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右奥に地下への階段が見える。階段へ向かう。
「あなたには何か名前はないの?」
「ない。君はどうなんだ? 名前があるのか?」
「当たり前でしょ。誰にだって名前ぐらいあるわ」
「…………」
「あぁ……ごめんなさい。私はローゼよ」
「よろしくな。ローゼ」
「やっぱりあなたにも何か名前がないとね」
「だからないと言っているだろう」
「ないならつければいいのよ。何がいい?」
「そう言われても困る。考えたこともなかった」
「ずっと一人だったの?」
「みな恐怖で叫んで逃げるか、俺に武器を向けてくるやつとしか会ったことがない。名乗る必要なんてなかったんだ」
地下へ降りる階段の前へと着く。降りる前にできる限り地下の様子を伺う。
どこに扉があるんだ?
「私が開けておいた」
頭の中にソラヌスの声が響く。
「それはかわいそうね〜。う〜ん……」手を顎に当て 考え込んでいる様子のローゼ「スコルってのはどう?」
「いいんじゃないか」
「あなたの名前よ。嫌なら言ってよね」
「名前は何でもいいんだ。呼んでくれるだけで嬉しい」
「あなたって意外と可愛いところあるじゃない」
「それは褒めてるのか?」
「もちろんよ!」
「なら、ありがとう」
警戒しながら地下へと降りる。
「よくあるけど、嘘つかれたわね」
突然周囲が明るくなった。
ローゼがカンテラに火をつけていた。
「熱くないのか?」
「熱くないわ。これはフェイの魔法光だから」
「そんな便利なものがあるんだな」
「あなたはこの暗さでも見えるの?」
「ああ、今は少し眩しい」
「じゃあ消しておいた方がいいかな? それの方が……」
暗闇の先に気配を感じる。
ソラヌスから授かった心眼の目の力を試してみる。
すると、暗闇の中に吸血鬼のシルエットをした赤い靄が浮かび上がった。
気がついた時、吸血鬼はローゼに襲いかかろうとしていた。
「ローゼ!!」
咄嗟にローゼの肩を掴み、吸血鬼の攻撃の身代わりになる。
吸血鬼が俺の背に爪を食い込ませてくる。
後ろに手を伸ばし、吸血鬼の翼の端を握り掴み、引きちぎる。
痛みでうろたえ、食い込ませた爪をしまい後ずさる吸血鬼。
そのまま吸血鬼の顔面を掴み、膝蹴りで頭部を潰す。
「気をつけろよ。まだ他にも潜んでいるかもしれない」
ローゼから返事がない。
振り向くとローゼが壁に背をつき、肩を押さえ、歯を食いしばりながら痛みに耐えていた。
「うぅ……」
「大丈夫か?」
「折れた……みたい」
俺がさっき掴んだ時に折ってしまったんだろう。
「あぁ……す、すまないローゼ」
「ンフフ……あなたが助けてくれなければ……死んでた」
「ど、どうすればいい?」
「私のバッグを」
ローゼが腰に巻いていたウエストポーチを人差し指で取り、中を探る。
「ど、どれだ?」
「落ち着いて、痛みはあるけど死にはしないから」
「そのナイフみたいなのを取って」
白い短剣を両手の人差し指でそっと掴み、ローゼに手渡す。
ローゼが白い短剣を掴むと、そのまま肩に差した。
「大丈夫なのか?」
「形がナイフなだけよ。ふ〜、これで痛みは引く。次にその黄色い液体が入った瓶を取ってローゼに瓶を渡す。
「何が入っているんだ?」
「ただの治癒のポーションよ」ローゼがコルクを外すとそのまま一気に飲み干していく「ふ〜、これで治る。黒い石の小瓶取って」
「ああ」
手渡す。
ローゼが白い短剣を肩に当て、黒い小瓶から巻かれた布を取り出すと首に掛け、口を使い手首に巻き始めた。そして肩に回した布と手首に巻いた布を結び終える。
「これでもう大丈夫」満面の笑みを浮かべるローゼ。
ローゼが立ち上がり、ローゼにウエストポーチを手渡す。
「本当にすまなかった」
「今度から気をつけてよね!」
「あぁ……」
「冗談よ。助けてくれてありがとう」
ローゼが優しく腕を擦ってくる。
「はぁ〜、元気になってよかった」
「あなたって想像以上に力が強いのね」
「まあな」
ローゼと共に、警戒しながら教会の地下を進んでいく。




