ギフト
謁見後のお茶会は和やかな雰囲気で進んだ。
見た目も、味も手の込んだ贅沢なお菓子や、香り高い紅茶。
大人たちにはシャンパングラスを持っている者もいた。
カインは長い記憶の中でも、初めて経験する状況に落ち着くことも出来ず、話しかけようとする人の視線を避けるため逃げ回っていた。
明るく可愛らしいアベルに、人が集まり出したのを見計らって部屋を出ると、壁にもたれかかって突っ立っている少年がいた。
十四、五歳だろう、きっちり正装した神経質そうな顔立ちの少年は、ゆっくりカインに視線を向けた。
「サルパン•ド•パラディウス公のご子息がこんなところで、どうされたのですか」
少年は慇懃無礼な口調で、口元だけ歪ませて言った。
「ええと、あなたは」
「しがない、ピアノ弾きですよ」
カインは目の前にいる少年が、さっきまでピアノの伴奏をしていた少年だと気が付いた。
「あぁ、さっきの…さっきの曲、とても綺麗だったけど有名なんですか」
話しの邪魔にならない程度に流れる音楽は、カインにとって聞き慣れないながらも美しく、素直に感心を示した。
「…僕が作ったんだ」
少年はちょっと驚いた顔をして、照れたように言った。
「若いのに凄いですね」
カインの言葉に、少年の顔がこわばり、嘲るような笑みを浮かべた。
「僕なんて、もう若くないさ。
君こそ、若いのに王様から魔法の才能を嘱望される神童なんだろ」
「そんな、僕なんかは」
「謙遜する必要なんかないさ。さっきも随分と話題になっていたみたいだし」
「それは、たまたま僕が年齢のわりに、ちょっと出来るからで…」
「へぇ、天狗にはなってないんだな」
「え」
「君の言う通りさ。
あいつらは、物珍しいものに食いついてるだけ、呆れば見向きもしなくなるんだ。
僕のようにね」
少年の笑顔は、諦めきった大人の見せるものと似ていた。




