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【完結】ソラヌスの遠吠えⅠ狼子  作者: 逆立ちハムスター


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13/27

13

〘⇄〙「俺なら1日ぐらい寝なくても大丈夫だ」


「それ、ゲホッ、ゲホッ、もっと早く言って欲しかった。ンフフ、ゲホッ、ゲホッ」

ローゼが布の寝床につく。

「おやすみ」

「おやすみ」

ローゼの咳は止まる事なく、酷くなるばかりだった。

日が昇った。

ラヴェジャーと睨み合ったまま数日はまともに眠らなかった日に比べれば、大した事はなかった。

「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」

だがローゼが心配だ。

俺には……何も分からない。

身支度をしているローゼの元へ行く。

「なあローゼ。何か分からないのか? その咳について」

「大した事ないと思う。ぐっすり眠りたかったから嘘ついたの。ゲホッ、ゲホッ」

「ローゼ、俺には治し方が分からないんだ。何でもいいから教えてくれ」

「私も分からないわ。ゲホッ、ゲホッ。でも街に着けば医者がいるから大丈夫よ」

「医者というやつなら治せるのか?」

「ええ、たぶんね。さあ、もうすぐカイスターよ。早く行きましょ。ゲホッ、ゲホッ」

「……ああ」

俺には何もできない。早く街を目指す他ない。

今までこんな不安に駆られた事がない。

その後もローゼの咳は酷くなるばかりだった。

次第にローゼの足取りが遅くなる。

ローゼが地面に手をつき、屈み込んだ

「ローゼ!」

「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」

「俺が背負っていこう」

「平気よ。ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」

「ローゼ」

「ゲホッ、ゲホッ。はぁ〜、お願い」

「さあ」

ローゼを背負い、片手でローゼが落ちないよう支える。

もう一方の手で残りの荷物を持つ。

「ゲホッ、ゲホッ。ありがとう」

暫く歩くと分かれ道が見えてきた。

「ローゼ、鎧は邪魔じゃないか?」

ローゼは眠っているようだ。だが寝ている間も咳を繰り返している。

意識が朦朧としているのか? 急がないとな。

だが、どっちに行けばいいのだろう。



◦兵士



あそこに何者かがいるな。

においの先の茂みを、心眼の目で見ると、数人の種族が隠れていた。

立ち止まり、荷物を捨て。剣を抜く。

「いるのは分かってる! 出て来い!」

「おいおい、剣をしまえ!」

手入れの行き届いた鎧を身につけた、不格好な種族達が4人出てきた。

ダークエルフの男は両手を上げ、出てくる。

お互い少し近付く。

「お前達は?」

ダークエルフの男の後ろにいる三人が顔を見合っている。

「デカくないか?」

「見かけだけだろ」

「やばそうな奴だ」

俺に聞こえていないと思っているのか、気にする様子もなく小声で話し合っている。

一先ずウェアウルフとはバレていないようだ。

ダークエルフの男が更に一歩近付いてくる。

「見て分かるだろう? 俺達はカイスターの兵士だ」

「そうか」

剣をしまう。

4人がゆっくりと近付いてくる。

槍を雑に肩に背負っている兵士。

両手の親指をベルトに突っ込み、足を広げ歩いてくる兵士。

「どこへ向かっていたんだ?」

「カイスターだ。案内してくれないか?」

「悪いが、任務があってね。ここを見張らなきゃいけないんだ。それで〜」

「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」

「そいつは?」

「病人だ」

「風邪なのか?」

風邪? こいつが医者という奴か?

「ああ、そうかもしれない。治す方法は知っているか?」

他の三人がゆっくりと近付いてくる。

小声が聞こえてくる。

「女だ」

「悪かねぇぜ」

「顔を見ろ。良い女だ」

三人が囲むようにゆっくりと歩いてくる。

「もちろんだ。俺ならそいつを治せる。見せてくれ」

何か様子がおかしい。

いつでも剣を抜けるよう身構える。

「どうしたんだ? 早く降ろせ」

「いいや。街についてから医者を探す」

「俺も医者だ。手遅れになる前に、ここで診てやる。さあ女を降ろせ」

「俺はもう行く」

「おっと、動くな!」

4人が剣を構える。

「マジかよ」

「ハッタリじゃなかったらどうする?」

「知らねーよ」

「黙れ!!」


〘⇄〙「争う気はない」


「お前も黙ってろ。おとなしく従えばいいんだ。まず女を部下に渡せ。それから武器を地面に置くんだ」

「…………」

「早くしろぉ!!」

「何の為に?」

「知るか! そういう命令を受けてんだ。いいから従えよ。さもないと切り刻むぞ」

兜を取る。

「おい動くな!!」

「兜を外すだけだ」

兜を地面に落とす。

「あっ!?」

「おいおい嘘だろ!?」

「ウェ、ウェアウルフ!?」

「マジかよ……。俺は……」

後ろにいた兵士の1人が逃げ出し、続けて他の二人も逃げ出した。

「じょ、冗談じゃないぜ!!」

「こんな奴相手にして堪るか!!」

そしてすぐに茂みの中に消えていった。

「あの腰抜け共が!!」

「お前、兵士じゃないな」

「どうでもいい。お前を切り刻んでやる。爺さんの財布みたいにズタズタにな!!」

手練の狩人ですら俺を見失うほどだ。こいつに俺の動きを追える訳が無い。

迅速に接近し、ダークエルフの男が構えている剣を中心から両断する。

男の鎧を掴み持ち上げる。

「うっ!? うぅ!? お、俺が悪かった。こ、殺さないでくれ!!」

「カイスターはどっちだ?」

「右だ! た、頼む。お願いだ。こ、子供がいるんだ」

「…………」

ダークエルフの男を握り潰さず離す。

男が地面に落ち、尻餅をついた。

「はぁ、はぁ、はぁ」

振り向こうとした瞬間、男が腰から短剣を取り出すのが見えた。

振り向きざまに男の短剣が胸に当たるが、鎧の方が勝ったのか、男の短剣が砕けた。

振り向いた勢いのまま男の頭部を片手で殴ると、ぐちゃぐちゃに吹き飛んだ。

男の首無しの体が膝から落ち、地面に着いた後、横向きに倒れた。

籠手には男の脳みその一部が付着していた。

地面の土にこすりつけ、男の脳みそを拭い落とす。

兜を拾い上げて被り、荷物を取りに向かう。

迷ったが右の道を行く。

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