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【完結】ソラヌスの遠吠えⅠ狼子  作者: 逆立ちハムスター


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Ⅶ章 〘抑止力〙



店を出ると見慣れた顔のダークエルフの男と会う。

「あ、あんたは!?」

「お前はあの時の!? ここで何を……ああ」

さっきの人集りか。

「ラタエがまた吸血鬼に襲撃されてな。皆と一緒にここへ避難してきたんだ」

「皆無事なのか?」

「無事だ。だがここまで全員無事に来れたのは、あんたがラタエで皆に力を貸してくれたからだ。あんたはまた私達を救ってくれた。何とお礼をしたらいいか」

〘⇄〙

「礼ならもう貰った」

「あんたは本当に凄いよ」

「それにしても随分と早いな」

「馬を止まらせなかったんだ。交代で御者を務め、皆馬車の荷台で寝てな」

「なるほどな」

「それで吸血鬼はどれくらいいたんだ」

「詳しくは分からなかったが、とにかく大群だ。幸い俺達は襲われる前に気が付いて逃げる事ができた。だが集落は……遠くから見ても分かるほどボロボロだった」

「着いたばかりで言いたくはないが、ここも安全とは言えない」

「近くに吸血鬼がいるのか?」

「いいや。だがここへ奴らが来るのも時間の問題だ」

「そうだろうな。これからどうするか 皆で話し合ってみるよ」

「ラタエにいた頃も思っていたんだが、お前が皆をまとめていたのか?」

「私の家は代々ラタエの統治者だったからな」

「そうだったのか」

「悪いがもう行かないと。カイスター王と謁見しなきゃならない」

「ああ、気をつけてな」

「じゃあな」

ラタエのことは残念だが、住人たちが皆無事で良かった。

俺の助けが役に立ったということか。

何が起きるか分からないな。

兵士達が俺に向かってくる。

銀色の鎧を身に着けた衛兵。

だがこの兵士達は青い装飾が施された鎧を身につけていた。

「あなたがムーンウォリアーですね」

「何だって?」

「これは失礼しました。我々の間ではウェルフの戦士の事をムーンウォリアー と呼んでいるのです。お許しを」

「それで俺に何か用なのか?」

「失礼は承知なのですが……その……兜を一度外してただきたく……」

兜を外す。

「「「おぉ〜!」」」

話していた男の兵士の後ろにいた者たちが、俺の顔を見て一斉に声を上げた。

兵士たちが跪き、頭を下げる。

「カイスター王が是非あなた様と一度 直にお会いしたいと。了承いただけますか?」

吸血鬼もそうだが、ラタエの一件も気になる。

「ああ、案内してくれ」

跪いていた兵士たちが立ち上がる。

「では、こちらです」

城というより要塞だな。

以前見たことのある帝国の要塞のようだ。

謁見の間まで向かう。

城というのはもっと豪勢なものだと聞いていたが、ローゼの家より華やかさがない。

何か殺風景で、寂しさすら感じる。

温かみがないのだろうか。森の洞窟に似ているな。

だが戦うとしたら非常に有利に戦えそうな感じはするな。

玉座が中央の奥にあるが、誰も座っていない。

「いやはや、本当にここまで来てくださるとは」

後ろにいた兵士の一人が話しながら兜を脱ぎ、俺の前へと来る。

後ろにいた他の兵士たちは下がっていった。

「まさか兵士に化けていたとは」

俺のイメージしていた王とは違い、どちらかというと手練れのハンターに近いか。

「私は何事も直に見て決めるのが好きでね。そこらの王とは違う」

「あんたがカイスター王なら、ラタエの統治者であるダークエルフは誰と会っている?」

「執政だ」カイスター王は外した兜を使用人らしき女へ手渡す。そしてテーブル側の椅子へと座る「遠慮せず寛いでくれ」

テーブルの中央には火が灯された燭台が置かれ、様々な料理が並べられている。

どれも旨そうだ。

ローゼの料理も凄かったが、こっちはまた雰囲気が違う料理ばかりだ。

カイスター王の向かいの椅子へと座る。

カイスター王が2つの銀のグラスに赤い液体を注ぎ、1つを飲み干していく。

「あんたは吸血鬼についてどう思う?」

「単刀直入か〜。私も好きだ。吸血鬼については、もちろん脅威だと思っている」カイスター王が骨の付いた肉を手に取り頬張っていく「だが、奴らと戦うのは時期が大事だ。適切な時期を見極めなければ、排他されてしまう」

「そんな 悠長なことを言っている暇はないぞ。奴らラタエを襲った以上、ここへ来るのはそう日がない」

「やはりか」カイスター王が骨だけになった肉を皿へ落とす「万全ではないが、準備は整えている。来るならば戦うまでだ」

「勝てる見込みがあるのか?」

「もちろんさ。だが実際、戦ってみなければ何もわからん」

「ふむ」

「良ければ手を貸してくれないか?」

「何だと?」

「正直言って、実際に吸血鬼と戦ったことのある者は少ないんだ。ウェアウルフの君なら、偉大なソラヌス恩恵の元、我らを勝利へと必ず導いてくれることだろう」

「逃げるべきだ」

「逃げても状況は変わらない」

「それは分かっている。だが戦う準備ができていないのに、戦いを挑むのは無謀過ぎる」

「ウェアウルフの君が、そんなに弱腰 だったとはな」

「目の前で仲間が吸血鬼に無残に殺されても、戦意を失わなず戦い続けられる兵士がここにはどれほどいる?」

「…………ふむ」

席を立つ。

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