戦闘間際
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鈴木さんから貰った敵の本星“サルガス”に関する調査レポートの内容はこうだ。
この太陽系には、11個の惑星があり第4惑星が目的地のサルガス星になる。
サルガス星は俺達のような炭素体ベースの生命が居住可能であり、過去には地球と同様な環境にあったと思われる。
1万年ほど前に人間に似た支配種族が絶滅して以来、主だった知的生物は出現していない。各種の植物や、小型の哺乳類や爬虫類、魚類などは存在している模様。
惑星大気の構成要素は、酸素15%、窒素84%、その他1%になる。
現在は遺跡や廃墟だらけの荒涼とした星となった。
過去に製造された自動兵器類が何らかの理由で増えてしまい、鈴木さん達の惑星ケプラーを攻撃しているのは前に述べたとおりだ。
この自動兵器類の殲滅が今回のミッションだ。
……と言う訳だが、
面倒臭いことに、ケプラー防衛艦隊は今回の遠征を自分たちの手柄にしたいようで先行して第4惑星サルガスに進行中だ。
俺は仕方なく戦艦ジュピターの右舷に2隻、左舷に2隻の重巡を配置し、ジュピターから距離を取らせながらの哨戒をさせる。
前方はケプラー軍に任せる形だ。
駆逐艦2隻は、ジュピターの後方から付いて来させる。
損傷艦が出た時の補修や曳航等のサポートが、今回彼らの主な仕事となる。
旗艦である重巡スミスは陣形には組み込まず、今はジュピターの上方を平行して進んでいる。
必要に応じて移動しながら味方を援護するつもりだ。
サキの防御フィールドをスミス全体を覆うように展開すれば、事実上の無敵モードになるから自由に動ける。
今回の敵は、サキのフィールドを通り抜けるような攻撃は出せない筈なのだ。
このまま行けば後一日程度で俺の艦隊は、サルガスに到着する。
太陽系内に侵入した時点で、敵はこちらに気がついているだろう。
どう出るだろうか。
◆
煮詰まって来たのでスミス内の食堂兼、談話室で皆とお茶を飲みながら話をする。
俺の艦隊のエース、戦艦ジュピターは元気一杯だ。
戦闘前の高揚感を感じているのか、彼女を抑えるのが大変だ。
元々戦艦の人工知性体なのだ。
生身のジュピターを見ていると時々そうは思えない時があるが、基本的に戦闘が彼女の存在意義だろう。張り切るのは当然だ。
しかしアレックスやスミスは、そこまで戦闘好きなような気はしなかったんだが。
やっぱ年食ってるって事なんだろうか。
『司令官。私の活躍見ててくださいね。
この前の地球防衛戦の時は、太陽系の端っこの方で主砲をちょっと撃っただけで、出番があんまり無くて悲しかったんです。
結局、巡洋戦艦のマーキュリーにいいところ持って行かれちゃったし』
『文明度3+程度で製造された重巡数十隻規模なら、私一人でもいけるのに。
全部やっつけちゃっていいですよね?いいですよね?』
うーん。今回、脇役だからなあ。
『えー。向こうの言うことなんか聞かなくていいですよー』
俺の座っている三人がけのソファの横に陣取り、ぴたっと身体を密着させて戦闘させてくれと頼み込む、俺好みのストライクの容姿を持つ美少女。
あらぬ事を考えないように、人類の幸福とは何かという哲学的な問題で頭を埋めようとしたが中々難しい。失敗しそうなので、今は円周率を数えている。
いや駄目だろ。戦闘前に女の子といちゃつく司令官とか、アニメなら間違いなく死亡フラグだ。間抜け役で。
さっきから、こっちを見ないでそっぽを向いているサキのことも気になる。
せっかく機嫌直ってきてたのに。
俺はソファから立ち上がるが、ジュピターが離れてくれない。
ごめん、色んな意味で限界なので胸あてるの止めてください。
「スミス」
『はい。司令官』
「敵はどう出ると思う? 意見を聞きたい」
『敵方が当方の戦力をどう評価するかによると思います。
惑星近くで戦おうとするか、到着する前に迎撃しようとするか』
敵はこちら側とコミュニケーションを取った事がない機械知能だ。
どういう判断をするかは確信が持てないところがある。
こちらの戦力を過小評価し、本星より離れて艦隊戦を仕掛けてきた場合。
この場合は楽勝パターンだろう。ジュピターの長射程&超火力で粉砕して終わりだ。彼らが持つ全艦艇を投入してきても同じことだろう。
敵がこちらの戦力優勢を認めた場合にはどうなるか?
この場合、何らかの手段で戦場をかき回しにかかるだろう。
普通に戦ったら負けるからだ。
普通でない状況を作るにはどうしたら良いか?
俺達がこの前の防衛戦でやったように、惑星近くで何らかのペテンをし掛けてくる可能性が高い。
宇宙では敵艦との間に何もない。
何もないところでは、高出力の大型の船が長い射程を活かして最初に打ち始める。
インチキする余地はない。
今回の太陽系内の侵入経路では、サルガス以外の惑星からは距離をとっている。
何か仕掛けてくるとすれば、本星の近くでトリックを仕掛けてくるはずだ。
「ジュピター、サルガス星の探知可能区域に入ったら大気圏内を念入りに調査してみてくれ。怪しいものが見つかったら知らせて欲しい」
俺はようやく離れてくれたジュピターに頼む
『了解です。頑張ります』
何処で覚えたのか、敬礼してからニッコリ微笑みながら彼女は言った。
不覚にもグッと来た俺を責めないで欲しい。




