魔女
―この人は、絶対にヤバイ!
カインは目の前に立つ、小さい体のわりに、妙に威圧感がある白衣の女を見てすぐさま直感した。
「お、そっちのチビッこいのが、魔法出来る方だな」
儚げな顔立ちをしているはずなのに、そう感じさせない女は、栗色の髪を束ねただけで化粧っけがまったくなく、凶悪な笑顔を浮かべてカインを手招きしている。
「マリン、自己紹介くらいしたらどうですか」
双子をつれたシャルディは、苦笑しながら女に向かって言った。
「シャルディ、相変わらず面倒臭い奴だな。そのガキ置いてさっさと消えな」
「貴方も変わらず、本当に口悪いですね。
カイン、この人が前に言っていた魔法使いなんですが・・・一応、腕は確かですから」
王と謁見した次の日、双子はシャルディに連れられて貴族街から離れて商店が立ち並ぶ辺りに来ていた。
客がまったくいない本屋に入って行くシャルディを見て、カインは少し不安に思ったが、予め魔法使いの元を訪れると聞いていたので後に続いたのだが、そこにいた人物は想像を絶していた。
「この天才に向かって一応とは、言うようになったもんだな。小手先だけのシャルディ~」
「私は、アベルを連れて観光してますから、カインはマリンと話していてください」
シャルディは慣れているのか特に怒った様子も見せず、マリンの言葉を無視すると、さっさとアベルの手を引いて出ていってしまった。
突然の展開で、カインもアベルも何も言えないまま、古びた本屋にカインと女だけが残った。
「さて、邪魔者が消えたし。ガキ、ついて来な」
マリンはカインを見もしないで、奥にある階段を上っていった。
「さて、とりあえずお前は魔法で何ができる」
二階は、下の本屋にも劣らない量の本が整理されないまま溢れていた。
マリンは、奥にあるソファに座ると、慌てて後を追ったカインをニヤニヤしたまま眺めて、そう言った。
(何がって出来るって、魔法で出来る事ができるだけじゃないのか・・)
マリンが自分を試しているらしい事はわかるが、カインには何が正解かわからなかった。
「どうした、何も言わないとわかんないぞー」
マリンは、黙りこんでいるカインに痺れをきらしたのか、目の前の本を開いて読みだした。
(こいつ・・・、マジで性格悪い)
カインは、やけくそ気味に口を開いた。
「何ができるかは、わかりませんが、人の為になるような・・・人を傷つけなくてもよい魔法使いになりたいんですけど」
「ふーん、なんで」
マリンは、本から顔を上げた。
「・・・魔法で攻撃するのは、怖いからです」
「まぁ、まだ甘いけど合格でいいか」
「合格ですか」
「おう、私が魔法を教えてやる。って言ってるんだよ」
「・・・ありがとうございます」
「なんで、そこで不思議そうなんだよ」
「さっきの会話のどのあたりで、合格なんですか」
「なんとなく相性よさそうだったから。私と」
マリンは、自分とカインを指さしながら楽しそうに言った。
(・・・絶対、嘘だ)
怪訝な顔をするカインを面白がるだけのマリンは何気ない口調で続けた。
「まぁ、シャルディからの紹介だと、魔法の才能だけは規格外の大人しい御曹司ってイメージだったからさぁ、
でも、思ったより気が強そうだし・・面白そうだし。
カインが望む魔法使いになれるよう鍛えてやるからさ。
いつでも、来たら良いよ」
カインは、マリンの思わぬ真摯な表情に、自分の胸が高鳴るのを感じた。
それは、この世界に来て初めてのものである。
「あらー、赤くなてるけど。もしかして惚れたか。
以外とませてるな、お前」
「別にっ、そういうのじゃないですから」
「私の気が向いたら、ソッチの方も鍛えてあげるからね~」
「・・・子供に向かってなに言ってるんですか」
カインは冷めた目で返しながら、自分の第一印象が間違っていなかったことを確信した。




