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4月

入学式、卒業式、始業式、終業式、合唱コンクール、運動会


式典や、イベントの前、私はアスリート並みに自己調整に励む。



当日に備えて、前日の朝から生活に配慮する。


だるい身体に鞭打って起きて、朝から浴びたくもない朝日を浴び、息切れしながら軽い散歩して、3食苦手な肉も胃に詰め込んで、夜ご飯のあとはスマホも我慢して封印して、21時半には布団に入った。

それでもいつも通り寝つきが悪く、大体結局日付を跨ぐまで眠れないんだけど、それでも耐えて布団に横になってとにかく体力を温存する。


そんなに努力していても、今のところ倒れずに最初から最後まで参加できた成功率は5割弱。


成功した中の半分は途中で意識が朦朧としていたり、椅子に座れるポジションだったりするので、実際はもう少し少ない打率なのかもしれない。


別に持病とかがあるわけではない。


幼い頃から、旅行に行けばすぐにばててホテルで寝込み、人混みに出かければ風邪を引き、少し長い式典はほとんど毎回貧血を起こす私。


心配した両親に、何度か大きな病院に連れて行って検査されたけど、検査結果はいつも至って健康。自律神経とか、そういう身体の炎症反応とかがかなり人より敏感なんだろうと。


お母さんとお父さんは、そんな面倒な体質な私を責めたりせず、共働きなのに頻繁に寝込む私を2人で交代で休んでいつもどちらかが側に居てくれた。


でも子どもってのは残酷なもので、小学生になる頃には頻繁に休んだり早退したりする私を、一部のクラスメイトは“仮病の伊勢谷さん”と認識した。

悔しかった。

でも同時に不安にもなった。

本当に私の気持ちの問題で体調不良と思い込んでいるだけで、自分でもよく分からず仮病なんじゃないかと。

だから私はそんな不安に打ち勝つためにも、とにかく出来ることをした。

体力作りに水泳に行ってみたり、ジョギングしてみたりした。

しかしそもそもの基礎能力が低すぎるせいなのか、もれなく体調を崩したので泣く泣くやめた。

今は家で動画を見ながら筋トレをしているが、筋トレをする筋肉が足りないのか、きっと側から見ればトレーニングしているというよりは、毛虫がうごめいているように見えるだろう。



それでも、私はあきらめずに日々の努力をしている。

いつか自信に溢れた破茶滅茶に強靭な肉体を手に入れるために。


だから

鈴木宗馬の

「俺、具合悪そうな伊勢谷さんみてすごいドキドキした!またいつでも倒れていいよ!」

発言は、

私にとって非常に無礼な挑発と受け取った。





4月。


「あー、鈴木くんがこっち見て手を振ってるよ〜」

新しいクラスで仲良くなった坂口ひなのちゃんが、生温い笑顔で私に教えてくれる。

「知ってるよ、知ってて無視してる。」

「うわぁ、私もそれ知ってた。」


同じクラスになって数日で分かったことは、

別に鈴木宗馬はコミュ強派手目グループの住人ではない。

そして、前のクラスメイト曰く

「もともとちょっと変わったやつだったけど、目立ったことをするタイプではない」と。


その評価の通り、一応授業は真面目に受けているし、なんなら成績も良さそう。


ことあるごとに私に腹が立つワクワクした目線を向けてくること以外は無害と言えよう。

いや、無害な中でちょいちょい暗躍してくる。


朝からだるい日や、生理痛で苦しんでいる日、体育のあと、

私が弱っているタイミングをまるで見計らったように、この鈴木宗馬が現れるようになった。


たぶん今朝も貧血気味で朝ごはんも食べられなくて、血の気の少ない顔をした私を認識してか、栄養ゼリーを持って手を振ってきている。


いらん!なんなんだ!その嬉しそうな顔は!頬を赤らめるな!


机に突っ伏した私の頭の頭皮をひなたちゃんが「いい子いい子〜」と言いながらモミモミする。優しい…。


「あ、もしかして、頭痛いの?俺ハッカ油持ってるよ!」


「…いらない」


頭を上げなくてもわかる。

誰のせいで頭痛いと思ってるんだ。


「鈴木くんー、ひかるちゃんは今君のせいでご機嫌ナナメなのです。やめといた方がいいよー?」


「えー?!なんでなんで?俺何かした?」


「ひかるちゃん、鈴木くん何かしたの?」


「私が具合悪いの嬉しそうなのがイヤ」


「わぁ、それは気持ち悪い。」


ひなたちゃんは非常に正直な感想を述べてくれる。


「えぇ、でも、俺本当に、苦しみを堪える伊勢谷さん見ると、なんかもう堪んなくて。でもイヤなのかー、困ったね、どうしようか?」


「見なければいいと思う。」


「わは!無理だよー!伊勢谷さんは無茶言うなぁ!」


私のはっきりした拒絶に、なぜか冗談を言われたみたいに笑う鈴木くんの情緒がマジで分からない。


一限が始まるチャイムが鳴ってそこまでで会話は終わった。


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