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◦急がば……。
周囲を警戒しながら走り、街へ急ぐ。
暫く行くと脇道に止まっている馬車が見えてきた。
いつでも剣を抜けるよう身構える。
足を止め歩き、ゆっくりと向かい、警戒しながら慎重に進む。
種族が2人。内1人はドワーフ。
近付くと、馬車の車輪を見て髭を触っていたドワーフがこちらを向く。
ドワーフにしてはどこかおかしい。
ドワーフらしき青い服を身に着けた男が俺を見てくる。
相手の出方を伺う。
「な、なあ……あんた。私達に何か用なのか?」
もう一人の種族が馬車の前に屈んで隠れ、恐らく武器を手に持っている。
「いいや。カイスターに向かっているだけだ」
「そ、そうか……」
「車輪が外れたのか?」
「ああ……」
〘⇄〙「直してやる」
「いや……ああ、まあ……頼む」
ドワーフらしき男が不自然に後ろに手を回している。
「手を見えるところに出しておけ。面倒起こすつもりなら他を当たれ」
「分かった。分かったよ。何もしない」
ドワーフらしき男が両手を上げる。
ローゼをそっと降ろし、警戒しながら馬車へ向かう。
外れた車輪を取り、馬車をもう一方の手で持ち上げはめていく。
積荷は縁が錆びた鏡、割れた皿、折れた蝋燭など、ガラクタばかりに見える。
「ガラクタばかりだな」
「まあな。だが私は宝物って呼んでる」
「そうか」
車輪をはめ終わる。
「おい、動くな盗賊め!!」
若い人間の男が震える手で剣を構え、俺に向けている。
すぐさま剣身を掴んで取り上げ、地面に投げ捨てる。
急いでローゼの元へ戻り、ローゼを背負う。
荷物を手にカイスターへ急ぐ。
「な、なあ! あんた!」
ドワーフらしき男が呼び止めてくる。
「馬車は直しただろ」
「そうじゃなくて、カイスターは左の道だ」
「あの野郎」始末して正解だったな「助かる」
「こ、こちらこそ」
若い人間の男が剣を拾おうとしていたが、俺が道を戻ると慌てて馬車の裏へ隠れていった。
分かれ道まで急いで戻り、左の道を行く。
カイスターに急がなければ。
◦深き心
暫く走っていると、馬に乗った種族2人が見えてきた。
俺の鎧の音に気づいたのか、馬を止めて 手綱を引き、剣を抜いてこちらを向く。
歩きに変え、ゆっくり進む。
1人は軽装の変わった肌の色をしたエルフ。
もう1人は重装備の種族。兵士だろうか。
「カイスターに向かっているだけだ!」
「走って来ていたからな! こちらも警戒せざる得なかった!」
街道の端を通り過ぎる際、軽装の革鎧に茶色い外套を羽織ったエルフの男の方が、背にいるローゼを覗いてくる。
「具合が悪そうだな」
「いいや、平気だ」
「ゲホッ、ゲホッ」
「私は医者だ。良かったら診ようか?」
兵士らしき男がエルフの方を向いて、首を横に振った。
「いいや、いい」
「そうか。気を付けてな」
背後から小声の会話が聞こえてくる。
「厄介ごとを増やさないでもらいたい。ただでさえここら辺は危険が多い」
「私は医者だ。病人がいたのなら、誰だろうと放って置けない」
「それじゃあ長生きできない。あなたには生きて多くを救ってもらわないと」
ローゼが言っていた。カイスターなら確実に医者がいる。
他の奴は信用できない。
俺は集落の一件で浮かれすぎていた。
森で過ごしていたとき同様、気を抜いたら殺される。
常に警戒しなくては。
ようやく明るくなってきた。
だが日が昇り始めた薄暗いうちに、いつも眠りについてしまう。
こんなに明るい外で、しかも森以外を歩いているなんて……やはりどうも慣れない。
だがおかげで警戒心がいつもより働いてる気がする。
その後ようやくカイスターが見えてきた。
デストリエより早いこの体に感謝だ。
空を見上げる。
「ソラヌスよ」
再びカイスターを目指して進む。
一度だけ帝国の都に行ったことがあるが、それよりは少し落ち着いている雰囲気だ。
あそこほど物々しくはない。
荷物を置き、ローゼをそっと降ろして、街道の側にある一番大きな木のてっぺんまで登る。
あの集落とは大違いだ。
街全体が壁で囲まれている。それほど高くはないが、それでもかなり堅牢そうだ。
櫓もあちこちに立っている。
あの地面に埋まっている変な建物はなんだ? 小さい窓がついているだけだが……。
よく見ると窓から何かが出ているな。あれはバリスタか?
櫓同様、不用意に近づかない方が良さそうだ。
木を降り、再びローゼを背負う。
「はぁ〜」
それにしても種族が多かった。
背負うローゼの顔を見る。
ローゼ、本当に大丈夫なんだろうな。
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」
行くしかない。




