表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/89

80

 体力測定には必要無さそうな種目にアダムは少し疑問に思いながらも、何もなかった空間に現れる明らかに不釣り合いな円形の闘技台の上に待ち構えるマイケルの手には一振りの剣が握られている。この世界では珍しい部類の武器のはずだがよく鍛えられた彼の肉体も相まって非常にマッチしており、歴戦の冒険者といっても良いほどの風格を漂わせていた。


「よく来たな。最後は特別種目の実践形式での戦闘訓練を行うぞ。ここでは負傷の心配は無いとはいえ、戦闘不能に追い込めるような有効打を相手に入れるかこの闘技台から出てしまうと試合終了だ。新兵、お前も好きな武器を選ぶといい。」


 そうマイケルが言うと視界に武器のリストが表示される、あらかじめドクターの手によりアダムが使う武器を登録してあるのかほとんどが近接武器の類で銃器の数は最低限しか含まれていなかった。手回しの良さに感心しながらも使い慣れた両手剣を選択すると神出鬼没なマイケル自身や、体力測定に使う器具などと同じようにアダムの目の前の地面に突き刺さる様に配置された剣が浮かび上がってくる。マナの無い空間にも関わらず使われる召喚魔法のような技術に最初は驚きはしたが、この短い間に繰り返し見ているので動揺を見せずに手に取って見せた。何もない空間から湧き出して来た様に見える両手剣は初めて手に取ったにしては驚くほどアダムの手に馴染んでいる。細部は少し違うもののその感覚は現在使っているあの剣と同じように思える程だった。


(シンプルな両手剣なんで似たような感覚で振れるのは分かるがここまで手に馴染む事があるだろうか?)


 感触を確かめる様に二度三度素振りを繰り返すが、やはりよく似ている気がする。だが現在使っているあの剣はゴミ処理ロボットとの戦闘でガタが来ており使える状態ではないし、こんな奇妙な能力は備えているはずも無いのでこの場に存在しているはずが無い。頭に浮かぶ妙な考えを払うように最後に大きく一振り剣を振るうとマイケルに視線を向ける。


「準備はいいか新兵?なら位置につけ、カウントが終われば試合開始だ。」


 闘技台の上で待ち構えるマイケルの前にはこれまで通りスタート地点を示す光が差している。如何に堂に入った構えをしているとはいえ、接近戦はアダムの土俵でありどういった条件でもこの世界の住人に後れを取る事は無いと負けるとは思えなかったが、すべての種目で圧倒的なスコアを残しているマイケルに少し警戒の意識を向けながらもアダムが位置に着くと視界に大きく数字が表示される。


(純粋に身に着けた技術のみで人間と相対するのは随分久しぶりだが、さてどうしたものか。どういった動きをしてくるか分からんしまずは手堅く様子見でも・・・)


 そんなことを考えているとカウントがゼロを示しそれと同時にマイケルがその見た目からは想像できない程機敏な動きで突っ込んでくる。勢いそのままに両手に持った剣をアダムに振り下ろしてくる。最初は様子見でもと考えていたが、長年の経験から来る勘で嫌な気配を感じ取る。その感覚に従いアダムは即座に回避行動を取るとそのまま距離を取る。その場からアダムが飛びのいた後に通過した剣は闘技台にぶつかるとそのまま地面の一部をえぐりとり闘技台の上にクレーター状の痕を残した。


「おいおいおい、随分な威力じゃないか。何を食ったらそんな力が付くんだ!?」


「驚いている場合か新兵?来ないならこっちから行くぞ!」


 その威力に驚き距離を取るアダムに対して逃がすまいとマイケルは即座に地面から剣を抜くと距離を詰めて来る。体力測定のずば抜けたスコアが示すように生身の人間には考えられない動きを見せる彼の勢いに顔を引き攣らせながらも猛攻をいなし続けるアダムはどうやったらこの状況を打開できるか思考を巡らせていた。


(技術はともかく威力は大したもんだ。力だけなら鬼人族や巨人族の戦士ともいい勝負が出来るんじゃないか?つまりただの人の力では敵わないって事何だが・・・。幸いにもこれは命の取り合いって訳では無いからな、このままやられっぱなしで終わるってのも癪だし多少無茶してでも何とかしたいが・・・)


 かつて冒険の中で相対した異種族の戦士達を彷彿とさせるようなパワフルな攻撃をアダムは類稀なる経験と技量を駆使して上手く捌いていたが、数度打ち合いその力を受け流しただけで自身の腕には軽い痺れが残っている。両者の間に圧倒的な身体能力の差がある以上回避に専念してもいずれは捉えられるだろう。何とか隙を探そうと耐え続けながらもジリジリと後退していくアダムはじわじわと闘技台の端の方へと追い詰められていく。


「どうしたどうした!手を出さないと俺に勝つことは出来ないぞ!それともこのまま場外へ押されたいかぁ!?」


「そう言うならっ!もう少し!手心を加えて欲しい!モンだがなっ!」


 野太い雄たけびを上げながら迫ってくるマイケルに対して声を張り上げるアダムは劣勢に立たされてはいるが明るい表情をしておりこの状況でも勝負を諦めてはいない事が伺える。闘技台の端まで追いやられてはいるがアダムの硬い守りにマイケルも攻めあぐねているようだった。両者ともに激しく動いているが、状況は膠着しており何か一つのきっかけで流れが変わりそうな雰囲気が辺りを包んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ