戦闘前 2
◆
若干拗ね始めたジュピターの機嫌を直す為に、話を盛り上げようと俺の故郷の話とか、大学の友人達の話とか、日本の料理やらの話題でなんとか盛り返す。
最後は、良い雰囲気で別れた。
遠征が終わったら何処かへ連れて行けと言う約束に関し、再度の念を押されてしまったけれども。
自分のやってる事は軍事組織の司令官らしくないとは思いながらも、やり方が気に食わないんなら、とっとと解任してくれ。と心の中で本部のお偉方に毒づく。
どっちにしろ俺には、こういうやり方しか出来ない。
次はサキ&エリを戦艦内の遊歩道に誘おう。
エリはある意味、俺より大人だから(本当の年齢は知らないけど)必要以上に俺が気を使う必要性は無さそうだ。しかし、サキの態度は気になる。
昨日の“衝撃的”なジュピターの登場以来、距離をおかれている気がする。
もしかして軽蔑された?!
いやいや、ああいう写真をPCに入れておくという事で軽蔑するなら、地球上の男の99%(当社比)は軽蔑対象になるって事を主張すべきなのか?
まあ、あたって砕けろだ。俺は悪くないぞ。
スミス艦内に転移で戻り、エリ達が戦闘の練習をしていた部屋に顔を出す。
どうやら丁度、休憩をとっているらしい。
「お疲れ。ジュピターの艦内に雰囲気の良い散歩道があるんだ。よかったら一緒に行かない?」
エリが賛成してくれ、サキを一緒に連れ出す。
転移が終了すると、もう三次元投影された遊歩道の前だ。
俺はふと思う。今は地球の道が表示されてるけど、他の景色の投影も可能なんだろうか?地球以外の惑星とか。
「ジュピター!」俺はジュピターの本体である戦艦に呼びかける。
『はい。司令官』
「遊歩道の件だけど、他の景色も投影可能なの?」
『地球内ならば、後2箇所ほど。標準ライブラリーにある他の惑星の投影も可能です』
おお、それは凄いな。
他の惑星の歩道とか見てみたい。歩道の概念が異星人にあれば、だけど。
アニメで見た未来都市やら、地球には無い自然の景色を想像する。
そうだ。サキやエリの故郷の星の風景も見てみたい。
「サキやエリの故郷の星も見て見たいな。俺が見て良いものならば」
『標準ライブラリー内部の映像は、司令官の持つ機密レベルで全てアクセス可能です。どちらの惑星を投影しましょうか?』
俺は、サキ&エリの方を見ながら、お勧めの景色を教えてくれないか、と頼む。
エリは、“そうですね何処がいいかな?”と考えこむが、サキは目をそらす。
しまった。
急に回り始める俺の脳は、サキが以前に言っていた言葉を再度俺に告げる。
彼女の星は“本部”と契約していて、主に兵士を供給する役割と言っていなかったか?
地球上で、多くの兵士を他の国に対して供給する国があるとするなら、そこは一体どういう国になるだろう?
強力な覇権国家か?いや、そういう国は他から兵士の供給を受ける国だろう。
供給する側は、相対的に貧しい国か、もしくは何らかの圧力を受けている人々が沢山住んでいる国になる筈だ。
サキは、もしかしたら自分の星を見せたくないのかもしれない。
地球は、辺境にあって文明度も低いという思い込みがあって、サキ達の星を所謂超近代的な星としてのイメージで捉えていたが本当にそうなのか?
分からない。
一瞬の沈黙を気まずく感じたのか、エリがジュピターに話し掛ける。
俺には発音できそうもない、異星の言葉だ。
『エリさん、了解です。投影を開始します』
『私の星ではないのだけど、近くの星系に豊かな自然を持つ星があります。お勧めなんで投影してもらいました』エリが説明する。
風景が歪み、そして消え、実体である透明のチューブが一瞬見える。
が、新しい景色がすぐに投影される。
時間は朝のようだ。
花の咲き誇った低い樹が道沿いにずらっと並んでいる。
幹は地球の灌木の標準より太い。太ったドラム缶に枝が生えている感じだ。花はバラに似ている。
その灌木の外側は草原になっていて、200メートルほど程向こう側には巨大な木が何百本も集まっている。高さは100メートル以上はあって密集した姿は、森というより崖だ。
俺は初めて見た異星の自然の姿から目を離せなかった。
『どうです?なかなか良いでしょう。人気の散策路なんですよ』
「いや、驚いたよ。凄いとしか言い様がない」
俺たちは、話しながら散歩を始めた。
色んな惑星の自然の話とか、可愛い動物の話、そしてサキ達の本当の姿の話。
『司令官や私達を含めた炭素体ベースの生命の場合、支配種族の形態は二足歩行形態で二本の手を持つ、所謂人間形態が多いです。但し、全部という訳では無くて例えば、犬のような生物や鳥のような生物が支配種の時もあります』
エリやサキ達は本物の姿はどういう形態なの?
『さあ、どうでしょう? 人間と姿は変わらないかもしれないし、
ウサギに似てるかも知れない、狼かも?、鳥かも?』
微笑みながら、答は、はぐらかされる。
まあいいや。多分、失礼な事を聞いてしまったんだろう。




