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〘⇄〙「俺なら1日ぐらい寝なくても大丈夫だ」
「それ、ゲホッ、ゲホッ、もっと早く言って欲しかった。ンフフ、ゲホッ、ゲホッ」
ローゼが布の寝床につく。
「おやすみ」
「おやすみ」
ローゼの咳は止まる事なく、酷くなるばかりだった。
日が昇った。
ラヴェジャーと睨み合ったまま数日はまともに眠らなかった日に比べれば、大した事はなかった。
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」
だがローゼが心配だ。
俺には……何も分からない。
身支度をしているローゼの元へ行く。
「なあローゼ。何か分からないのか? その咳について」
「大した事ないと思う。ぐっすり眠りたかったから嘘ついたの。ゲホッ、ゲホッ」
「ローゼ、俺には治し方が分からないんだ。何でもいいから教えてくれ」
「私も分からないわ。ゲホッ、ゲホッ。でも街に着けば医者がいるから大丈夫よ」
「医者というやつなら治せるのか?」
「ええ、たぶんね。さあ、もうすぐカイスターよ。早く行きましょ。ゲホッ、ゲホッ」
「……ああ」
俺には何もできない。早く街を目指す他ない。
今までこんな不安に駆られた事がない。
その後もローゼの咳は酷くなるばかりだった。
次第にローゼの足取りが遅くなる。
ローゼが地面に手をつき、屈み込んだ
「ローゼ!」
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」
「俺が背負っていこう」
「平気よ。ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」
「ローゼ」
「ゲホッ、ゲホッ。はぁ〜、お願い」
「さあ」
ローゼを背負い、片手でローゼが落ちないよう支える。
もう一方の手で残りの荷物を持つ。
「ゲホッ、ゲホッ。ありがとう」
暫く歩くと分かれ道が見えてきた。
「ローゼ、鎧は邪魔じゃないか?」
ローゼは眠っているようだ。だが寝ている間も咳を繰り返している。
意識が朦朧としているのか? 急がないとな。
だが、どっちに行けばいいのだろう。
◦兵士
あそこに何者かがいるな。
においの先の茂みを、心眼の目で見ると、数人の種族が隠れていた。
立ち止まり、荷物を捨て。剣を抜く。
「いるのは分かってる! 出て来い!」
「おいおい、剣をしまえ!」
手入れの行き届いた鎧を身につけた、不格好な種族達が4人出てきた。
ダークエルフの男は両手を上げ、出てくる。
お互い少し近付く。
「お前達は?」
ダークエルフの男の後ろにいる三人が顔を見合っている。
「デカくないか?」
「見かけだけだろ」
「やばそうな奴だ」
俺に聞こえていないと思っているのか、気にする様子もなく小声で話し合っている。
一先ずウェアウルフとはバレていないようだ。
ダークエルフの男が更に一歩近付いてくる。
「見て分かるだろう? 俺達はカイスターの兵士だ」
「そうか」
剣をしまう。
4人がゆっくりと近付いてくる。
槍を雑に肩に背負っている兵士。
両手の親指をベルトに突っ込み、足を広げ歩いてくる兵士。
「どこへ向かっていたんだ?」
「カイスターだ。案内してくれないか?」
「悪いが、任務があってね。ここを見張らなきゃいけないんだ。それで〜」
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」
「そいつは?」
「病人だ」
「風邪なのか?」
風邪? こいつが医者という奴か?
「ああ、そうかもしれない。治す方法は知っているか?」
他の三人がゆっくりと近付いてくる。
小声が聞こえてくる。
「女だ」
「悪かねぇぜ」
「顔を見ろ。良い女だ」
三人が囲むようにゆっくりと歩いてくる。
「もちろんだ。俺ならそいつを治せる。見せてくれ」
何か様子がおかしい。
いつでも剣を抜けるよう身構える。
「どうしたんだ? 早く降ろせ」
「いいや。街についてから医者を探す」
「俺も医者だ。手遅れになる前に、ここで診てやる。さあ女を降ろせ」
「俺はもう行く」
「おっと、動くな!」
4人が剣を構える。
「マジかよ」
「ハッタリじゃなかったらどうする?」
「知らねーよ」
「黙れ!!」
〘⇄〙「争う気はない」
「お前も黙ってろ。おとなしく従えばいいんだ。まず女を部下に渡せ。それから武器を地面に置くんだ」
「…………」
「早くしろぉ!!」
「何の為に?」
「知るか! そういう命令を受けてんだ。いいから従えよ。さもないと切り刻むぞ」
兜を取る。
「おい動くな!!」
「兜を外すだけだ」
兜を地面に落とす。
「あっ!?」
「おいおい嘘だろ!?」
「ウェ、ウェアウルフ!?」
「マジかよ……。俺は……」
後ろにいた兵士の1人が逃げ出し、続けて他の二人も逃げ出した。
「じょ、冗談じゃないぜ!!」
「こんな奴相手にして堪るか!!」
そしてすぐに茂みの中に消えていった。
「あの腰抜け共が!!」
「お前、兵士じゃないな」
「どうでもいい。お前を切り刻んでやる。爺さんの財布みたいにズタズタにな!!」
手練の狩人ですら俺を見失うほどだ。こいつに俺の動きを追える訳が無い。
迅速に接近し、ダークエルフの男が構えている剣を中心から両断する。
男の鎧を掴み持ち上げる。
「うっ!? うぅ!? お、俺が悪かった。こ、殺さないでくれ!!」
「カイスターはどっちだ?」
「右だ! た、頼む。お願いだ。こ、子供がいるんだ」
「…………」
ダークエルフの男を握り潰さず離す。
男が地面に落ち、尻餅をついた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
振り向こうとした瞬間、男が腰から短剣を取り出すのが見えた。
振り向きざまに男の短剣が胸に当たるが、鎧の方が勝ったのか、男の短剣が砕けた。
振り向いた勢いのまま男の頭部を片手で殴ると、ぐちゃぐちゃに吹き飛んだ。
男の首無しの体が膝から落ち、地面に着いた後、横向きに倒れた。
籠手には男の脳みその一部が付着していた。
地面の土にこすりつけ、男の脳みそを拭い落とす。
兜を拾い上げて被り、荷物を取りに向かう。
迷ったが右の道を行く。




