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アダムが訓練教官マイケルの指示の元懸命に体力測定を続けている様子をシンディはモニター越しに眺めている。種目によってはマイケルと呼ばれるプログラムによって呼び出される物の使い方を教わりながらおっかなびっくりといった様子で使っているが、残しているスコア自体はかなり上位の方の記録を残しており、彼の能力の高さが伺える。
「にしてもプログラムの成績だけ何でこんなに高い設定になってるんだろうね・・・?前に私が実験台になった時は普通だったような気がするけど。」
何故設定の時点でそれほど一位のスコアを引き上げたのか意図が分からずに疑問の声を上げるシンディだったが、その疑問に答えれるのは別室でロボットの残骸を分解しているドクターだけだった。
「ま、あの娘の事だから何か意図があるんだろうね。意味のない事はしないだろうし。」
常人には意味の無い行動に見えてもドクターにとっては意味のある行動であった事など彼女と出会ってからの数年で何度も見て来たシンディは今回の事もアダムに関係している事なのだろうと読めてはいたが、その意味までは理解はしておらず、純粋にアダムの応援をする事にしていた。シンディにここまではっきり見られているとは思っていないのか真剣な表情で身体を動かし少しでもいい成績を残そうと奮闘するアダムの姿を微笑ましく思い見守っている。モニターに映るアダムはプログラムの指示に従って順調に種目をこなしており、体力測定も既に終盤に差し掛かっていた。
「スコアも随分高いしようだし測定が終わればご褒美でもあげようかしらね。」
この体力測定が終わった時の事を考えるシンディは装置の上で眠ったように横たわっているアダムが起き上がる時の事を考えてクスクスと楽し気に笑っていた。
「よーし新兵!よくやったな。中々いい成績を残しているから誇ってもいいぞ!次が最後の種目だ、心してかかるように!」
各種目が終わるごとに定型文の様に掛けられていた野太い声に少し変化が見られた事にアダムは少し反応する。この体力測定が始まってからひたすら走り、飛び、そして様々な器具を使い様々な部分の筋力の強度を図ってきたが次が最後の種目だという事に少し残念な気持ちも芽生える。 この不思議な空間では、マナが一切知覚できなかった。体内にあるはずのマナすら感じられず、まるで最初から存在しなかったかのようだ。
普段は膨大なマナによって自然と強化されている肉体。だが今のアダムは、純粋な身体能力だけで測定に挑んでいる。それに気づいてからは、力をセーブするという発想すら消えていた。他の人間と同じ条件で競う――その貴重な感覚を、全力で楽しんでいたのだ。結果としてはマイケルに大差をつけられてしまってはいるが他の上位の記録とはいい勝負ができておりアダムとしては満足のいく成果が残せていた。
「教官最後の種目はいったい何なんだ?」
「それは最後のスタート地点についたら自ずと分かるだろう。楽しみにしておくように。」
その言葉にアダムはおや、と疑問の表情を浮かべる。ここまでマイケルに質問するとあらかじめ答えが用意されているような返答しか帰ってこなかったが、ここに来て何やら含みを持たせるような返答に何やら風向きが変わったような気配を感じ取っての事だった。指示されたスタート地点もこれまでと違い少し距離があるようで離れた位置に光の柱のような物が見える。
「最後の種目はハードだからな。心の準備が出来たら向かって来るといい。俺はあそこで待っているぞ。」
その言葉を残して掻き消えたマイケルにもう驚く事はしなかったが、アダムは今までとは違う反応を見せる彼の様子にやはり違和感を覚える。体力測定の間器具の使い方や次の種目について質問した時は素直に教えてくれており、先ほどのように返答を濁す事は無かった。
(これまでとはまるで違う返答だが最終種目用の演出か?少し気になるが向かわないという手は無いしな。さて、何が待っているんだ?)
さえぎる物が何もない空間に浮かぶ光の柱に向けて歩いて行くと自分の世界でよく見かけたような闘技場で見かける闘技台がぽつんと置かれておりその中心で腕組みをしながら仁王立ちに待ち構えるマイケルの姿があった。




