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「すー、はー」
興奮した自らの呼吸を整える。
戦っている最中は気づかなかったが、教会の板張りされた窓の隙間から、中に隠れていたであろう種族たちが俺を見ていた。
「おい! もう終わったぞ。出てこい」
小屋に隠れていた ダークエルフの男が出てくる。
「おぉ、本当に助けてくれたのか」
「最初からそう言っているだろう」
「す、すまなかった。いや、ありがとう。本当にありがとう」
「うん」
悪い気はしない。
他の者から感謝されたのは……初めてだ。
不思議な感覚だ。今まで味わったことのない気持ちになる。
ダークエルフの男が教会の正面の扉に向かい、拳でドアをノックする。
「もう大丈夫だ。みんな出てきていい」
ダークエルフの男がそう言うと、教会の中に隠れていた種族たちが次々と出てくる。
皆薄汚れ、怪我をし、恐怖で表情がこわばっている。
皆俺の方に注目している。
「彼が吸血鬼たちを追い払ってくれた」
「それで私たちの中の誰かを生贄にって?」
「おいおいそんなの嘘だろ!?」
「冗談じゃない! まだ死にたくない!!」
隠れていた者たちがパニックを起こし始めていた。
「何も心配ない。そんなことはしないはずだ」
ダークエルフの男が俺の方に振り向く。
教会から出てきた者たちの方へ近づく。
皆恐怖に怯える表情で俺の方を見つめてくる。
「見返りは必要ない。ただ助けたかったから助けただけだ」
種族たちはお互いに顔を見合わせ、何かを考えているようだ。
「わざわざ 俺たちを助けに遠くから? それとも偶然ここを通りかかったのか?」
「俺の種族にまつわる物がこの集落にあると聞いて来たんだ。それが何なのかの探しに来た」
「そういえば、今まで気づかなかったんだが、教会の地下に狼の紋章が描かれた扉があったんだ」
「ええ、確かにあったわね」
「もしかしてそれじゃない?」
「でも俺たち数人で何とかしようとしたが、どうやっても開かなかったじゃないか」
「きっと何かあるんだろう。あそこにあんたが探しているものがあるんじゃないか?」
「分かった。情報に感謝する」
「こちら……こそ。じゃあ私たちはもう行くよ」
種族たちがそれぞれお互いを気遣い合いながら、家屋の方へと向かっていく。
種族達は俺から一定の距離を取り、何度も見ては顔を逸らし、また見てくる。
通り過ぎるダークエルフの女と人間の男の小声の会話が聞こえてくる。
「何か変な感じね。ウェアウルフと話をしただなんて。まだなにか実感がないというか、信じられないわ」
「そうだな。だがやっぱり俺たちを助けてくれたんだ。良い奴なのかもしれない」
「彼はいい人でしょうけど、他はどうかわからないわ」
「そうだな。お前の言う通りかもしれない」
ドワーフの男と人間の男が話しながら通り過ぎていく。
「あぁ最悪だ。俺の仕事場が燃えてやがる」
「命が助かっただけ良かったじゃないか」
「それはそうだが、一体これからどうすればいいんだ」
「あんたはこのラタエで唯一の鍛冶職人だ。みんなあんたの仕事場の復興を手伝うよ。もちろん俺もだ」
「そうだな。くよくよしてはいられないな。よし! 仕事に精を出すぞ!」
「それでこそいつものあんただ」
「「ハッハッハッ」」
ダークエルフの女2人が話しながら通り過ぎていく。
「一杯やらないとやってられないわ」
「ええ、片付けは少し飲んでからしましょ」
「お酒が残っているといいけど」
「何かの書物で読んだことがあるんだけど、吸血鬼はお酒も飲むらしいわ」
「嘘!? ホントッ最悪なやつらね。お酒だけ飲んでいればいいのに」
「まったくよね」
通り過ぎる種族たちの会話に耳を傾けていると、黒い中装鎧を身につけた人間の女がこっちへ向かってきた。
俺の目の前まで来ると立ち止まり、茶色い髪を耳にかけながら俺をじっと見てくる。
「俺に何か用なのか?」
「本物のウェアウルフなのね〜」
「あまり驚いていないようだな。他のウェアウルフと会ったことがあるのか?」
「あぁ……驚いてるのよ」
「そうか。他のと者はあまり話した事がなくてな」
「その体じゃ仕方はないわよね。攻撃してこないと分かってても怖いもの」
少し見つめ合う。
教会に向かって歩き出そうとする。
「あっ!?」
女が突然大きな声を上げる。
「な、なんだ!?」
「きゅ、急に動くからびっくりするじゃない」
「あぁ、すまない」
遠くから種族たちが心配そうにこっちを見つめている。
女が種族たちに笑顔で手を振る。
すると種族たちは家屋の片付けや、水術での消火作業へ戻って行った。
「他に用がないなら俺はもう行くぞ」
「待って、私も一緒に行く」
「あまり俺のそばに来るなよ。間違えて踏んでしまうかもしれない」
「分かったわ」
教会へ入り、中を見回す。意外と中は広い。そして思ったより綺麗だった。




