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 激動の一日が過ぎ夜が明ける頃、薄明の中孤児院の庭の片隅に作られた小さな家庭菜園に大きな影がしゃがみ込み何やら作業をしている姿が見える。黙々と作業を進めるその影の足元には枯れた植物が刈り取られ並べられていた。ひたすらに作業を続けてすべての植物を刈り取るとその影は立ち上がると声にならない声を上げながら大きく一つ伸びをした。するとその背中に声が掛けられる。


「あら。アダムちゃん朝早くから土いじりだなんて精が出るわねぇ。」


「あぁおはよう。武器を失って探索にも出れないし何かやる事を探そうと思ってな。」


「あらそうなの?この菜園は好きに使ってくれても構わないけど見ての通りこの辺りで何か育てるのは至難の業よ?私達だって色々工夫はしてみたけどこの有様なんだから。」


 そう言って雑草一つ生えていない家庭菜園を見下ろすタカシはこの現状を受け入れている様だった。


「俺も農作業の経験は積んでるからな色々試させて貰うさ。しかしこの辺りの大地に元気が無いのはやはり最終戦争が原因なのか?」


「まぁその影響も少しはあるでしょうけど最も大きいのはジャンクヤードの存在でしょうね。壁の外のゴミだけでも相当量の汚染物質を含んだ廃棄物があるでしょうし、壁の中に至っては誰も情報を持ってないんだからどうなっているかなんて想像できないわよね?」


「確かにあれだけの量のゴミの中にはそういった物が含まれていてもおかしく無いか。それで言うならジャンクヤード自体は戦前はゴミ処理施設だったんだろう?何か奇跡が起こってその機能が復活すればこの辺りの大地も復活する可能性はあるってことか?」


「そんな事が出来れば時間はかかるでしょうけど徐々に回復していくでしょうね。勿論壁の中に配備されているであろう暴走機械達と戦いながら奥部の中心に残されているという戦前の施設にたどり着いた上で、暴走した管理AIを再度掌握するなんていう芸当が出来ればの話だけれど。」


 タカシが話す内容はアダムをもってしても実現するのは難しい条件に思える。いくら未知の領域でも神器と称される勇者としての装備を手にした上で挑戦する事が出来れば奥部の施設まで到達する事は出来るだろうが、この世界の剣の耐久性を考えれば複数の暴走機械を相手取り戦闘を行った時点で武器を失くすことになるのは明白で、管理AIとやらの掌握に至っては何をするのかも見当がつかなかった。


「それを聞いただけで実現不可能だと言うのが良く分かったよ。夢物語の話なんてせずに地道に土いじりさせて貰うとしよう。」


 肩を竦めたアダムは菜園の脇に置かれていたシャベルを取ると地面に突き刺し土を掘り起こし始める。軽々と堀進めて行くアダムの様子を見て彼の優れた身体能力を垣間見てタカシは目を細める。


「アダムちゃん惚れ惚れする様な動きで素敵よぉ~。でもあまり根を詰めすぎじゃ駄目よ?程々にしておきなさい。」


「あぁ、任せてくれ。色々試してみたい事もあるしのんびりやらせて貰うさ。」


「うちの院に来てから働きっぱなしなんだから休める時にしっかり休んでおきなさいよ?あまり休んで無いと思ったら私が強制的にお休みさせてあげるからね。それじゃ私は朝食の準備があるから戻るわね~。」


 何やら怖い内容を話すと一つウインクを残してタカシは去っていった。背筋にゾクりと寒い物を感じて動きを止めたアダムはそれを見送ると一つ気合を入れ直して作業へと戻って行った。

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