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歩くたびに鎧の音がする。今まではしなかった音だ。
これも少し違和感があるな。だが心強い。
「じゃあな」
「色々とありがとう」
モー達の元を去る。
モー達の会話が聞こえてくる。
「それで鉄のインゴットはあったか?」
「倉庫にいくつか残っていた。全部は足りないだろうが、鉄鉱石を精錬する間ぐらいは何とかなりそうだ」
「石灰はどうだ?」
「腐るほどあるさ」
「よし、じゃあ早速始めよう」
集落の散策を続ける。
種族達の集落をこうして歩くのは楽しい。
まさかこんな日が訪れるとは、夢にも思っていなかった。
・不安に苛まれ
散策していると、深刻な表情で話し合っている人間の男女がいた。
〘⇄〙側へ行く。「どうかしたのか?」
「あぁ!? 何も持ってない! 殺さないでくれ!」
「あなた落ち着いて、さっき助けてくれたウェアウルフよ。彼が着ているのモーのところに飾られてた鎧じゃない。それに声もそうだけど、灰色の尻尾が出てる」
「ほ、本当だ。はぁ~、だが怖いな」人間の男が深呼吸をし、胸に手を当てている「お前のその冷静さにはいつも助けられるよ」
「それで私達に何か用?」
「何か困っているようだったから、何か力になれないかと思ってな」
「なんて親切なの! 実は私の従姉が所有していた鉱山に、精練し終えたインゴットが残っているかもしれないの。それがあれば集落の復興に役立つと思って」
「モーの所で話を聞いたが、何とかなると言っていたが?」
「そうかもしれないだろうけど、その場合時間は掛かるし、何より不測の事態が起きたら困るでしょ? 無いに越した事はないわ」
「確かにそうだな。その従姉はどこに?」
「吸血鬼に殺されてしまったわ。正確には家具の下敷きだけど」
「あまり悲しそうじゃないな?」
「こう言っちゃなんだけど、いつも凄かったから。死んでしまって嬉しいとは思っていないわよ。でも、心底ほっとしているの。鉱山も私達が譲り受けるしね」
「ああ、彼女は凄かったな。俺の事をいつも赤ん坊扱いだ。普通の奴だったら耐えられないだろうな」
「お前は平気だったのか?」
「平気って訳じゃないが、ほら……」隣の女を目線で合図するように見る。
軽く頷く。
確かに会って間もないが、気が強いのが分かる。
〘⇄〙察して話を合わせる「それでも家族だったからな」
「そ、そういう事だ」
「それで、鉱山の何が問題なんだ?」
「実は二人で鉱山に行こうとしたんだけど、鉱山の入り口に死体が散乱していて、まだ吸血鬼が中に残っているかもしれないの。だから戻って来たってわけ」
「分かった。代わりに見てこよう」
「助かるわ。鉱山はあっちよ」
女の指差した方角へ向かうと、少し丘を登った所で小さな鉱山が先に見えた。
確かに何かが散乱しているな。
ここからでも分かる死臭だ。
だが、変わった感じのにおいだな。
鉱山の入り口まで行くと、女の言っていた通り死体が散乱していた。
これは以前、森で見かけた事のある連中だ。
青い布を腕に巻き付けている。そして統一性のない防具。
盗賊だな。
その時、鉱山の中から微かに足音が聞こえる。
耳を澄ますが、鼠の足音ではなさそうだ。
心眼の目を放つ。
赤い靄のシルエットは人型。
一人の盗賊が片手で脇腹を抑え、足を引きずりながら出てきた。
壁に手をついて歩いていた盗賊が出口から出ると、顔を上げ俺と目が合った。
「〿gfšf”fHfjfAf”¥fofWf<〿h〿」
慌てた様子で盗賊の女が腰に差していた剣を抜く。だが上手く握れなかったのか地面に落とした。
「ふむ」
茶色いフードを被っている盗賊の女に近付く。
「うぅ!? あっ!」
盗賊の女がバランスを崩し地面に倒れ込んだ。
俺に手を向ける盗賊の女。
小規模の火球を数発俺に放ってくる。
火球を避け、素早く近付き、地面に落ちた盗賊の女の剣をブーツで踏み潰す。
地面まで砕けた。
素足の時より威力が増しているようだ。
〘⇄〙「殺す気はない」
「はぁ、はぁ、ゲホッ、ゲホッ」
困惑しているようだ。
「怪我は大丈夫か?」
「ええ……まあ」
女が脇腹押さえながら胡座をかいて座る。
「ここで何をしていたんだ?」
「金目の物を探してたんだよ。ゲホッ、そしたらスクリーマーが現れて、襲ってきやがった」
「お前の他にもいたのか?」
「いたんじゃないの。今頃死んでるだろうけど。フッフッ。ゲホッ、ゲホッ」
〘⇄〙「もう戻ってくるな。次は容赦しないぞ」
「わあってる。あんたとやり合うなんて、こっちから願い下げよ。ゲホッ、ゲホッ」
盗賊の女は辛そうに立ち上がり、集落とは別の方向に歩き去って行った。




