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現在の状況は以下のとおりだ。


戦艦ジュピターは惑星サルガスの衛星軌道上を周回中。

敵が相打ちを避け、射撃を停止したおかげでジュピターのシールドスクリーンは、エネルギーが100%に回復している。


敵のレーザー砲は、3分の1が破壊されて威力が低下している。

ジュピターが攻撃されても、レーザー砲の攻撃2、3回分はシールドが十分持つだろう。

ジュピターの持つ重質量砲、全3門は、いつでも惑星表面に対して発射できる。


万が一敵がレーザー砲で再度攻撃してきても、無傷で大陸を破壊できるという事だ。


ケプラー星防衛艦隊は後方の安全地帯まで全て引き上げている。

敵艦隊の200隻余はジュピターの射程から遠ざかった所で集結し、じっとしている。

動きはない。

仮に近づいてきてもジュピターの持つ主砲10門、副砲60門で壊滅出来る。


こちらは敵の喉元のどもとに刃を押し当てている状況で、いつでもトドメをさせる。

艦隊戦はこちらの勝利で終わった。危なかったが。


俺達がピンチに陥った時に、敵には2つの選択肢があった。

1つ目は相打ちで、俺達は死ぬが自分も滅ぶ。

2つ目が現在の状況だ。敵は負けて自分達の運命を俺達にゆだねる。


今の状況になるのは予測出来た筈だ。どうする気か?

降伏を望んでいるのか?


スクリーンに表示されている惑星を眺める。

重質量弾のせいで巻き上がった物質が、灰や粉塵となって大気の上層部まで上り、惑星のかなりの部分をおおい始めている。


着弾地点は直径が数十キロはあるクレーターとなり、衝撃波により周囲の地形は原型を留めていない。遺跡なんて陰も形も残っていない。

大陸に生息していた動物類は即死した筈だ。

惑星の生態系は破滅的な影響を受けただろう。


大量の粉塵を上層の大気まで巻き上げた為に、太陽の光が十分に地面には届かなくなっている。あと2、3発の重質量弾で氷河期に移行する事になるかもしれない。


流石さすがにもう沢山だ。自動機械を殲滅せんめつしようとしたら、惑星全体を壊滅させたってか。

冗談だろう。


しかしながら、この敵が危険なのは確かだ。無力化したほうがいい。

下手をすれば、地球まで襲われるかもしれない。

でもやり方は選べるはずだ。


俺は、鈴木さんを通信で呼び出す。


『お疲れ様。何? 勝利宣言?』

鈴木さんは微笑む。上機嫌だ。


俺は皮肉を言ってやる。

「そちらの防衛艦隊の出番が無くて残念でしたね」


『そんな事ないわ。惑星での放送用に映像は相当編集しないといけないけど、なんとかなるわ。ニュース放映が楽しみよ』


あのケプラー防衛艦隊の体たらくで、何処に見どころがあったと言うのか。


『ところで、惑星の方はどうするの? まだ敵は戦力を残してるでしょ?』


降伏こうふくを勧告します」


『無理よ! あいつらコミュニケーション取ろうとしないし』


「いや。こっちの言うことは聞いてますよ」

重質量砲を撃たない代わりにレーザー砲撃つの止めたしな。


『そんなまどろっこしい事しなくても、あの何って言ったけ? 重質量砲ヘビー・マス・キャノンを後2、3発撃ってトドメをさせば終わりじゃない?どど~んと』


「これをもう一回やれと?」

俺はサルガス表面の映像を見せる。


うっ、と惨状に怯んだ鈴木さんは、言う。

『こ、こちらは自動兵器類の無力化をしてくれるなら、問題ないけど』


「まあ、敵に声をかけてみますよ。降伏以外の選択肢はないでしょう」




結果から言うと、こちらの降伏勧告こうふくかんこくは受け入れられなかった。

いや正確に言うと、こちらを完全に無視した。


『何考えてるんでしょうね~あの敵ども』

ジュピターがポテトチップスをぱりぱり食べながら言う。


言っておくけど、それ太るからな?

俺は丸々と太ったジュピターを想像した。うん、戦艦本体にちょっと似てるかも。


『失礼な思考を検知しました』

あわてて、思考内容を本筋に戻す。


『これ以上、重質量砲を撃つはずがないってめてるんじゃない?』

サキがチップスの袋に手を伸ばしながら言う。


その可能性はあるな。俺の思考パターンを読まれたかもしれない。


『司令官。どうしたいですか?』

エリがお茶をすすりながら尋ねる。最近のマイブームは緑茶のようだ。


「やはり、あらかじめ決めていたように地上部隊を組んで敵の中枢に乗り込むしかないか。

向こうも交渉せざる得なくなるだろうし、それが無理なら中枢を破壊して敵を無力化する」


『ダンジョン探索ですね。1度やってみたかったんです』

ジュピターはもうすっかり元気を取り戻したようだ。

流石は戦艦の人工知性体。


探検するなら、リーダーとしてはやはり個人用の武器が欲しい。

いいタイミングだ。”おれ様のかんがえるさいきょうのぶき”っていう奴のお披露目をしてやるぜ。


「そうだ。こういうの作れない?

コスト消費型の日本刀の形をしている近接武器で、“切断”の属性が付加されてて、こうなんというか、切れないものは無い的な。ええと名前が“絶…」


『無理』

『止めてください。お願いします』

『……』


司令官自らが武器振り回してもろくな事にならないと、絶対防御の能力を持ち重巡主砲並の攻撃力を持つサキ、最強の戦艦の化身であるジュピター、重戦車並みの攻撃力を持つエリにさとされると、俺はうなずくしか無かった。



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