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結局ジャンクヤードからシンディの自宅までの道中でアダムの頭に妙案が浮かぶことは無かったが、途中露店で幾つか誤魔化すための道具を手に入れ少し気持ちが楽になったアダムは門の脇に付けられたチャイムを鳴らすが、暫く待っても中から応答は無かった。
(出かけてるのか?それともまだ寝てるのか?酒場に行ってるって事はないだろうが、少し時間をつぶした方がいいだろうか?)
今日は突発的に訪れた事もあり、もしシンディがまだ寝ているのならその邪魔をするのは不味いかとアダムは考える。ほぼ毎日のように深夜まで酒場を開けている彼女の貴重な睡眠時間を削るのは本意では無い。そのままバックパックを地面に降ろすとシンディ宅の塀にもたれ掛かる様にして時間を潰そうとするが、その際腰に佩いた剣の事が目に入る。
(つい剣を握る手に力が入って思いっきりロボットに叩きつけたが刀身は大丈夫だろうか?特に確認する事もせずに戻ってきてしまったが・・・。)
恐る恐るといった様子で鞘から抜いてみるが、少し鞘から持ち上げただけでも刀身の状態が悪い事が分かる。ロボットの強固な装甲に常人離れしたアダムの膂力によって何度も叩きつけられた事によりかなり刃こぼれが見られる上に柄の部分もぐらついてしまっている。見るからに砥石程度ではどうにもならなそうな状態に頭を抱えてしまうアダムだったが、そもそも大した追加機能も持たないこの剣で暴走機械と対峙してその上両断までしてのける事自体がありえない事なのである。そのような無茶をすればその代償を支払う事になるのは至極当然の事だった。
(官営店の店員にでも頼めば修理を頼めたりしないだろうか?他にシンプルな近接武器の類があれば買い換えてもいいんだが期待できそうにないしな・・・。)
この世界の装備に共通する事だが装備の質が上がる程、追加機能が多く付与されており武器の威力や使い勝手を良くしているようだが、アダムからすれば使い慣れない物ばかりでなんとなく手を出しにくいと感じていた。その点この両手剣はシンプルな作りでアダムもこれまでと変わらない感覚で扱う事が出来たが、それがこの結果を招いていた。かつて世界の危機を救うためアダムが使っていた装備の類は神々の協力のもと作り出した神器とも呼べる代物から最低でも各種族の名工が力を存分に振るって造った名刀と呼ばれる類の物が多く耐久性も他の物とは比べ物にならない物が多かった。
(どれか一つでも手元に残していれば苦労する事も無かったかもしれないが、当時はあれが最善だっただろうしな。今後悔してもしょうがない。)
この世界では制限がかかっているが元の世界ですべての力を使い戦闘に臨む場合のアダムは神々にも比肩しうる実力を誇っており、そのような化け物じみた力を持つ者の手に武装が残るのはいらぬ心配を人々に与えるためすべての装備を返還していた。それでも結局山奥で生活する羽目になったので効果があったのかは分からないがその判断は間違ってはいないと思っていた。
(無いものねだりをしてもしょうがないしこれからどうするか・・・)
座り込みながらボロボロの両手剣の様子を確かめていると強い視線を感じた。顔を上げるとその視界にこの区画を巡回する警備員がこちらへ向かってくるのが見えた。その表情には強い警戒の色が浮かんでおりアサルトライフルを手に携えながら近づいてくる。その様子に訝し気な表情を浮かべるアダムは剣を鞘に無理やりしまうと立ち上がった。
「おっと変な気は起こさないでくれよ。ここを通った住人からこの家の前に剣を構えた不審人物がいるって通報を受けてな。アンタここで何をしてたんだ?」
立ち上がって見せたアダムに対してそれ以上動くなとでも言いたげな様子で警戒の色を見せる警備員の男にそれ以上の動きを制される。
「ここの住人に用があってな。応答が無かったからここで待とうと思ってたんだがもしかして不味かったか?」
「アンタのその恰好は少し問題だが不味いって訳でも無いな。ここの住人とは知り合いなのか?」
アダムは警備員の問いかけに自分の恰好をちらりと見るジャンクヤードの探索の後の為全体的に薄汚れておりハウリングドックのボスの傷を見る際についた血液の痕もついたいたりと、荒事に縁のない住民の多いこの区画をうろつくには少し刺激の強い恰好かもしれない。
「そりゃ勿論知り合いに決まってるだろう。さすがに関係ない人の家の軒先で座り込んだりはしないさ。見苦しい恰好で悪いと思うが急いで報告しないといけない事があってなそれでここまで来たんだ。」
「約束を取り付けて来たわけでは無いんだな?」
「急ぎの用事でな。約束も取らずに来たのは…まぁ俺の落ち度か。出直した方がいいか?」
「そこまではしなくてもいいさ、他の住民から通報されたから注意しに来ただけだしな。ちゃんと訪れる理由があるなら別に構わないさ。ただ不審な行動を取ろうとしたらすぐに分かるからな。」
釘を刺すようにして離れて巡回へと戻っていく警備員の男だったが明らかにアダムの事を警戒しており、他の警備員達も前回訪れた時に比べても明らかにシンディ宅に近い距離に配置されている。そこまで警戒しなくてもいいのではないかとアダムは思ったが自身の見た目が浮いている事は自覚しているので警備している側からすれば見過ごせないのだろうと納得すると再び腰を下ろした。




