彼ら、五にして学に志す
カインとアベルの父、サルパン・ド・パラディウス卿の従兄弟であるシャルディ・サルパンは、都市とは違い豊かな自然に囲まれたパラディウス領の爽やかな空気を楽しんでいた。
中央で官僚をしていた彼であるが、パラディウス領の時期当主となるであろう双子の家庭教師として呼ばれた為である。
シャルディは、傑物をおおく輩出するサルパン家においても、特に才人と若い頃から知られており、そのの能力は王宮においても遺憾無く発揮されていた。
しかし、未だ学士めいた雰囲気が消えない彼は、権力欲渦巻く中央の争いごとに、いささか嫌気がさしており今回の申し出に飛びついたのだった。
様々な分野において、多才なシャルディは、宮廷についての礼儀作法から、歴史や政治などの学問分野、そして、魔法についても一流だという点で家庭教師として最高の人材といえた。
シャルディが、次期当主候補となる二人、カインとアベルに会った時、双子でありながら、全く違う雰囲気をを持つことに驚いた。
一年ほど前、その容姿はそっくりだったらしい。しかし成長期のこの時期に、異なる生活スタイルの二人には大きな違いとなって表れた。
容姿だけにおいても、長男のカインの身体は、同じ年の子供に対して驚くほど細く、長めのプラチナブロンドと中性的な顔立ちから儚げな少女のようだった。
それに対しアベルの方は、健康的な子供らしい肉体と、同じ髪色ながら短く切られおり、そこからのぞく表情は腕白そうで、特に好奇心で輝く瞳が愛らしかった。
それは、授業中の様子とも重なった。
万事に意欲的で、ハキハキした反応を返すアベルに対し、カインは常に無表情であった。その様子は内容を理解していているのか不安になるほどで、一度も声を聞かない日すらあった。
シャルディからすると、明るく賢いアベルに期待してしまうのだが、カインを無視するわけにもいかず、これから先、三人で授業を進めることに憂鬱な気持ちを隠せないまま、ひとつ息をもらして二人の待つ部屋へ向かった。




