18
ドワーフに似たレプラコーンという種族の男の商人が、親しげにドワーフの男と話している。
「ドーントレスが吸血鬼達に襲撃されて陥落したらしい」
「本当なのか!?」
「ああ、ドーントレスから逃げてきた知り合いの商人に聞いたんだ。街中血の海になっていたらしい」
「恐ろしいな。それで、どうなったんだ?」
「そいつと一緒にここへ向かっていたんだが、途中で帝国の部隊がドーントレスの救援に向かっていたんだ」
「帝国が!? ドーントレスとは戦争中だったのに」
「ああ、帝国にとっても吸血鬼は脅威という事なんだろう」
「ここも心配になってきたな」
「お前も、いつでも逃げ出せるよう準備していた方がいいかもしれないぞ」
「そうするよ」
ダークエルフの男女が立ち話をしている。
「聞いた? 北の山脈にドラゴンが出たんですってよ」
「あ〜あ、だから斡旋所が賑わってたのか」
「まったく呑気な事を。これはチャンスよ。上手くいけばアイアセンに家を持てるわ」
「呑気なのはどっちだ。ドラゴンの糞の一部になるなんて俺はごめんだね」
「じゃあしけた害虫駆除を一生続けるつもり?」
「食費も宿代も十分稼げてる。俺は今の生活で満足だよ」
「まったく夢がないのね」
無事商人との取引を済ませた後、ローゼの家へと向かう。
ドワーフの男女が立ち話をしている。
「ねえ、この街に本物のウェアウルフがいるらしいわよ」
「お前はまたそれか。いい加減いないって事を認めろよ」
「でもみんなが噂してるのよ。なんでもソラヌスから使命を受けて、吸血鬼から私達を救いにきた天使ですって」
「そりゃおかしいだろお前。なんで今更? 今まで散々放ったらかしにしておいて」
「何か私達には理解出来ない、崇高な理由があるのよ」
「お前は書物の読みすぎだ」
「そういうあなたはまったく読まないわよね」
ローゼの家へと着いた。
降りたローゼが鍵を開け、先に入る。
「さあさあ、遠慮せずどうぞ。って入れる?」
「ああ」
身を屈めて中へ入る。
だが尾に何か当たった。
飾ってあったリースが尾に付いた。
「大丈夫?」
「平気だ」
「う〜ん」
ローゼが木の椅子をくっつけ、並べ始めた。
「ローゼ、お前一人にしては広い家だな」
「ここは両親の家だったから」
「今は、一人なのか?」
「まあね」
「理由を聞いても、いいか?」
「うん……。はいできた! 座って寛いで」
「ありがとう」
俺でも座れる幅の椅子が出来ていた。
椅子に座る。
ローゼが買ってきた物を籠から出している。
「父と母は……吸血鬼に殺されたの」
「ローゼ……。だからあれほど吸血鬼になるのを嫌がったんだな」
「ええ。吸血鬼として生きるくらいなら、死んだ方がマシだった」
「すまないな。こんな話をさせて」
「別にいいの。もう乗り越えているから。あなたはスコル? どうなの?」
「俺は物心付いた頃から一人だった。だから家族がいなくても、何も感じないんだ」
「家族が欲しいと思った事は?」
「今までは、なかった。ただ少し……」
ローゼが笑顔を見せた後、食べ物を奥へ持っていった。
重そうな物を持ち、ローゼの元へ持っていく。
しばらく後……。
パンプキンスープが入った皿を持ち、飲む。
旨い。こんな味、いままで味わった事がない。
「ンフフ、スプーンいらなかったね」
「あ〜、それが」
曲がった金属のスプーンを見せる。
「あ〜! やってくれた〜」
「すまないローゼ」
「ンフフ」
「怒って、ないのか?」
「全然〜。むしろ笑える。ンフフ」
「そ、そうか」
チーズ、ブレッド? を食べる。
これもふわふわとしていて不思議な食感だ。
なのに独特な味が口の中一杯に広がっていく。
「味はどう?」
「どれもまったく味が違うのに、旨い」
「ンフフ、良かった」
これはアップルパイだったか?
外は柔らかいのに、中にはシャキシャキした小さな木の実のような物が沢山入っている。
木の実のような物と同じ味やにおいがする液体も甘く、外のパン? に合う。
この白い液体の飲み物は旨い。
「なあローゼ、この白い飲み物はなんていうんだ?」
「ミルクよ」
「ミルク?」
ミルクのにおいをよく嗅ぐ。
「蜂蜜のにおいがするな。種族は蜂蜜ミルクと呼ぶのか?」
「ンフフ、ミルクに蜂蜜を入れてるだけよ。ミルクっていうのはオーロックスの母乳の事よ」
「うぐっ……。なに!? 母乳!?」
「そうよ〜」
「の、飲んで平気なんだろうな?」
「さあ〜、もしかしたらヤバいかも」
「ローゼ!」
「ンフフ、冗談よ。大丈夫。みんな飲んでるから」
「はぁ〜、まあだが旨いから困る」
「気に入ったみたいね」
「もう森の生活には戻れないかもな」
「森が、恋しくなったりする?」
「いいや。今はまだ。だが、たぶん恋しくなる思う」
「いつか森を案内してね」
「分かった。意外と見所が多いんだ」
ローゼがテーブルに置いていた俺の手を握ってくる。
優しく握り返す。
「ンフフ……」ローゼが少し俯く「今日は本当にありがとう。私の側に付き添って、ずっと守ってくれて」ローゼが顔を上げ、俺の目を見つめる「本当に嬉しかった」
「どうしても、放っておけなかったんだ……つまり、俺にとって君は……大切だから」
「ンフ」ローゼが立ち上がり、ゆっくりと側へ来る。
ローゼが俺にハグをし、俺は優しくローゼの背を叩きながらハグを交わす。
「あなたには小さいかもしれないけど、一緒に来てくれない?」




