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見目麗しい女性がじゃれ合う姿を目の保養として眺めながらも二人から少し距離を取ったアダムはロボットを分解して得る事になる五万クレジット程になるというパーツの処分方法を考える。シンディ曰くジャンクタウンでは処分に困る代物で買い取り手が存在するのかと言うのが目下のところの不安である。官営店を頼ってみるのもいいが、手に入れる事になるパーツが武器に転用出来なければ向こうも商売である以上取引する事は出来ないだろう。
(上手く処分できればこの世界での一端のスカベンジャーとしてのスタートを切れるぐらいの装備は整えれそうだがこの街で上手く捌くことが出来るんだろうか?)
田舎の地方都市でしかないジャンクタウンの経済規模はこの世界の知識が乏しいアダムから見てもとてもいい状況とは言えなかった。シンディの酒場や露店が立ち並ぶ広場が存在する区画こそ活気があるがこの街の需要は殆ど全てをそこで賄っていて他の区画に足を延ばすと住民の住居以外の目的で使用されている建物は殆ど見受けられない程の有様で、五万クレジット分の取引を行うと言うのは困難な事の様に思える。
(大金を掴むチャンスを得たのはいいがこのままだと宝の持ち腐れになりそうだな。何かいい方法があればいいんだが。)
と、アダムがそこまで考えた辺りで自分の方にどたどたと足音が近づいて来るのに気づく。視線を上げると髪と白衣を乱したドクターがシンディに追われるようにしてこちらに駆け寄って来る所だった。
「アダムさーん!助けてー!シンディちゃんがいじめて来るねーん。」
先程自らでシンディへ向かって行ったはずが見事に返り討ちに遭ったのか、そのままアダムの背中に隠れると様子を伺っている。
「いじめるも何もアンタが向かって来たんでしょうが、私にすら勝てないのに良くそれで暴走機械のハッキングが可能だなんて言えたもんだね。」
アダムの背に隠れたドクターに呆れたような視線を向けながら近づいてくるシンディの服装は少し乱れる程度で非戦闘員同士とはいえ両者の力の差が如実に表れているようだ。
「理論的には絶対に出来るはずやねんけどなー。か弱いウチじゃあ証明する事もできへんかー。」
「まぁそうだな味方に囮になって貰ったとしてもあんなロボットが徘徊している場所を進むにはそれなりの運動能力が必要なのは間違い無いだろうな。」
アダムの背に隠れるようにして身体を掴んでいるドクターの羽織る白衣の袖から覗く腕は陽の光に殆ど当たっていない事が良く分かる程色白で華奢な腕をしていた。
「ようやく納得したんならさっさとロボットのパーツの所まで案内しておくれよ。こっちは処分の仕方も考えないといけないんだからね。」
「あぁ、その事やねんけど幾つか条件を飲んでくれるんやったら更にクレジット上乗せして処分してあげてもいいで?」
「そりゃ有難い話だが、あまりにこちらにとって都合が良すぎてその条件とやらを聞くのが怖くなるんだがどんなものなんだ?」
その言葉を聞いたドクターはひょいっと隠れていたアダムの背中から飛び出し乱れた白衣を正すと二人の方に向き直る。
「そないに難しい事ちゃうから安心しーや。アダムさんのダメになった武器をここに置いていってもらうんと、定期的にウチの研究所に通って貰って色々細かい検査に付き合ってくれるだけでいいで簡単な話やろ?飲んでくれるんやったら一万クレジットぐらいオマケしてあげるで。」
「たったそれだけでいいのか?言っちゃなんだがそんなに価値のある事とも思えんが。」
「この時代に好き好んで剣なんて使って戦ってる人のデータなんて中々取れるもんちゃうからね貴重やねんで?ウチはそれに価値を見出しただけやから気にせんといてや。ジャンクタウンやとこのぐらいの金額でも処分に困るやろうしいい条件やと思うけどなー?」
「確かにそれはそうだけどイマイチ信用できないねぇ。何かよからぬことでも企んでるんじゃないだろうね?」
「そんな訳ないやん!シンディちゃんが手伝ってもこれだけの金額の物を捌くのは大変やろうと思っての友人を助けようっていう親切心やんか。」
心外だとでも言いたげなドクターの真意を読み取ろうとしたのか彼女の事を軽く睨むようにして見つめていたシンディだったが軽くため息を吐くと首を横に振った。
「親切心ねぇ?そんな言葉が出てくるような人間だとはとても思えないんだけど、アダムさんはどうしたい?実際この提案以上の条件を出せる人間はジャンクタウンには居ないだろうし得な事は間違い無いよ。」
「悩ましい所だな。剣を渡す事に関しては別に構わないんだが、検査って奴が多少気にはなるなどんな事を調べたいのか聞いても良いか?」
「唯の健康診断の延長みたいなもんやからそんなに心配せんでもええで。色々項目があるから何回か通って貰わなあかんかもしれんけど二人が想像してそうなおどろおどろしい実験みたいな事はせえへんで?」
平然とした様子のドクターからは何もやましい物を隠すような気配も感じられず二人は顔を見合わせる。
「本当にそれだけなのか?」
「流石のウチもそんなに疑われると傷つくんやけど・・・。そんなに心配なら検査中に少しでも違和感を感じたり不審に思ったらそこで終了でも別にいいで?」
あまりに疑われるので気を落としたのか少ししょんぼりとした様子のドクターにもしかすると本当に親切心での申し出だったのでは無いかとアダムは若干の申し訳なさを感じ始めていた。
「いや、あまりにも好条件を出されてしまって何か裏があるんじゃないかと勘繰ってしまったんだすまいな。特に他意は無かったようだしその条件でロボットのパーツを引き取って貰って構わないか?」
アダムがそう言うと沈んでいたドクターの表情は見る見る内に明るくなっていく。
「ほんまに!?やっぱなしってのは許さへんで!?」
「一度決めた事を翻したりはしないから安心してくれ。それで?これから俺はどうしたらいいんだ?」
「今後の事もいいけどまずは支払いが先じゃないのかい?」
「それもそうやね!じゃあちょっと金庫見て来るから待っててやー!」
ドクターはそれだけ言い残すと返事も聞かぬまま白衣を翻すと部屋の外へと元気よく掛け出して行った。




