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テランドが片手で顎を触っている。
「何か問題があるのか?」
「いいや、 別に。悪い 今忙しくてな。手が離せない。また時間がある時に診るよ」
「今すぐ診てほしい。金なら払う」
「いくら払う?」
持ち合わせの金を全て見せた。
「いいぜ。診てやる」
デランドが金の入った皮袋を受け取り、自身のポケットへとすぐさましまう。
布の敷かれた石の台座へローゼをそっと 降ろす。
「ゲホッ、ゲホッゲホッ」
デランドが鴉の仮面をつける。
「何をしている?」
「あぁん? これの事か?」
「ああ」
「はん、マスクに決まってるだろ。素人は黙っていろ」
デランドが綺麗なグローブをつけ、ローゼの左目まぶたを上げ、目を見ていく。反対の目も同じように繰り返す。
次にローゼの口を開き、見ていく。
次にローゼの首、顎の付け根のあたりを人差し指と中指で軽く触っていく。
次にローゼの右手を取り、腕の布をまくっていく。
そして親指から順に小指へと触れていき、手の平、手首、腕と順に触っていく。
「よし」デランドが戸棚の引き出しを開く。引き出しの中にはローゼが持っていたような小瓶が大量に整頓され置かれていた。デランドは青い液体が入った透明な小瓶を取り出す「これを飲ませれば数日で治る」
「本当か? 原因は何だったんだ?」
「素人のお前に説明しても分からないさ。とにかくこれを飲ませれば治るんだ。それでいいだろう」
デランドから小瓶を受け取りローゼに飲ませる。
「うぅ!? ゲホッ、ゲホッ」ローゼが小瓶を薙ぎ払い小瓶が地面に落ち割れた。
ローゼが血を吐いている。
「貴様ぁぁーー!!!!」
湧き上がる怒りを抑えきれなかった。気づいた時にはデランドを掴み上げ、壁に押し付けていた。壁にヒビが入り、破片が崩れ落ちていた。
「や、やめろ……頼む……」
「おい! 降ろすんだ!」
幼馴染の兵士が剣に手を置き、俺に身構えている。
〘⇄〙「俺はローゼを救いたいだけだ。お前は違うのか?」
「こんな事をしても何にもならない。冷静になってくれ」
「はぁ、はぁ」デランドを降ろす「さっさとローゼを治せ。さもないとお前の体を真っ二つにする」
「お、俺には無理だ……」
「どうしてなんだ?」
「あぁ……」
「さっさと訳を話せ!」
「あぁん…………」サイドテーブルを殴り破壊する「きゅ、吸血鬼病だ! 治せないと分かっていたから薬をやったんだ」
「初めから金だけ奪うつもりだったのか!!」
怒りを抑え切れずデランドに迫る。
「か、返すよ……。だから殺さないでくれ」
皮袋を取り戻す。
ローゼを背負い、部屋を後にする。
幼馴染の兵士が俺の後をついてくる。
「どこへ行くつもりだ?」
「俺が何とかする」
「ここにいさせておくべきだ。他の医者が……」
幼馴染の兵士を片手で掴み、そのまま壁に押し付ける。
「さっきはお前の言う通りにした。だがこのざまだ。もう口を出すな」
幼馴染の兵士は剣をいつでも抜けるよう手を置いていた。
「そうはいかない」
視線を感じる。他の種族たちが困惑した表情で俺たちを見ていた。
「私が診よう」
カイスター へ来る際に出会ったあの医者が立っていた。
手を離し、離れる。
少し後……。
「ドクターアンジェロ。どうです?」
「吸血鬼病で間違いない」
「デランドの薬の影響はどうなんだ?」
「落ち着いてくれ。あれは患者を安静にする為の薬だ。それほど深刻な影響はない。大丈夫だ。だが吸血鬼病は早く治癒しないと手遅れになってしまう」
「治す方法はあるのか?」
「正直言って……ない」
「なんだと!」
「落ち着け。なっ、良い方法はないが……不可能ではない」
「さっさと言え」
「君の血を……ローゼ飲ませるんだ」
「なに?」
「私は、そういうのに気付くのが得意でな」
「ローゼをウェアウルフにしろというのか?」
「ウェアウルフ!? 一体あんたは……」
「吸血鬼の場合は理性を失うが、ウェアウルフの場合はそうじゃないだろう?」
「それは間違いだ。俺は本能を抑制する為、長い間苦労してきた。しかも今は……とにかく良い方法じゃないのは確かだ」
「そうなのか……私は医者だが、種族学者ではないんでな。無知ですまない。医者ではなく吸血鬼に詳しい者の方が、もしかしたら治療法を知っているかもしれない」
「この街にいるのか?」
「ああ、城にいるかもしれない」
「万が一の時はどちらか選ばなければ」
「それは俺が決める事じゃない」
「そうだが、もうあまり時間はないぞ」
「どれくらいだ? 3時間。それも長くて」
「考えておくよ」
「そうしてくれ。幸運を祈っている」
困惑している幼馴染の兵士に近づく。
「本当にウェアウルフなのか?」
「だとしたらまずいか?」
「いいや。寧ろ良い。だが大騒ぎになるだろうな」
「そうか。それよりローゼ頼めるか?」
「あぁ……いや、無理だ。もう持ち場に戻らないと。色々と重荷が多くてな……」
「そうか」
ローゼを背負い、診療所を後にする。




