家族団欒
王都滞在はカインにとって有意義なものとなった。
ほんの数日間ではあったが、特にマリンという新しい師との出会いはカインのこれからを考える上で、新しい可能性と決意を与えた。
そして、数時間ではあるが初めての家族旅行を愉しんだ。
シャルディは二、三日、王都で友人と会ってから離れるという事で、両親と双子の家族水入らずでの帰路となったのである。
居城でも常に忙しくしている両親達を占領できる状況にアベルはご満悦で、終始ハイテンションである。
「…それでね、シャルディと街でご飯食べて、
始めて生姜焼き食べたんだよ。美味しかったー
カインも一緒だったら良かったのにね」
「そっか、僕も食べたかったな…」
思わぬ、懐かしい庶民な料理名に、カインは心から同意を示した。
シャルディとアベルが観光をしていた数日間、カインの昼食はマリンの家にあった酒のツマミのようなものだけである。
不味くはなかったが、アルコール無しのつまみは塩辛いだけで、少し辛かった。
「お家帰ったら、作ってもらえるかなぁ」
カインの羨ましそうな表情を見たアベルは、ここぞとばかりに母親に問いかけた。
「そうねぇ、コックは喜ばないかもしれないけど、帰ったら一緒にお願いしてみましょう」
「生姜焼きって難しいの」
「そうじゃなくて、コックは普段二人の為に腕によりをかけて作っているから、あんまり上手じゃなくても作れる下町料理を頼まれたら残念がるかもしれないわ」
「そうなんだー。家のご飯と同じくらい美味しかったのに」
「頼んでみるけど、それは言っちゃ駄目よ」
アベルの素直な意見に、母親は苦笑しながら答えた。
(なんか、セレブな生姜焼きが食べれそうだな…)
「カインは、何か面白いは事あったのかい」
二人の会話を聞きいていた父親は、ボーっとしているカインに話しかけてきた。
「ええと、シャルディ先生に紹介してもらった、マリンさんが面白い人だったかな」
不意をつかれて、つい素直に答えた。
「希代の大魔法使いらしいね。
私は会ったことないけど…面白い人なのかい」
「なんていうか、凄い人なんで勉強になりました」
傲岸不遜で口が悪く、大酒飲みな美少女なのは黙っておくことにした。
実際、カインにとって勉強になったのも事実ではある。
「そうか、それは良かったね。
カインは彼女を師匠にしたいのかい」
「…うん。それは、先生が帰ってきてから父様にも相談しようと思ってるんだけど」
「じゃあ、シャルディが戻ったらゆっくり話そうか」
父親は、少し寂しそうな顔をした。
「王都も楽しかったけど、汽車乗れたのが嬉しいな、僕」
カインは父親の表情に気がつかないふりをした。
「カインは汽車が気に入ったのか」
「うん。凄い早いし」
「あと、みんな一緒だしねー」
アベルが満面の笑顔で入ってきた。
「そうね」
母親も、嬉しそうな様子を隠さずアベルの頭を撫でて続いた。
前世で親孝行をした記憶がないカインにとっては、切なさとむず痒さを感じる光景だったが、自分がその一部であることは、確かに幸せを感じていた。
「また、みんなで乗れたら良いね」
「そうね、カインも元気になったし、みんなで旅行行きましょう」
「そうだな」
「僕も、行きたいな」
カインは心の底から、そう答えた。




