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来客として訪れていた二人が帰り少し時間が経った頃自宅地下に広がる研究室の一角でドクターは作業を進めている。集中しているのか先ほどまでの騒がしさが嘘のように口を紡いで鋭い視線を向けながら机に向かう姿は見た目の印象通りクールで知的な才媛と呼べるものだった。机の上にあるモニター以外に拡張空間を使ってまで流している映像にはどれもアダムが映り込んでいてどれも身体を動かしている事から先ほどの体力測定を行った際の映像だというのが分かる。保存された複数の映像を目で追いながら彼女の手は動き続けており何かのデータや数式を打ち込み続けていた。暫くの間そうしていたが動かし続けていた手を止め、座っていた椅子に身体を預けるようにして画面の中で動き回っているアダムの姿を追い始めた。その表情は何か納得いかない物を見ているようで憮然とした表情を浮かべていた。
「うーん。スコア自体は全体的に高水準で纏まってるねんけどなー。この程度のスコアであのロボットを装甲ごと両断出来るとは思えへんなぁ。手を抜いてたんやろか?」
独り言を呟くドクターの前に並ぶ画面の中のアダムはどれも真剣な表情で各種目に挑んでいてとても手を抜いているようには見えない。
「それともウチが計算を間違えたりプログラミングミスしたりしたんかな?いや、このイロハちゃんに限ってそんな事はありえへん。たとえカタログスペックから装甲が経年劣化してたとしてもマイケルのスコアに肉薄するような結果や無いとあんな事は出来ひんはずやしなぁ。何か秘密があるんかな?それともたまたまあの剣が戦前の技術でも使われてたんやろか?」
体力測定に使ったプログラムはドクター自らが開発した物で装置によって読み込んだ対象の身体的データを仮想空間に出力し怪我を気にせず全力で測定に臨めるという代物だった。無論テストもバッチリで現実で測定したデータと大差無い結果が得られるというのは証明されている。なので今回はあのロボットを剣を用いて両断するのに必要そうな運動能力を算出しマイケルのデータとして再現したのだが思ったような結果は得られてはいなかった。
「でもこのスコア差でマイケルに一撃入れてるんよな。学習させるデータが無いから攻撃パターンが少ないっていうても普通無理やと思うんやけど。戦闘経験で片付けられるんか?その辺も気になるなぁ。ちょこっと解剖とかさせて貰えへんやろか?」
思考を纏めようとする最中に浮かんだ考えにきらりと目を輝かせたドクターだったが直ぐにその考えを打ち消すように頭を振った。
「アカンアカン、ユリナちゃんに怒られるとこやった。今は大人しくして仲良くならんとな。けど検査中に採血するぐらいは問題無いやろか?うーん楽しみやなぁ。アダムさんから早く連絡来おへんかなー。いつ来ていいように色々準備しとかなアカンな。」
そこで映像を止めたドクターは席を立つと鼻歌混じりに部屋を出る。どのような準備をしてアダムを迎える気なのかは分からないが彼女の興味を強く惹く存在に位置付けられたのは間違い無いだろう。その事実を知るのは本人を除けば付けっぱなしになった画面に映るアダムだけであり、当の本人はその事を知る由もなかった。




