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二人が戦い始めて物の数分ではあるが、闘技台の上にはマイケルの攻撃によっていくつかのクレーター状の穴が戦いの傷跡として残されていて彼らの戦いの激しさを物語っている。劣勢に立たされているのは相変わらずではあったが圧倒的戦闘経験と技量によって脅威的な粘りを見せるアダムは追い詰められてはいるものの致命的な一撃だけは避け続けている。
(さて、どうしたもんか。単純な威力はとんでもないが攻撃の手札自体は少ないみたいで対応自体は出来るんだが攻めに回るのがちと辛い。いつもはやる側だが単純な能力差を生かしてのゴリ押しってのはやられる方はたまったもんじゃないな。)
近年自身がよく取っていた手をマイケルに使われた事で自分が無造作に薙ぎ払ってきた敵の気持ちが少し理解出来たアダムは苦笑いを浮かべる。単調な攻撃とはいえその威力の凄まじさは攻撃を受け続けた腕の痺れが物語っており一つ対応を間違えれば即敗北へと繋がる事を示している。
(受け続けていればいずれは焦って大振りでもしてこないかと思ったがそう甘くは無いようだ。驚くほどペースが乱れんな。普通これだけ攻めていい所が無ければ少しぐらいは焦りそうなものなんだが。)
少し距離を稼げた間に相対するマイケルの姿を見るが、戦闘開始から今に至るまで攻め続けてまるで成果が無かったにも関わらず焦った様子を見せずに淡々とアダムを追いかけて来る。それが余裕から来るものなのか判断が出来なかったが攻撃に転ずることを躊躇わせる程度の不気味さを漂わせている。
(このまま防御に徹していてもいずれは押し切られるだろうしこちらから仕掛けなければいけないだろうな。負けた所でこれは訓練だからな命を取られるわけでも無いし挑戦してみてもいいかもな。)
腕に痺れが残り劣勢に立たされている自分を奮い立たせるように笑みを浮かべたアダムは自分からじりじりと距離を詰めていく。この世界に至るまで圧倒的強者として君臨していたアダムが同族の人間相手にこれ程苦戦するのはマナの存在しない特殊な環境であったとしても非常に珍しい事で、これだけでも休暇の甲斐があったと言えるかもしれない。
「いい顔だな新兵。お前の持てる力をぶつけて来るといい、俺はそのためにここにいるんだ。」
じりじり進むアダムはその言葉に反応する事は無かったが、一気に速度を上げてマイケルの方へ踏み込んでいく。膂力の差は歴然であるため真正面からの打ち合いは避けているが横へ横へと回り込み細かく打ち合う事によって極力マイケルが力を入れにくい体勢になるように持ち込んで行く。だがそれでも尚振るわれる剣の勢いは凄まじい物で細かく積み重ねた物を一撃で粉砕できそうな威力を秘めていた。アダムは神経をすり減らしながら戦い続けていたが、やはり身体能力を生かした攻撃によって勢いに勝るマイケルの方へ均衡が傾いていく。地面に転がる破壊された闘技台の破片を避けるわずかな隙を縫って繰り出された重い一撃を受け流し損ねたアダムの手から無情にも剣が弾かれる。闘技台の上を音を立てて転がっていく剣を横目に見ながら大上段に構えたマイケルがアダムに向かって止めの一撃を振り下ろした。
時間にしては僅か十分にも満たない時間ではあったが目まぐるしい攻防に終止符が打たれ止めの一撃がアダムに振り下ろされた瞬間、モニターを見つめていたシンディは思わず目を背ける。いくら仮想空間とはいえ友人が叩き潰される姿を見るのは辛いと思っての行動だった。二人の戦いを映していたモニターからは振り下ろされた剣が闘技台に突き刺さる大きな音が聞こえて来る。剣を叩きつけるというよりか爆弾でも爆発したのでは無いかと疑いたくなるほどの音に視線をモニターへと戻すと最後にアダム達が戦っていた闘技台の端の辺りは完全に粉砕されて土煙で覆われていて結果がどうなったのかは確認する事は出来なかった。
「いくら仮想空間だって言ってもこれはやりすぎじゃないのかい!?あの娘いったいどんな考えでこんな設定にしたのさ!」
設定を色々弄っていたらしいドクターに向けて憤りながらもモニターを食い入るように見つめるシンディは止めの一撃を食らった様に見えたアダムの安否を確かめようとしていた。痛覚設定などは設定していないので危険性は無いはずだが、画面に映る光景を見るとそうも言っていられなかった。徐々に土煙が晴れていくと闘技台の上に立つ人物の姿が浮かび上がってくる。それは大上段から止めの一撃を振り下ろした姿勢のまま動きを止めたマイケルと彼の頬に握りこぶしを叩きこんでいるアダムの姿だった。




