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 すっかり日が昇り辺りが明るくなって来てもアダムはまだ家庭菜園を手入れし続けていた。時間を掛けて固く痩せた大地を深く掘り返し整えはしたものの、自然の源であるマナの気配はまるで感じられない。


(ここまでマナが枯渇する事があるなんて実際目にしても信じられないな。たとえ邪神の呪いを受けたとしてもここまで酷い事にはならないと思うんだが、こうなってしまったのは人間が原因だと言うのが驚きだ。)


 アダムも勇者として様々な理由で滅んだ村や街に足を踏み入れる事はあったが、そのどの土地よりもジャンクタウンの土壌は酷い状態と言えた。自らの世界であるならば通常そういった場所は人間に害になる瘴気や毒気といったものが漂っていたりするものだがジャンクタウンにはそういった気配は見られない事から二つの世界が異なる事が良く分かる。


(浄化や解毒といった魔法を試して土壌の汚染を取り除けないか試してみてもいいんだがあくまでそれは最終手段だな。)


 女神の加護の元あらゆる物を浄化し正常な状態へと戻す事が出来る浄化魔法であるならば大地を枯らす原因となった汚染物質すらも取り除くことが出来るかもしれないが、魔法を発動するために消費するマナの量は多くこちらの世界で使用する際にどれ程のマナを使う事になるかアダムにも想像する事も難しい程だった。


(ドクターのおかげで資金は潤沢だからな。そう焦らずじっくりやっていけばいいだろう。とりあえず今日は露店でも回って何か使えそうな物を探す所から始めていくとしよう。時間が余れば官営店まで足を延ばして色々見てみるとしよう。)


 そこまで考えたアダムは踵を返して孤児院の中へと引き返す。庭を横断している間に既に目覚めた子供達の賑やかな声が漏れ聞こえて来る。早朝から元気一杯な声を聞きながら孤児院の中に戻ると丁度そこへヒナに手を引かれたノゾミがやって来た。


「アダムさんおはようございます。外へ出られてたんですか?」


「あぁ、おはよう。ちょっと時間が出来そうだから家庭菜園を弄らせて貰おうと思って庭に出てたんだ。」


 早朝から外へ出ていたらしいアダムを少し不思議そうに見ていたヒナだったがそれを聞いて合点がいったように頷く。


「そうなんですね。私達も色々育てようと挑戦したけど成功した事は無いので大変だと思いますが頑張ってくださいね。私達に出来る事があればお手伝いしますよ。」


「それはありがたい話だが年長組は色々忙しいんじゃないのか?」


 孤児院を運営しているタカシ以外に大人の手が無いこの院では年長組の子供達が年少組の子供の面倒を見る事が多い。今アキナがスカベンジャーになる為に時間を割いている事からヒナやヤスの負担が大きくなるのではないかとアダムは考えていた。


「ノゾミちゃんは手がかからないし三バカさえ大人しくしていれば忙しいという程でも無いんですよ?」


 会話を続ける二人の脇でまだ夢の世界に片足を突っ込んでいるらしいノゾミは眠そうな目をこすりながら佇んでいた。


「そうか?なら簡単な世話を頼むかもしれんがその時はよろしく頼む。」


「はい。お任せ下さい。アダムさんも色々大変だと思いますが頑張ってくださいね。」


 にこりと微笑みを浮かべたヒナはうとうとしているノゾミに話しかけるとその手を取り賑やかな声が聞こえて来る食堂の方へと歩いて行った。

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