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人知れずアダムの肉体の秘密を探ろうとドクターが考えを巡らせている頃、そんな事が企てられている等とは微塵も考えていないアダムはシンディと別れ孤児院へ向かっていた。良く分からない空間に意識を飛ばされていた事もあり時間の感覚が曖昧ではあったが空に登った太陽が沈みだしている事からかなりの時間が経っている事が分かる。
(もうこんな時間だったのか。思ったより時間が経ってしまっていたみたいだな。)
朝から探索に出てミュータントのボスと共闘してロボットを破壊する事に始まりつい先程まで滞在していたドクターの家での出来事まで含めて濃密な時間を過ごしていたアダムはそこで自分が昼食を取らずに過ごしていたことを思い出した。
(あの空間に居た時はまるで感じなかったが今になって腹が減って来たな。)
自覚すると強い空腹感に襲われ、家路を急ぐ事にする。西日を浴びながら孤児院へと帰ると丁度訓練を終えたのかアキナが庭に座り込んで休憩をしている様だった。
「オッサンおかえりー。あれ?剣はどうしたの?」
アダムの姿に気づき声を掛けて来たアキナだったが、探索に出る際は必ずアダムが腰に佩いていた剣の姿が無くなっている事に気づき不思議そうな顔をしている。
「あぁ今日は色々あってな使い潰す羽目になったから処分したんだ。」
「はぁ?あれだけのクレジット支払った剣を駄目にするなんて何があったんだよ!?」
倉庫の肥やしになっていたとはいえ官営店で取り扱われていて品質の保証がされていた物を駄目にしたという事実が信じられないのかアキナは驚愕の表情を浮かべていた。
「だから色々だよ色々。武器は駄目にしたがその分クレジットは稼ぐことは出来たからな十分元は取れたと思うぞ?」
「一体ジャンクヤードで何をしたらそんな事になるんだよ・・・。」
まさかジャンクヤードの奥部の壁の中に封じられているらしい暴走機械の一部が壁の外を彷徨っているとは夢にも思っていないアキナは言葉を濁すアダムの事を胡散臭そうに見つめている。
「教えてやってもいいんだが今のアキナは関係ない事だからなぁ・・・。アキナが院長に認められて探索に出れるようになっても解決していなかったら教えてやろう。」
「解決するような事なのかよ?まぁオッサンが武器駄目にするような状況ならアタシが知った所でどうにも出来ないだろうし聞こうとも思わないけど。」
「それがいいと思うぞ。俺も武器を失ったしこれ以上はシンディに任せる気でいるしな。」
「あねさんが対応しなきゃいけないなら余計にアタシには関係無い話じゃん。結構大事になるんじゃないの?」
アダムが相対したゴミ処理ロボットが救援を呼ぼそうしていた事を考えると、ジャンクヤード奥部の壁内に封じられているはずの暴走機械達が壁の外で行動しているのは間違い無いだろう。シンディが招集するスカベンジャー達の実力の程は未知数ではあったが、あれほどの装甲を持つ相手と対峙するにはそれなりの人数が必要になる事だろう。
「その辺の事は俺には良く分からんが外部からスカベンジャーを呼ぶと言っていたからそうなる可能性はあるだろうな。」
「オッサンとんでもない事に巻き込まれてんだね。それでも無事なのは流石だけどさ。」
「成り行きだったから仕方ないんだが今日は色々起きすぎて流石に疲れたぞ。武器も無くして丁度いい機会だし装備を整えたら暫く休息を取ってもいいかもしれないな。」
「オッサンずっと働いてたしそれがいいよ。やる事無くて暇になったらアタシの訓練に付き合ってね?」
この世界に転移させられて以来生活の基盤を作るため殆ど毎日探索やこの世界を知るための勉学に勤しんでいたアダムだったが、纏まったクレジットを手に入れた事で建前だけでは無く休息を取っても問題は無いだろうという考えを抱いていた。
「俺の言う事が参考になるかは分からんがそれでいいなら別に構わんぞ。」
「やりぃ!じゃあちょっと今から教えてよ。」
訓練を見て貰う約束を取り付けたアキナは嬉しそう笑顔を見せると地面から立ち上がり服に付いた土をパタパタと払った。
「今からか!?別にいいが院長の姿も見えないし訓練は終わったんじゃないのか?」
「院長が晩御飯作り終えるまでどうせ暇でしょ?ちょっとだけだし別にいいじゃん。」
まさか今から見てくれと言われるとは思っても見なかったアダムが戸惑っている隙に話を進めるアキナの行動に押されるようにして二人は軽く身体を動かし始めた。夕焼けに染まる孤児院の庭で動く大きな影と小さな影は食事を作り終えた院長が呼びにやって来るまでの間休むことなく動き続けていた。




