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傷口が塞がり呼吸落ち着いて来たボスの周りでは配下のハウリングドック達が嬉しそうな鳴き声を上げながら駆け回っている。ボス自身は失った体力は回復していないため大人しくしているようだったが、表情は大分穏やかな事からもう心配する必要は無さそうだった。微笑ましい様子を眺めていたがもう問題は無さそうなのでアダムはロボットの残骸を回収して帰ろうと思ったが、喜びを露わにする配下のハウリングドックの一部が足元にじゃれつく様に纏わりついて来て身動きが取れずにいた。危機的状況を救い、ボスを助けた事で信頼を得たのか人懐っこい姿を見せる彼らは人間社会で飼育されている飼い犬と変わらないように見える。
(こうしてみると爪や牙が発達している事を除けば普通の犬と大差は無いように見えるな。元を辿れば軍用犬だったそうだしそれもおかしく無いか?折角触れ合える程度に仲良くなったんだこれを無くすのは勿体ない気がしないでもない。それにボスのマナへの親和性を考えるとこれ以降も成長する可能性もあるしこのまま友好的な関係を築ければ今後役立つかもしれないな。)
アダムの世界では体内に取り込んだマナの総量が一定量を超えるたびに様々な能力が飛躍的に上昇する事がある。位階が上がる等と表現される現象だったが厳しい環境に身を置く者がより位階を上げやすいとされ戦闘を生業とする者達の実力の目安とされていた。勿論人間だけでは無く魔物や原生生物にもその現象は発生し高い能力と深い知性を宿し人と共存する者が現れる事さえあった。この世界で同じことが起こるかは分からないがこの群れのボスの存在はそういった可能性が僅かながらあるかもしれないとアダムに思わせるものと言えた。
(成り行きでロボットを倒す羽目になったが面白い出会いもあったし良しとするか。しかしなんでロボットはこんな所に現れたんだ?スカベンジャーが失踪していた地点とはそれなりに距離があるはずだが・・・?)
アダムもロボットの対処はシンディが出した依頼を受けてやってくるであろうスカベンジャー達に完全に任せる気でいたので、ここ数日もあの依頼で調査すべきだった地点とはなるべく離れた所で依頼をこなしていた。今日もそのつもりでこの辺りを訪れていたが運悪く襲撃現場に居合わせ一方的な虐殺になりそうな雰囲気を見逃せず手を出す羽目になってしまった。最後には救援も呼ぼうという素振りも見せていたロボットの事を考えるとシンディには報告しておかなければ不味い事になるかもしれない。
(行動パターンが変わったとすれば危険度も増すかもしれないし早めに伝えておかないと不味いかもな。今の時間なら自宅にまだいるだろうから報告しに行ってみるか?)
撫で回していた手が止まった事にハウリングドックはもう終わり?とでも言うような視線をアダムに送る。最後にわしゃわしゃと撫でてやると立ち上がりロボットの残骸を回収する。どうやって持ち運ぶかは悩んだが結局は収納魔法へと収める事にした。持ち運ぶこと自体は可能だったが街中を歩くには目立ちすぎるため仕方ない事ではあった。虚空に吸い込まれるようにしてロボットの残骸が消えていくのをボスを含めハウリングドック一同は驚きの視線を向けていたが、アダムがあまりに堂々としているのでそこまで気にする事は無かった。
「じゃあ俺はそろそろ帰るとするわ、邪魔したな。なるべくこの巣には人が来ないように報告はしておくから、暫く大人しくしてるんだな。もし迷い込んだ運の悪い奴が居れば手心を加えてやってくれ。」
伏せながらジッと見つめて来るボスにそう言うとアダムは斜面を駆けあがっていく。その姿が見えなくなるまでボスは視線を外さずに見つめていたが見えなくなると配下のハウリングドックに指示を出すと自分は身重の妻と一緒に横穴に入っていった。ボスの指示のもとハウリングドック達が動き出した音を聞きながらアダムはシンディへ報告するために帰路を急ぐ。勢いでロボットを倒す事となり、その噂が広まれば注目を集める事になってしまうかもしれないが、もし今日ロボットと遭遇するのが別のスカベンジャーだったならロクに抵抗できずにキューブへと変えられてしまい報告される事は無かっただろう。結果としては大金に変わるかもしれないロボットの残骸と、ジャンクタウンに現れた脅威についての情報を得たアダムはシンディにどう説明すれば自分への注目を少なくできるかと頭を悩ませながらも帰路に着いた。




