17
◦探し物
城に向かって歩いていると、路地裏から妙な視線を感じる。視線の先を確認するが何者もいない。
確かに誰かいたような気がしたんだが……。
振り向くと、いつの間にか路地裏の一番奥まで来ていた。
「わ〜、ウェアウルフはんがまだいたのね〜」
囁き声のする方を振り返り、剣を抜けるよう身構える。
一人の女が立っていた。ローブのフードを深くかぶり顔は見えない。ただ……様な雰囲気が漂っている。
ソラヌスのような威圧を感じる。だが、ソラヌスよりは、低いか。
〘⇄〙「俺に、何か用か?」
「別に、ウェアウルフはんが珍しおす」
「…………」
「私はベラリュネと申します。よしなに。その子はん、助けても良い思て」
「何? 何故だ?」
「最近、いずこの神はんとお会いしまへんでしたか?」
「ソラヌスの事か?」
「ソラヌス。他にはいませんどすか?」
「俺の知る限りでは」
「はぁん、お礼にこれ差し上げますわ」
ベラリュネが魔法で俺の目の前まで小さな黒い液体が入った小瓶を持ってくる。
小瓶を受け取る。
「これは?」
「その子はんの治療薬どす」
「あんたは医者なのか?」
「私は忙しい身。使うも使わんのもあんたはんの自由どす」
一瞬瞬きした瞬間に、ベラリュネが跡形もなく消えていた。
だが俺の手にはしっかりと、黒い液体が入った小瓶が握りしめられていた。
表通りへ戻り、噴水の側へ腰掛ける。
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」
ローゼの両目は吸血鬼のように赤くなり、爪も獣のように伸び始めていた。
歯も鋭利になってきている。
〘⇄〙飲ませるべきか。いや城に行って……だが手遅れになってしまったら……。
一体どうすればいいんだ……。
俺の側で苦しんでいるローゼ。
行き交う種族たちは気にも留めていないようだ。
病気が伝染るのを恐れているのだろうか。
考えている間に、虚しく時が過ぎる。
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ、うぅ!」
ローゼが獣のような唸り声を上げ、俺の腕を掴み、強く握ってくる。
ローゼが力を入れ、鎧の表面に傷が入る。
「ローゼ……」
「吸血鬼には……ゲホッ、なりたくない……」
「…………」
もうローゼを助けられるのは俺しかいない。
俺が今すぐ何とかしなければ。
思いっきり息を吸い、深呼吸をする。
〘⇄〙「ローゼ、これしか望みがない。許してくれ」
抵抗するローゼを抑え、口から流し込む。
するとすぐにローゼの咳が止まった。
身体の変化はまだ見られないが、ローゼが目を開けた。
「スコル……」
「気分はどうだローゼ?」
「胸の辺りにあった重りが取れたみたいな感じ。すーはー」ローゼが鼻で深呼吸をする「あ〜、いい〜」ローゼが笑みを見せる。
「ふ〜、許してくれローゼ。これはちょっとしたで賭けでもあったんだ」
「スコル、私は気を失っていたわけじゃないの。全部知ってるわ。だからありがとう」
「君が無事で本当に良かった」
「ンフフ」
ローゼの笑顔に見とれ、そのままローゼと互いに目が合ってしまう。
ローゼから目を逸らせなくなってしまった。
ローゼがゆっくりと顔を近づけ、俺の被っていた兜を少し上げる。
ローゼが目を瞑り、そして唇を触れさせてくる。
俺はローゼ受け入れ、そっとローゼとキスを交わした。
顔を離し、ローゼと見つめ合う。
「ンフフ、助けてくれたお礼」
「ローゼ、俺は……いや、何でもない」
「家で休みたい。まだ少し気分が悪いの。また乗せてくれる」
「それは構わないが」
「じゃあほら!」
「ああ」
薬をくれた者は一体……。
ローゼが後ろを向くよう招く。
ローゼを背に乗せ、目的地を目指す。
「本当に元気になって良かった。なあローゼ、この通貨とやらで食料と交換できるのだろう?」
「そうだよ」
「じゃあ何か買っていこう」
「お腹空いてるの?」
「ああ、かなりな。安心したからか、余計にな」
「じゃあね〜、私が何か作ってあげるよ」
「ほお〜」
「もちろんお肉好きだよね?」
「ああ」
「何のお肉が一番好き?」
「カトブレパスだな」
「結構、通だね」
「名前はハンターが言ってて、それを覚えてただけなんだ。だがあれが旨いんだ」
「絶対足りないから、それだけは沢山買っていこう。じゃあ、あっちだね」
「分かった」
ローゼが食材を買う傍ら、行き交う種族達や立ち話をする種族達の会話が聞こえてくる。




