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戦闘前 3

サキ、エリ、俺の三人で異星の景色が投影された遊歩道をゆっくり歩く。


船尾側に到着して歩道が終わる。今度は船首側へ折り返しだ。

少し腹も減ってきた。戻ったら、日本から持ち込んだ食事を皆で食べよう。

“本部”謹製のレトルト食品もどきはあんまり美味しくは無い。


遊歩道に投影されている異星の景色について、サキやエリにいろいろ教えてもらう。

サキとも普通に話せるようになってきた。


機嫌を直してくれたんだろうか?

何で機嫌が悪くなったのか不明なので、根本的な対策が取れない。

いつもは割りとあけっぴろげな性格なんだけど、今回は分かりにくい。


この遠征では恋人のフリをする必要が皆無の為、スキンシップとかそっち方面もお預けなのが残念だ。


『さっき、私達の元の姿について聞いたよね。例えば、私はなんだと思う?』

サキが思いついたように、いたずらっぽい顔で聞く。


ノーヒントですか。そりゃベリーハード・モードです。


サキのしなやかな身のこなし、ナチュラルなジョートヘアに切れ長の目、スタイルが良く均整がとれた身体。


印象は、パンサーかな。

いや、でも豹とか言うと、怒るんじゃないか? 猛獣だし。


「ええと、猫?」


二人が固まる。


サキがはっとして自分の身体を見直す。

『どうして、そう思うの?』


猫はまずかったのか! そうなのか?!


『ごめん。本当はパンサーかと思った。

そう思った理由はしなやかな身のこなし、とか全体の印象から』


サキは明らかに動揺してエリの方を見る。


エリがサキに言う。

『司令官は第六感が強いのでしょう。本能的に感じる直感はごまかせないですね』


足元を見つめ考えこむように目をとじる。

しばらく何か考えていたようだが、決心したようにこちらを見る。


観念したようだ。


『当たり。

勿論、地球の豹と全く同じでは無いけど、凄く似てるの。

司令官を、適当にからかおうと思ったのだけど、大失敗だったわ』


それはそれは。


俺は、サキの元の姿が豹似と聞いても、特に驚かなかった。

何となく予想していたのかも知れない。

それに、豹のような女性って割りと一般的なイメージなんだけどな。

当てたのを褒められたけど、サキ達は俺のことを買いかぶりすぎだ


でももしかすると、サキのような実例があって豹に対するイメージが造られていたのかも。

俺が、異星人と最初に接触した地球人とは到底思えない。

以前から真実を知っている人がいたんじゃないだろうか。


『私達のような4つ足の生き物が惑星の支配種になる事は少ないって、もう言ったっけ?

指を使った運動が脳の進化と関連性が高いから、手を自由に使える人間の形態が支配種族である事が多いの。

私達は前の支配種によって、遺伝子が人工的に操作されて出来た種族。

知能が強化されてる訳』


『以前の支配種はお互いに争って自滅しちゃった。

その後、私達が独自の文明を発展させたの』


なるほど。


サキがちょっと心配そうに言う。

『猫似の方がよかったかな?』


「いやいや。豹の方が精悍で格好良いよ。

さっき猫って言ったのは可愛らしいイメージの方が好きかと思ってちょっと無理した。

でもさ、どう考えてもサキには愛玩動物のイメージは会わないよね」


『可愛くなくてすいませんでした』そっぽを向く。


う、またやってしまったかと慌てると、サキはニヤリと笑ってこっちに向き直す。


『うそうそ。ありがとね』


『人間の身体を貰うのと同時に、私達は脳内の認識の仕方に対し操作を受けるの。

ほら、元の身体の時には仲間は豹ばかりだった訳で、いくら身体を地球人と同じにしても社会にすぐ適応出来ないじゃない?


だから認識操作を受けた結果として、私には司令官も豹に見えてる。

勿論、地球人本来の姿が見えていないわけじゃないけど、私の内面では司令官は豹の姿』


『でね。司令官の姿は濃いグリーンの豹。私の元の姿は黒豹なんだけどね。

 司令官の姿は、昔、子供の頃よく遊んだ友達の豹と似てるの。

いつも喧嘩ばかりだったけど、たまには凄く優しかった。

今どうしてるのかな?』


サキは戦艦内に投影されている空を見上げる。本当は存在していない空を見通すように。


サキ。そのグリーンの豹の彼、初恋だったんだよね?


サキは驚いて何か言おうとするが、あわてて飲み込む。

飲み込んだ言葉は“どうして分かったの?”


そりゃ、見りゃ分かりますよ。自分が分かりやすい人だって、分かってないのはサキだけだ。


旗艦スミス艦内に戻る。

そろそろ太陽系を脱出する頃合いだ。

もう少ししたら空間跳躍ワープ航法に入る。


皆で集まって食事をとる。

美人の女性陣3人に囲まれて食事が出来るのは、大きな役得だ。

気も使うけどな。


食事が終わってコーヒーやらお茶やらを皆で楽しんでいると、エリが突然席をはずし何事かスミスと話をする。


『司令官。本部経由で“協力者”から伝言がありました』

スミスと話し終わりエリが俺に告げる。


“協力者”と言うと“本部”の都合で、いいように使われる地球の大国の権力者だったな。


『その言い方には意図的な悪意が含まれていると思いますが、正しく言うと

“協力者”は、“本部”が“地球に政治的な影響力を最小限度行使するのを補助する役

です』



「で、何と言ってきたの?」


『太陽系を離脱する“司令官”に“協力者”より申し上げる。


勝手に決めた用事は早く済ませて、とっとと地球に戻って防衛任務に復帰しろ。

クソガキ。

もし、お前のいない間に地球が滅びたら、地獄で待ってるぞ。覚悟しておけ。』


『……だそうです』


いくらなんでも口悪すぎだろ。喧嘩売ってるよな。明らかに。

それに俺は、まだ地獄行きは確定してない。

一緒にするな。

もう勝手にやってくれ。


こっちは、そろそろワープの頃合いだ。


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