22
多くの種族達が困惑しながら、門の方角を時より見ている。
門へ着くと、人集りができていた。
門の周囲は多くの馬車で溢れかえり、衛兵達が道を開ける整理に追われていた。
集まった種族達の話し声が聞こえてくる。
「一体何があったんだ?」
「どうも何処かの集落が盗賊に襲撃されたらしいの」
「盗賊が? そんな事あり得ないだろ。盗賊が守衛隊を倒せるなんて思えない」
「おいおい、これは何の騒ぎなんだ?」
「近隣の集落を吸血鬼達が襲ったってよ」
「マジかよ。ここも危ねーな」
「ああ、すぐに荷をまとめようぜ」
「そうしよう」
「また放浪者が増えるの? 困ったものだわ」
「そうよね~、昔は綺麗な街だったのに、今じゃあまるでスラムよ」
カイスター衛兵の話し声が聞こえてくる。
「また避難民か?」
「さあな、とにかく捌くしかない。お前の部隊は群衆を遠ざけてくれ」
「俺の部隊は応援が来るまで連中を街の中に入れないようにしておく」
「分かった」
衛兵達が迫ってくる。
「おい! 下がれ!! 」
「道を開けるんだ」
端の店脇に移動する。
後方から笛を鳴らしながら次々と衛兵達が駆けつけてくる。
「邪魔だ!! 道を開けろ!!」
「どけ!!」
店の中へ入る。
ドアを閉じると多少静かになった。
目を閉じ、心を落ち着かせる。
鹿三頭を担ぐ。
これだけあれば今日はもう十分だろう。
風が唸っているな。今日は嵐が来そうだ。
聞き慣れない物音がし身を屈める。
ラヴェジャーか? 俺のテリトリーに入ってきたのか?
身を屈め、木や草影に身を隠しながら静かに進む。
すると若いラヴェジャーがいた。
新参者か。どうせあいつに倒されるというのに。
ラヴェジャーの視線の先を見る。
すると一人のウッドエルフの女性がいた。
彼女はラヴェジャーにまったく気付いていないようだった。
このままじゃラヴェジャーにやられてしまう。だが助けると……。
ラヴェジャーが女性に接近していく。
躊躇している暇はない。
若いラヴェジャーに飛びかかり、左手で頭を地面に押し付け、右爪でラヴェジャーの横腹を甲羅ごとかっさばく。
ラヴェジャーの甲羅が避け、黄色い血肉が吹き出す。
驚いた女性と目が合う。
「もう大丈夫だ」
女性が笛を吹き、笛の音が静かな森に鳴り響く。
「お客様さん?」
目を開けると、装飾が施された青い服に、鼻に眼鏡をかけたレプラコーンの男がこっちを見上げていた。
「な、なんだ?」
「なにか探し物で?」
店の中を見回すと、多くの書物が棚に並べられていた。
〘⇄〙
「ド、ドラゴンに関する書物を探している」
「あ~! やはり。あなたはお強そうだ。さあこちらへ」
「助かる」
レプラコーンの男についていく。
「しかし貴方程腕が立ちそうな御方に合う書物が、私の店にあるかどうか」
「多くの魔物と戦ってきたが、まだドラゴンとは一度も会った事がなくてな。北の山脈に出たと聞いて、万が一に備えておきたいんだ」
「佐用ですか。でしたらお力になれると思います。こちらの書物をどうぞ」
「ありがとう」
「ではごゆっくり」
こんな薄い厚みの書物は初めてだな。
一冊を手に取る。
開きにくい。1つのページが上手く開けん。
「あっ!?」
ページを捲るのに苦労し、破いてしまった。
さっきのレプラコーンは気が付いていないようだ。良かった。
────ドラゴンの真実。著:フォルネスト。
多くの者達がドラゴンの事を野蛮、或いは崇高かと議論を交わしている事だろう。
だがそれらの議論は無意味だ。
何故なら議題と為り得る論点が根本から誤りだからである。
本書ではドラゴンの真実について書き記していく。
────
こ、これだけか?
肝心なことが何も書かれていない。
次の書物を手に取る。
今度は破かずに開けた。
────ドラゴンの生態。著:ドアエ。
ドラゴンの生態は未だ多くの謎に包まれている。
しかしそんな未知の種族であるドラゴンも、徐々にその全貌が明らかになりつつある。
ドラゴンは基本的に群れる事なく単独で……。
──
これもか?
「ふ〜ん」
レプラコーンの元へ向かう。
カウンター内の椅子に座り、書物を読んでいるレプラコーンの男。
「おい、少しいいか?」
「どうしました?」
「どの書物もほとんど何も書かれていない。一体どういうことなんだ?」
「はぁ……。手に取れる書物は全てサンプルですので」
「まともに書かれているものはここに置いていないのか?」
「もちろんあります。そちらをお読みになり、気に入ったものがあればこちらでご用意いたします」
「なるほど、そういうことか」
「書物の値段はいくらぐらいなんだ?」
「それは非常に様々ですね。ですが基本的には1金貨が多いかと。また裏に値段を其々記載しております」
裏返すと3金貨と書かれていた。
食料に比べ随分と高いな。
それに書物を読むのは何か、疲れるな。
「また用があれば来る」
「お待ちしております」
ローゼの家にも本が沢山あった。
まずはローゼに見せてもらってから考えることにしよう。




