現しました! 戦車とロボット出てます。数百規模です!!』
サキが言う。
『いよいよ私の出番ね。いいとこ見せてあげる』
ジュピターが異議を唱える。
『こんな所でサキさんの攻撃は全く必要ないです。
コストの無駄使いです。燃費が悪いくせに無理しないでください。
私の艦砲射撃で制圧します!』
『あんたねー。
艦隊戦で自分ばっかり出番もらって、しゃしゃり出てたクセに!
地上戦はこっちの専門分野なんだから口出さないでよ!』
二人同時にこちらを見る。
『私よね?』
『私ですよね?』
微妙な立場に俺を追い込まないで欲しい。
それと敵が焦って攻撃してきてるんだから、少しは怖がってあげようよ。
「えーと、悩むけどサキかな」
攻撃見たこと無いんで見てみたい。
『当然よね』サキがにんまりする。
『えー司令官。あんまりです。酷いです。私の事嫌いになりました?』
ジュピターが俺の胸の中に顔をうずめて泣く。いや、泣き真似をする。
サキが睨むので、出来るだけ優しくジュピターを引き離すと改めて命令する。
「サキ、攻撃だ。壊滅しろ」
『了解。よーく見ててよ』
彼女の攻撃は強力だが、若干の溜めが必要と以前に聞いた。
両腕で魔法の詠唱にように見える動きを行い、最後に手のひらを頭上に向ける。
10m位頭上に、紫色のプラズマ状に輝くうねりのようなものが現れ球を形成し、大きさが徐々に増していく。
半径5m程の球状になったところで、彼女は腕を振りおろす。
プラズマ状のものが平面にひしゃげ、その平面が周囲360度に衝撃波のように広がっていく。
脳内に表示されたモニター用のイメージを追うと、サキを中心にして円周状に高速で広がっていく。
円周が敵のいる1km程先に到達し、触れた数百の敵が即時に爆散する。
「凄いな。重巡主砲級の威力だっけ?」
『距離に関係なく衝撃波部分に触れた対象物は、主砲級の破壊力を受けるって定義されてるの。
物理法則無視の攻撃だから届けば重巡より強力だわ。
効果範囲が1kmちょっと位しか無いけど』
サキが、ちょっと得意そうに解説する。
ジュピターが悔しそうに言う。
『コスト使用の攻撃とかズルいです。インチキです。反則です。
こっちは苦労して物理法則に従ってるのに』
敵も早く出てきて降参した方が良いよ。
このお姉さん達に勝つの無理目だろ?




