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家族の一員

カインが目を覚ました時、そこはこの世界で最も長い時間を過ごした愛用ベットの中だった。


(・・・夢、だったのかな)


気だるい感じはしていたが、いつも通りの寝巻きに、いつも通りのベット。

カインは、寝転がったまま、自分の部屋を見渡した。

アマトが部屋の済みで控えているのも変わりなかった。


ふと、隣が暖かいことに気がつき、目線だけ横へ向けると、

自分より少し凛々しいが、良く似た顔があった。


「・・・アベルっ」


カインの隣にはアベルが規則正しい寝息をたてていた。


驚いて、カインは飛び起きようとしたが、身体に力が入らず、再びベットの中に倒れこんだ。


「カイン様っ、気がつかれましたかっ」


普段、落ち着いているアマトらしくなく焦った様子でベットに走りよった。


「・・・アマト」


「カイン様、良かった・・・」


アマトの目には涙が浮かんでいた。


「すぐ、旦那様と奥様を呼んで参りますね・・・」


アマトは、その存在を確かめるかの様に、そっとカインの頭を撫でると部屋を出て行った。


「・・・カイン」 


騒がしくなった部屋に、アベルは起こされたらしく、寝ぼけた声をだした。


「アベル、起きたの」


「・・・」


カインの返事で覚醒したアベルは、カインの姿を確認して、目を見開いた。


「・・・カインっ、良かった」


アベルは泣きそうな、しかし笑顔になってカインに抱きついた。


「アベル、ちゃんと生きてるの」


少しずつ、記憶が鮮明になってきたカインは、アベルの身体を抱きとめながら弱々しい声で聞いた。


「僕は、カインがちゃんと治してくれたから大丈夫だよ」


「・・・良かった」


確かに死んだと思っていたアベルが生きていることに脱力して、カインは涙が出そうになった。


二人の両親が、カインの部屋に駆けつけた時、アベルに抱きつかれながら、恥ずかしそうに顔を隠したカインがいた。

両親にとっては、この双子が仲良くしている姿は珍しいものである。少し驚いた顔を見せたが、すぐさま二人に駆け寄ると、無事にカインが目を覚ました事を喜んだ。

母の方は、二人の元気そうな姿に加え、カインの珍しい表情に、泣きながら兄弟そろって抱きしめた。

父は、そんな三人を満足げに見守っていたが、やっと安心できたのか、その目には涙が浮かんでいた。


ひとしきり父と母と弟に、もみくちゃにされながら、カインは、改めてアベルが生きている事に安心し、これまでの自分を思うと辛くなった。


(こんなに愛されてる。その上、心配させてたんだな、俺)


結局この二年間、自分のことしか考えていなかったこを実感して、中身が違うとはいえ、この世界に一人しかいないカインを、ちゃんと生きていこうと思った。


しんみりしてしまったカインの目に、いつのまに入って来たのか、シャルディの変わらない穏やかな姿が入ってきた。


シャルディはカインと目があうと、ゆっくり近づいてきた。


「カインも、起きたばかりで辛いでしょうし、そろそろ離してあげませんか」


シャルディの言葉に、やっと両親もカインの状況を思いだしたのか、パッと離れた。


「そうだな、カイン。ゆっくり休めよ」


「そうね、また夜に来るから、それまでちゃんと休むのよ」


「僕は、このままカインといるねー」


アベルだけは、カインにくっついたまま離れなかった。


「こら、アベル。ここで寝るのは、カインが目を覚ますまでの約束だろう」


「アベル、カインが早く元気になる為にも、今はゆっくり休ませてあげなくちゃ駄目よ」


カインから引き剥がすようにアベルを抱えた父親に、アベルは少し不満そうな顔を見せたが、母親の言葉に納得したのか、アベルはカインに笑いかけて手を振った。


「じゃあね、カイン。またあとでね」


父親に抱かれたまま、アベルはそう言って部屋を出て行き、

部屋には、これまで通りの静けさが戻ってきた。


軽く息を吐いたカインを見て、シャルディは苦笑を洩らしながら、部屋に残るアマトに顔を向けた。


「アマト、カインは私が見ておくから、貴方も少し休みなさい」


「・・・でも」


「ずっと、休んでいないのでしょう。一時間ほどしたら、また呼びに行きますから」


「わかりました・・・ありがとうございます。

では、カイン様。何かあったらすぐお呼びくださいね」


改めてアマトの顔を見ると、その顔色は悪く、カインは言われるまで気がつかなかったことに自己嫌悪に陥ったが、これから直していこうと、今は前向きに考えられた。


「大丈夫だよ。・・心配させて、ごめんね」


「いえ、カイン様が無事であれば、本当に良かったです」


普段とは違うカインの反応にも、アマトはただ本当に嬉しそうに笑って、部屋を出ていった。



そして、部屋にはカインはシャルディの二人が残された。



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