吾、五にして魔法を志す 2
自分にあう魔法の利用法を知るには、リトマス試験紙のような測定紙に血液を一滴たらすだけでわかる。
ある一定以上魔力がある場合のみ反応する紙を利用しており、血液の成分によって魔力をコントロールする身体が循環系なら赤、放出系ならば青くなるというものである。
カインとアベルの試験紙は、共に青く染まった。
「さて、二人とも放出系の魔法が使えるとわかったけれど、これからが大切なんだ」
シャルディによる、第二目の魔法授業が始まった。
「母上みたいに、呪文を唱えたら出来るんじゃないの」
スタート早々の疑問に、シャルディは困ったような笑顔を見せ、アベルに答えをださないまま進めた。
「放出系には、三種類あるんだ。基本は偉大な力を持つものに、魔力を与える事が前提となる」
「偉大なる力を持つものって、何」
アベルは、変わらず不思議そうな顔のまま問いかけた。
「精霊であったり、聖獣、神々、悪魔なんてこともある。
ただ、与える方法が三種類ある」
シャルディはそこまで言うと、黒板に「(1)魔法=呪文・詠唱」と書き込んだ。
「一つ目は、アベルの言っていた通り、呪文を唱えることで、お願いして力だけを貰う方法。一般的に魔法といえば、これだね。
使用範囲は広く、火をつけたり、治療したりできる。ちなみに効果の大きなものに関しては、詠唱を必要とする場合があって、これは長い呪文だと思えば良いよ」
「母上がやってるの」
「そうだね」
次に、シャルディは「(2)召還魔法=魔方陣」と書き、続けた。
「二つ目は召喚魔法。
魔法陣によって、彼らに直接来てもらうことで力を使ってもらう。
魔法に比べて威力が桁違いだけど、そのために契約が必要となるから、使用範囲が狭くなりがちかな」
「契約は、たくさん出来ないの」
「そこは、魔力の量に比例する。
ただ、最初に呼ぶ事自体が大変だし、すでに契約がある契約者は、呼び出しても嫌がれる事が大半だから、大体1体、多くても2体だね。
ここまでは、大丈夫かな」
「うん」
返事をしたのはアベルだけだったが、シャルディはそう気にぜず「(3)憑依魔法=願い」と書き記してから、厳しい顔になった。
「最後は、憑依魔法。
これには呪文も魔方陣も必要ない。ただ、強く祈り願うことで可能となる魔法。
もし成功した場合、自分自身が寄り代となることで、絶大な力を振るうことができる。
ただし、そのリスクは大きくて、魔力を全て与えきることでのみ可能な魔法なんだよ」
「そんな事したら、死んじゃうんじゃないの」
「アベルの言うとおり、自らの生をもって行う魔法なんだけど、実は憑依魔法を使っても死ぬことはない。
身体ごと偉大なる者たちの持ち物になる」
「それは悪いことなの」
「実際、その魔法を使った場合、最初の願いだけは全ての魔力と引き換えに叶えられる。その後は意識のないままこの世界に身体だけ残されて、後はこの世界にいないはずの、偉大なるものが契約に縛られないまま自由に身体を使えるようになる。昔、魔王が現れたという話があるだろう。
それは、憑依魔法によって悪魔を降ろした結果なんだよ。
今、この魔法が利用されているのは神殿の中でだけ。神託を貰う為、神子たちは善なる神を降ろしているからね。普段の神子たちは生ける屍となって祭られているけど、それはただの飾りでしかない」
「神殿に行っても、僕は見たことないけど・・・」
「そうだね、このアデン王国の神殿は基本、神子反対派だし。憑依魔法は、どうしても大きい魔力を必要とする分、遺伝によって魔力量が多くなる貴族が必要とされるから、王様や貴族含め、嫌るトップが大半だからね」
「じゃあ、誰がそんなことするの」
「ほとんどは、ジブール教国でされているかな。あの国は神殿が治めている国だから、神殿に神子を差し出せは、その家族は一生安泰らしいから、常に神子が存在してる」
「でも、一回の神託の為にそこまでするのかな」
「いや、一度降ろしたら、それは神の持ち物なんだ。後は、魔力の量じゃなくて、祈りの強さだから、神子に多くの人は祈りかけるだけで神託が与えられることが多い。それこそ神殿の数だけ神子が欲しいところなんだろうね」
「シャルディはやっぱり反対なの」
「・・・私は、反対だよ。神といえども、本人の意思を無視してまで無理に一生を差し出すのは良い事とは思わないね」
「でも、その人が強く願うから神様が来てくれるんでしょ」
「その為に、神殿は脅迫とか、洗脳をするんだよ」
「・・・洗脳ってなに」
「そこは、追々教えるよ。とりあえず、今は魔法の授業だから、そっち進めるよ」
無理矢理、話を終わらせたシャルディに、アベルはそれ以上問うことができず黙った。
シャルディが実践的で簡単な魔法についての説明始めると、カインは自分の能力について考え始めた。
これまで魔法と召還魔法については、十分試してきた。
そしてわかったのは、カインのチート能力というのは、魔力切れによって死なないという事であるらしい。
ものすごい幸運だったとも考えられなくはないが、2年間毎日のように魔力切れを起こしていのに無事に生きてるというのは、流石に運だけでは片付けられないと思えた。
(大体、魔力切れで死ぬとか…
知らなかったとはいえ、危なかったなぁ)
前世でも、カインは説明書とか読まないタイプであった。
同時に思うのは憑依魔法のことだった。
あれだけ読んだ魔法書の中に、いくらアダン王国で嫌がられているとはいえ、憑依魔法の記述がないのが不思議だった。結果として、もしあった場合、カインは必ず試していた自信があるだけに、今となっては良かったのだが、一文くらいあっても良さそうなものだと思った。
カインは少しだけ意識を浮上させ、アベルが初級魔法と格闘している姿を横目でみながら、自分も授業に参加する用意を始めた。




