表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/89

74

(そろそろシンディも起きただろうか?時間的には起きていてもおかしくないと思うんだが。)


 巡回している警備員から時折向けられる鋭い視線にしばらく耐えていたアダムがゆっくりと立ち上がるとチャイムを鳴らそうとする。


(もしこれで応答がなければ出かけている可能性も考えて一度出直してみてもいいかもしれないな。)


 アダムがそう考えながらチャイムを鳴らすと、少し間を置いて返答があった。起き抜けの声だった前回と違いまだはっきりとした声をしており、警備員からの冷たい視線に耐え続けた甲斐があったようだ。ほっと安堵の息をつくとアダムは口を開く


「約束も無しに押しかけてすまない。アダムだ、ちょっと報告したい事とそれに関連して相談したい事が出来てな。中に入れて貰っていいか?」


「うん?直接来たって事はあまり人には聞かせたくない話題ってことかい?まぁ構わないよ少し待ってな。」


 面倒ごとを扱い慣れているだけあって察しのよさを見せるシンディは機械越しの通話を切り上げる。すぐにアダムを向かい入れる様に門が開いていく。遠巻きに注視していた警備員達はその様子に本当に知り合いだったようだと判断に警戒を解くと各々の持ち場へと散っていった。アダムも自分へ向けられる視線数が減った事に気づいたが特に気にする事無くシンディ宅の敷地内へ足を踏み入れる。門が自動で閉まる音を聞きながら収納魔法の中から両断されたロボットの残骸を取り出すと元の形に戻すように切り口を合わせると、バックパックの中から大きな布を取り出しロボットの姿が見えないように包み込む。


(露店で適当に買った布だがサイズ的には丁度よかったな。強引だがこれで隠して運んできたと言えば言い訳ぐらいにはなるだろう。)


 サイズ的にはちょっとした収納棚や家具を運んでいるように見えるかも知れないが、カモフラージュと言うにはあまりにも雑で豪快な代物で、これを持って街中を歩いて来たと言い張るのは厳しいように思えるがアダムは満足気に頷くと抱え込むようにして持ち上げると敷地内を進んで行く。扉を開けてアダムが来るのを待ってくれているシンディは前に見た野暮ったい服装を着用しており目のやり場に困る事は無さそうだった。


「こりゃまた随分な大荷物だねぇ。それが家に直接来た理由かい?」


「そうだ。中々ショッキングな物なんでここでは見せる事は出来ないがな。」


「もったいつけるじゃないのさ、じゃあリビングで見せて貰うとしようかね。」


 興味津々といった様子で布にくるまれた荷物を眺めるシンディだったが、アダムの深刻そうな表情に深く追求せずにリビングへと案内する。階段を一段上がるごとに後ろから聞こえて来る重そうな足音にかなりの重量の物をアダムが持っている事が分かるが、それが一体何なのかは想像が出来なかった。


「それで?その大事そうに抱えてる荷物の正体は何なんだい?わざわざ家まで来たんだから重要な物なんだろう?」


「まぁそうだな。重要だと思うがあまり驚かないでくれよ?」


 自分に相談するためにここまで荷物を持ち込んだ割には煮え切らない態度を取るアダムの姿に疑問の表情を浮かべるシンディだったが、布を取り外す手に迷いを見せるアダムが意を決した様にして荷物を包む布を外した。パサリと布が落ちるとアダムが持ち込んだ荷物の全貌が明らかになる。


「アダムさん・・・これってまさか・・・」


 両断されているとはいえ金属で出来たずんぐりむっくりのそのフォルムに件のロボットの残骸であろうと分かったのか、驚愕の表情を浮かべ口を開くがそれ以上の言葉が続かず、口をあんぐりと開けたまま動きを止めてしまう。


「今アンタが想像している通り、これは恐らく例のゴミ処理ロボットとやらで間違いないと思う。先に言っておくが勿論俺が単独で倒したわけじゃ無いぞ、相談したいのはその事だ。」


 いつも自信あり気な美人が見事に台無しの表情を浮かべている様子にやはりやりすぎだったかと考え無しに行動したことを少し後悔するが、もう後には引けないので開き直って話し始める。


「俺だって勿論危険な目に合う気は無かったさ。だからあの依頼でマークされていた辺りには、意識して近づかないようにしてた。だが、コイツに出会ったのは全然違う場所だったんだ。近くにデカい機械の残骸があるすり鉢状の大穴に作られたミュータントの巣は分かるか?あそこの近くに依頼の為に探索に出たんだが、その時にミュータントの巣が襲われていてな。一応群れの生き残りと協力して何とか破壊する事は出来たんだが・・・」


「ちょっと待ちなよ、じゃあミュータントと協力してロボットを倒したってのかいっ!?」


 ロボットの残骸を持ち込まれるという衝撃から立ち直る前にミュータントと協力したという新たな衝撃を受けシンディが息を吹き返す。


「襲われてた巣のボスがハウリングドックの変異の大きく進んだ個体でな、俺の言葉が理解できる程度の知能があったようで運よく協力できたんだ。良く分からん能力でスカベンジャーの遺していったいった刃物の類を投擲してロボットにダメージを与えて止めまでさしてくれてなあれが無ければ俺も無事では済まなかったと思うぞ。俺も剣をダメにしたしな。」


 信じられないといった様子でアダムとロボットの残骸を交互に見つめるシンディは絶句して言葉が出てこないようだが、探索の後でただ薄汚れているという訳では無く、所々が破け血痕の残るアダムの恰好に戦いの跡が垣間見える。ハウリングドックのボスがどの程度の強さだったのか分からないシンディはアダムの言葉が事実かどうかは量りかねていたが、実際に目の前に鎮座している残骸が戦いの結果を如実に示していた。


「ミュータントと協力する人がいるだけでも驚きだってのにそんな剣一本でロボットの装甲を叩き切ったってのも普通は信じられない話だよ。」


 実際に目の前にある残骸が無ければ酒の席での法螺話としか思えない内容だが実物を目の当たりにしている以上認めざるをえない。信じられないような事を成し遂げたアダムの方に視線を移すと、何とも所在なさげな様子でこちらを見つめていた。その様子に何となく嫌な予感を感じる。


「これ以外にもまだ何か言う事があるのかい?」


 その問いに逡巡する様子を見せるアダムは非常に言いづらそうにしながらも口を開く。


「その・・・ボスが止めを指す前にだな、このロボットは救援を呼ぼうとしていてな。残り何台いるのかは分からんが他にロボットがジャンクヤード内にいるのは間違いない・・・と思う。」


「・・・そりゃ本当かい?」


 その静かな問いにアダムが頷くとシンディは表情を硬くし黙り込んでしまう。重苦しい雰囲気が漂い始めるリビングで居心地悪そうにしながらもアダムは自分が思っていたよりずっと深刻な事態になっているのかもしれないと感じ始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ