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【完結】ソラヌスの遠吠えⅠ狼子  作者: 逆立ちハムスター


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19/27

19

〘⇄♡〙「ああ」


しばらく後。

ローゼと少しの間、ベッドで時を共にした。

ローゼはより多くを求めてきたが断った。

今日も今日だった。どんな理由があるにせよ。ローゼはゆっくりと体を休めるべきだろう。

だがこれはローゼを悲しませてしまっただろうか。病み上がりのローゼの体を思うと、正しかったと思うのは変わらない。


両手を枕代わりにし、窓から外を眺める。

窓から見える大小2つの月は、森のベッドから見える景色と変わらない。

しかし妙なのは……このカウチの柄だ。

色といい、描かれている絵といい、どうも落ち着かない。

ローゼの両親が昔、商人から買ったのだろうか? それともローゼが好きで買ったのか。

今日軽く見て思ったが、商人の売っている品はどれも不思議な物ばかりだった。

生きていない木の馬など、一体誰が何の為に買うのだろうか。

ウェアウルフの彫刻もあった。

理解は出来るが、態々作るほどの物なのだろうか。

作る方も作る方だが、あれを買う方も買う方だ。

変な絵も沢山あった。中には風景を切り抜いたような驚くべき物もあったが、基本は種族が書いた落書きのような物ばかりだった。

それを行き交う多くの種族達が立ち止まり、顎に手を置いては注意深く見ていた。

注意深く見ていた者たちも、俺同様疑問に思っていたのだろうか。こんなものが、と。

それにしても吸血鬼が集落を襲ったというのに、カイスターの住人達の多くが何事もなく過ごしている。

同族を殺されても、何も感じないのだろうか。

神がこの地を平気で見捨てるように、種族も似たようなものなのだろうか。

「ん?」

眩しい……。

目を開けると、白夜の月明かりが差し込んでいた。

起き上がり、部屋を眺める。

いつもと違う風景は新鮮だな。

ローゼはまだ寝ているんだろうか。

ベッドへ行くとローゼはいなかった。

「ローゼ?」

昨日は見てなかった奥の部屋の方から音が聞こえてくる。

川? 水の音か?

仕切りを開けると白い煙が立ち込めている。

「ローゼ、いるのか?」

「ああ、おはよう」

奥の布のような仕切りから顔だけ出すローゼ。

「体を洗ってるのか?」

「そうよ。お湯……あったかい水が出るの」

「ほお、便利だな。もうすぐ出るから、あなたも使ってみて」

「ああ」

周囲を見回していると、赤い石が目に止まった。

ローゼが裸で出てくる。

「そこの青い布取っ手くれる?」

ローゼに手渡す。

「ありがとう」

「この小さな赤い石で水が温まっているのか?」

「そうよ」

「これなら知っている。森の地下で見た事がある」

「森で!? 本当に?」

「ああ、熱い緑の水があちこちに貯まっていて、側の穴から白い煙が上がっているんだ。その周辺に沢山落ちている」

「わお〜」

髪を布で拭いているローゼが手を止め、俺を呆然と見ている。

「どうしたんだ?」

「その石って、買うと結構良い値段するんだよね」

「あ~なるほどな。だが無理だ」

長椅子に座る。

ローゼが体に布を巻き、棒の先に入れ物がついたやつで水をすくい、歪な形をした石に掛けた。

すると一気に部屋が暑くなった。

「どうして~?」

ローゼが隣に座る。

「今のはなんだ?」

「これ? ロウリュっていって、汗を流して体を綺麗にするの」

「ほお、ふむ、変わってるな」

「それでどうして無理なの?」

俺もローゼの真似をしてロウリュをする。

「森にはそれぞれテリトリーがあって、さっき言った地下はラヴェジャーの縄張りなんだ」

「ラヴェジャーって怖いの?」

「この家ぐらいの大きさをした蠍だ」

「こわ……戦った事ある?」

「いいや、お互いに戦う理由がないからな。関わらないようにし合ってた」

「なんだか平和的ね」

「そうだな。だが実際は怪我を避けたいだけだ」

「危険なのには変わりないのね」

「お金が必要なのか?」

「ええ、カイスターを出たくて貯めているんだけど、これが中々貯まらなくて」

「カイスターを出るのか? どこへ行くんだ?」

「北の山脈を越えた先にアイアセンっていう国があるの。そこに行きたいと思ってて。スコルも良かったら、一緒に行かない?」

「もちろんだ」

「ンフフ、良かった」

「だがなぜここじゃ駄目なんだ?」

「暫く前から吸血鬼達の出現する場所を探っていたの。そしたらどんどん西に進んでいて、この前はラタエが……次は恐らくここだから」

「アイアセンは安全なのか?」

「道中は危険だけど、その分、アイアセンは安全なの」

「山脈にはドラゴンがいると聞いたが」

「ええ、ドラゴン以外にも沢山危険な魔物が多いの。だからこそ吸血鬼達もアイアセンには簡単に手を出せない」

「だがいいのか? この家は……」

「もちろん大切だけど、いつまでも過去に囚われていたら辛いだけだから。それに死んでしまったら何の意味もないじゃない?」

できれば吸血鬼を食い止めたいが、ローゼの側にもいてあげたい。

そもそも全ての吸血鬼を俺一人で止められるとは思えない。

「そうだな。俺もアイアセンに行く準備を始めるよ」

「さてと、私は起食の用意をしてくるから、ゆっくり体を流してて」

「分かった」

ローゼの料理は旨い。

楽しみだ。

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