吾、五にして魔法を志す
家庭教師シャルディの授業は、カインにとって実に有益であった。
特に自分の持つチート能力の内容を知る機会が無かった彼には、疑問を氷解させてくれるものであった。
「今日は魔法について、教えようと思う」
シャルディの穏やかな声で授業は始まった。
「魔法使って、お母様が使ってるの見たけど、僕にもできるの」
すぐさまシャルディと仲良くなったアベルは、興味深々といった顔をして聞いた。
カインの察する限りでは、確かに母は回復系を主に、幾つかの魔法が使えるようだったが、父に関していえば使っているのを一度も見た事がなかった。
「良い質問だね、アベル。
基本的に魔法は誰でも使えるというわけではい。ただ、魔法の元となっていて魔力は誰でも持っているんだ」
「じゃあ、どうして皆が使えないの」
「そうだね、まず理由の一つとして、魔力そのものが少な過ぎて魔法にならない場合。
もう一つは、魔力多くても放出されない場合がある。
君たちの父上なんかは後者にあてはまるね。
魔力の量だけでいうと、かなりのものなんだけど、身体の中を循環するだけで外に出す事が出来ないんだ。
ただ、こういうタイプは、身体能力が高く、回復力も凄いから、白兵戦を生業としてる人が多い。
王宮の近衛兵になるなら、この部分は必須だったりするんだよ」
「そーなんだ、僕も父上みたいなのが良いなぁ」
「アベルは騎士になりたいのかい」
「騎士っていうか、父上みたいに強くなりたい」
アベルの元気な声に、シャルディは微笑みながら答えた。
「じゃあ頑張らないとね。この魔力利用のタイプはどうやって決まるか解明されてないんだけど、放出タイプでも、多少は循環できる。まぁ、本家ほどの能力は望めないけどね。
ただ、魔力は遺伝するから、両親共に大きな魔力を持っているアベルなら、たとえ放出タイプでも訓練しだいで充分強くなれると思うよ」
「そっかー」
満足そうなアベルを微笑ましい表情で見守るシャルディに、カインはおづおづと声で話しかけた。
「あの…」
滅多に声を出さないカインに二人は驚いた顔をみせたが、シャルディは、すぐさま笑顔を作ると嬉しげに問いかけた。
「どうしたんだい、カイン」
「魔力は後天的に増える事はないんですか」
「…うん、原則として、それは無い」
「原則としては、という事は方法はあるんですか」
珍しく食い下がるカインに、シャルディが不思議そうな顔をしているはわかっていたが、魔力切れによって、魔力増加を起こしていた彼は、ここで引く気は無かった。
「そうだね。一応、放出系のみ方法はある。ただし、その方法はとても危険だ。
実際、魔法を使うとわかるんだが、体内の魔力が少なくなると、体に異変が起こる。
その異変を無視して、もし使い切った場合、約八割の確立で死に至る。ただ、もし生き残れた場合、魔力は増加するんだ。実際、戦場なんかで、はからずも、そういう経験をした魔法使いは、皆、凄い魔力を持ってたりするよ」
「魔法使ったら、死んじゃうの」
アベルは不安そうな顔をして呟いた。
「異変はすぐ察知できるから大丈夫。本当に辛いから。
ただ、魔法は強大な力だからこそ、それなりのリスクが伴うんだ。
だからこそ、しっかり使いこなす為にも、これからちゃんと勉強しよう」
安心させるようにシャルディはそう言い、一回目の魔法の授業をしめた。




