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合流

俺達の特務艦隊は冥王星の軌道を抜け、太陽の重力井戸から十分な距離をとる。


いよいよ空間跳躍ワープ航法の開始だ。


ワープは、距離の離れた地点同士を非空間で結んでそこを通り抜け、一瞬で移動する推進形式だ。

非空間内部では距離や時間の概念もないし、長さの概念もない。

その為、距離と時間を無視しての移動が可能となる。


ちなみにさっき、艦から艦の移動の時に“転移”を使ったが、あれは原理がワープとはちょっと違う。

例えで言うと転移はFaxの原理に近くて、送信地点で物質の情報を抜き取ってから情報だけ送り、受信先で組み立てる感じだ。

そのように、俺は以前アレックスからレクチャーを受けた。


転移の感覚はもう慣れてきたが、ワープ航法は初めてなのでちょっと楽しみだ。


『全艦、空間跳躍機構ワープドライブの準備を完了致しました。いつでも動作可能です』


ワープを開始せよ!


『……空間転移の完了を確認。全艦、非空間内部を正常に航行中です』


ええと。あれ?


特に何も感じないや。いつもどおりじゃないか?

ほら。ワープって言うと、七色に空間が変化したりとかしない?

そういえば、星が線になって後方に飛ぶとかするよね?是非、外を見てみないと。


「スミス、外をスクリーンに映してみて!」


サキが割り込む。

『司令官。スミスが困る。外に何もないから。

外側は非空間ですよ。非空間。空間じゃないんです。

意味からして、見れるもの何も無いって分かるでしょ?

何か派手目の眺めを期待するのは、アニメと映画の見過ぎだわ』


ジュピター(生身の方)が俺の顔を覗き込むようにして言う。

『司令官。そんな事ないです。私の本体の機能使って投影しますね』


『それ。相手が好きそうな画像を適当に、でっちあげて写そうとしてるでしょ。

なんか無理やりエフェクトかけて、星流したりとか。

止めてよね。彼は真実を知っておく必要があるわ』


『サキさんも、ロマンが無いですねえ。男の子が初めてのワープ航法に夢を見てるのにあんまりです』


ええと、俺、男の子って呼ばれる年でもないんですが。

エリがなんとかしなさいと言いたげに、こちらを見る。


いや、俺無理。無理だから。


小声でスミスに呼びかける。

す、スミス


事情を察したスミスが助け舟を出してくれる。

『司令官。ワープ中の艦隊運用につきましてご相談が』


うん。スミス好きだよ。Like的に。

言い合いを始めた二人を後に、俺はスミスを理由にしてその場を逃げ出すことに成功する。

人間、苦手なとこで無理に勝負しちゃいけない。



暇つぶしの散歩もいい加減飽きてきた頃合いで、ワープを終えて目的地サルガスのある太陽系の外側に実体化する。


ワープアウトと同時に警報が艦橋に鳴り響く。

味方以外の艦艇が近くに展開しているのだ。


しかし、これは待ち合わせしている鈴木さん達の船のはず。

確認が取れたのか警報が止む。


スミスが告げる。

『ケプラー防衛艦隊所属の巡洋戦艦1隻、重巡5隻が10光秒ほど先に展開しています』


スクリーンに表示された鈴木さん達の巡洋戦艦は、見栄えも良くてなかなかのものだ。

まあ、我が艦隊の戦艦ジュピターの勇姿と比べるのは可哀想だが。

艦の大きさも大人と子供位の差がある。


鈴木さんより連絡が入る。

『時間どおりね』


「デートの時も、俺は時間だけは守ったでしょ。では行きましょうか。我々の後ろからついてきてください」


『ごめん、そこでちょっと相談なんだけど』


ケプラー軍が後ろから付いていくのではなく、先行させて欲しいと言われる。

俺達の艦隊に見栄えの良いところを持っていかれる、との不満が軍から出たらしい。


元々、助けを求めるのを快く思わない一派が軍に存在し、政府が抑えきれなくなっていると言うのだ。

恐らくプロパガンダ用に艦隊の撮影もしてるんだろう。


「正直に言いますが、迷惑です。

確かに予備兵力として期待してるとは言いました。

ですが、敵主力を当方のジュピターで蹴散らした後での、残存戦力の掃討等を想定していました」


「いきなり敵主力の相手を自分達でする自信があるのでしたら、我々を呼ばないで欲しかったんですが」


『そちらの戦艦の主砲の射程は相当長いだろうし後方から援護してもらえれば、うちらでも十分相手出来るって軍が押し切っちゃって』


俺は甘すぎるのか。


鈴木さん達の艦隊の損害を考えなければ、彼らが敵の数を減らした後で戦えばいいのだから、そっちの方が楽は楽なのだ。

しかし、俺達に任せておけば無傷で済んだものを。


「そちらが先行するならカバーはしますが、先行する分、無傷と言うわけにはいかないでしょう。それでも良ければお好きな様に」


『なるだけ助けて上げて。一生のお願い』


俺は、曖昧あいまいに頷いてその話は打ち切った。


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