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戦闘開始

惑星サルガスまで、後、2時間程だ。

ここまでは、特に動きは無い。


『司令官、多数の敵艦艇が惑星地表より出現しました。

数、重巡、軽巡 合わせて200隻以上!

地下基地より射出された模様です。』


調査レポートで予測された規模の3倍以上だ。

日頃表に出さない予備艦艇まで、全部繰り出してきたのだろう。


つまり敵は、ギリギリまで自軍の艦隊規模を隠した上で、本星近くでの総力戦を選択したと言うことだ。


俺は連絡役の鈴木さんを呼び出し、先行しているケプラー防衛軍に告げる。

「そちらの艦艇をジュピターから距離2光秒以内に集めてください。

そこまで来れば、攻撃されるより前にこちらの副砲が敵に届きます。

敵の数が多すぎて主砲はアテに出来ません」


ジュピターの主砲は10門、副砲は右舷30門、左舷に30門の計60門だ。

主砲は射程が長く威力は大きいが、数が少ないし連射の時の時間間隔も大きい。

つまり格下の多数の敵の相手をするには向いていないのだ。

今回は、数が多い副砲での攻撃がメインになるだろう。


副砲は連射間隔も短い。

射程は正規の重巡の主砲よりは短いが、威力は同等かそれ以上だ。直撃すれば、敵の重巡クラスなら一撃で行動不能におちいる筈だ。


生身の方のジュピターを見てみると、目をつむって考え事をしているように見える。

恐らく、戦艦本体の持つ情報に集中しているのだろう。


俺の脳内には、指揮官用に情報がまとめられて表示されている。

しかし今回の作戦は、唯一の戦艦であるジュピターの一人芝居になる筈だ。

スミスに戦艦ジュピター本体の視点で状況を俯瞰ふかんできるよう調整してもらう。


次の瞬間、ジュピターの持つ膨大な情報が脳に流れ込む。

処理しきれない情報の洪水に脳がパニックをおこしかけ、危険を感知した保護装置が動作を開始する。

生身の脳でも解釈出来る程度に情報を間引き、咀嚼そしゃく可能なものとしてくれる。

俺の視覚や聴覚が、ジュピターの持つセンサー情報に置き換えられる。


惑星本体の側に、艦隊が雲霞うんかのように展開しているのが見えた。

ズームして、個々の船を見てみると、太いチューブを束ねたような船体の基本構造が俺達と似ている。

質の悪いコピー製品を見ている感じだ。


主砲の射程にはいるには、どれくらいかかるだろうか。

その事を考えた瞬間、敵の進行ベクトルを示す矢印とともに、主砲、副砲の有効射程範囲を示す領域が表示される。


もう30分もすれば敵の先端の部隊が、主砲の有効射程に入るようだ。


先行しているケプラー艦隊を見ると、重巡5隻がジュピターの副砲が提供する保護範囲内に移動している。

しかし、残る巡洋戦艦の移動速度が遅い。


重巡を守るように、最後に位置しながら撤退を開始している。

だがそれでは、接敵までに副砲の保護範囲に入れない。


突出しすぎた巡洋戦艦は絶好の攻撃目標に見えるだろう。


俺は少し考え、方針を決めた。

調査も不正確で、戦力も不十分なのに功を焦ったケプラー側の自業自得だが、助けられるものを見殺しにするのはしょうに合わない。


「当艦隊は、これよりケプラー防衛隊を援護しながら敵艦隊の壊滅を行う。

戦艦ジュピターは最大戦速で敵艦隊への突撃を行い、これを撃破せよ。

残りの重巡は後方より随伴しジュピターへの支援攻撃を行え。

駆逐艦は現位置に留まる」


だがジュピターの足では、最大戦速でもまだ時間がかかる。

巡洋戦艦を救うには間に合わない。



「旗艦スミスは、ジュピターより先に敵艦隊に突っ込む。サキは無効化フィールドを展開しろ」


「スミス、ジュピター、最大戦速にて移動を開始せよ」


サキがコストを大量に消費しながら、俺達の乗っている旗艦スミスの周りに、攻撃無効化のフィールドを展開する。

これで無敵モード…の筈だ。

少なくとも文明度レベル3+の敵に対しては。


ジュピター本体の視点で戦場を俯瞰ふかんしているので、1隻の重巡が急に速度を上げて敵艦隊に向かい始めたのが見える。

俺達が乗っている重巡スミスだ。


耳元でジュピターの囁き声が聞こえる。声が滅茶苦茶に近い。

俺の身体の周囲の状況は見えてないのだが、生身の身体の方で抱きついきて、耳元で囁いている可能性が否定出来ない。


『頑張ってくださいね。でも無理しないでください。

主砲を1門、司令官の護衛用にいつでも発射できるように待機させておきますから必要なときに仰ってください』


いや。主砲の1門を遊ばせておく余裕ないから、待機させておく必要はない。

と言うと。


『搭載武器の管制管理は、人工知性側に移譲されていると理解しています。

よって、その命令は無効です』


身体全体が柔らかいものに包まれた感触がある。やっぱり抱きつかれているのか?

いろんな意味で、なんとかしなくちゃいけない。


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