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【完結】ソラヌスの遠吠えⅠ狼子  作者: 逆立ちハムスター


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もしかしてソラヌスの言っていた恩恵とやらか?

だったら適当に選ぶべきじゃなかったかもな。

だがもう済んでしまったものは仕方がない。

確かに体の奥底に妙な変化を感じる。

何か馴染まない感覚だが、それほど悪い気はしない。

集落出口に近付くと、ローゼが木の柱の門に背をつけ待っていた。

こっちに気が付くと、少したじろいだ後、笑顔で大きく手を振ってきた。

「待たせたな」

「決まってるじゃん」

「そうか?」

「うん! 似合ってる。威圧感も〜もの凄い。その尻尾の鎧はいるの?」

「やはり尾は隠した方がいいと思うか?」

「どっちでもいいと思うよ」

俺一人ならいいが、ローゼがいるから以上。余計なトラブルを起こさないようにしまっておいた方がいいだろう。

「しまっておく」

「できるの?」

「ああ」

鎧を一部脱ぎ、尾をしまい、身につける鎧を着ける傍ら、ローゼが地面に落ちた尾の鎧を拾う。

「馬の尻尾に着けるのに似てる」

「馬も鎧を着るのか?」

「ええ」

奇妙だな。

「もう出発できるか?」

「私はできるけど、何も持って行かなくていいの? お金なら貸すけど」

「必要ない」

「でも食料はどうするの?」

「いざとなったら何か食うさ」

「私は食べないでね」

「そんな事しないさ。幹でも苔でも食えるからな」

「今のは冗談よ。さあ行こ!」

「そうか……」

ローゼと共に集落を去る。

「吸血鬼と出会う事は多いのか?」

「いいえ、でも私はこっちにはあまり来ないから。もしかしたらここでは普通なのかも。あなたはここの近くに住んでたの?」

「ああ、あの森に住んでた」

「離れるのは寂しくない?」

「少し寂しい。だがこうして旅をするのは前から望んでいたことなんだ」

「今まで森から出たことがないの?」

「ああ、外には俺を殺そうとする種族がたくさんいると思っていたからな。実際、森から少し出るだけで、いつも出くわしていたから」

「大変だったのね」

「だが生きるには苦労していなかった」

「ソラヌスの祝福のおかげ?」

「ああ、そう思っていた時はなかったが、今思えば感謝するべきかもな。こうして今、他の誰かの力になれているんだから、良かったのかもしれない」

「終わりよければ良しね」

「ああ。ローゼはどうなんだ? よく旅をしているのか?」

「そう。私は小さい時から、世界を自分の目で見てみたいと思っていたの」

「幸せか?」

「ええ。もちろん辛い事も多いけど、夢が叶っている今は幸せよ」

こうしてローゼと少しずつ打ち解けながら、カイスターを目指し旅を続けた。



Ⅴ 〘旅路〙



旅を続けて数日。

ローゼと共に焚き火に当たる。

「後どれくらいで着くんだ」

「明日には着くと思うわ」

布一枚のローゼが身を寄せてくる。

ローゼがにおいを嗅いでいる。

「どうした?」

「ウェアウルフって、もっと独特な匂いがすると思ってた」

「狼みたいにか?」

「そう。でもあなたは殆どにおいがしない。歯も綺麗。意外だな〜」

「森に住んでいた頃、ハンターがよく猟犬を連れていたんだ。それで猟犬に見つからないよう、色々と工夫してきてな。そのせいだ」

「ンフフ、綺麗好きだったのね。ゲホッ」

「まあ、そうとも言えるな。お前のにおいは想像とは違ったが」

「私……におうかな?」

「においのしないやつなんていない。森に入った瞬間、誰だろうと分かるんだ。お前は……その……あまり良いにおいじゃない」

「そっか……」

「花のにおいがする」

「え!? 花? それが悪いの?」

「ああ、種族にとっては良いにおいなのか?」

「まあね。でも私のにおいじゃなくて、これだけどね。ゲホッ」

ローゼが荷物からピンクの液体が入った小瓶を取り出す。

「奇妙な色をしているな」

「そう? 綺麗な色じゃない。ゲホッ」

「これを飲むのか?」

「ンフフ、飲まないわよ。これを」

ローゼが液体を手に出し、手首や腕、首に塗っていく。

「うぅぅ……」

花が一面埋め尽くしている高原のにおいがする。

「それよりさっきはありがとう。もう少しで私の冒険が終わるところだった」

「気にするな。それより寒くないか?」

「焚き火とあなたの毛で温かいから。ゲホッ」

「そうか。今度水を汲む時は気をつけるんだな」

「分かってる。でもあなたが手伝ってくれてたら平気だったのに~。お湯に浸かるのも悪くなかったでしょ?」

「ああ、あれは不思議な感覚だったな。種族はお湯で体を洗うのが普通なのか?」

「そうよ。ンフフ」

「どうしたんだ?」

「思い出しちゃって。あなたムクロジの液を渡したら飲もうとしたんだもん。ゲホッ」

「あれはローゼも意地が悪いぞ。俺は外界に疎いんだからな」

「ンフフ、そうね。ゲホッ、ゲホッ」

「大丈夫か?」

「大丈夫よ。笑ってむせただけ。ゲホッ、ゲホッ」

「もう服も渇いただろう。早く着た方がいい」

「ええ、そうする。ゲホッ、ゲホッ」

ローゼが服を着終える。

「もう休め」

「でも、昨日はあなただったから、今日の見張りは私が先よ」

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