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 アダムがボスの変化に気を取られていると更なる状況の変化が起こる。彼らの巣穴の周囲に残るゴミ山の中から多数の何かが飛び出してきた。それは明らかにボス目指して集まるとその周囲を囲うように展開された。


(あれが?上位種が持つとされる特殊能力というやつか?だとしても些か火力不足な気がするが?)


それはアダムの目には多少尖った廃材や精々が放棄されたナイフ程度にしか見えず見るからに金属製のロボットに有効であるとは思えなかったが、動き出したソレが大部分が弾かれながらも幾つかはロボットの装甲へ突き刺さるのを見て考えを改める。


(見た目以上に威力がある…?強化魔法に近い能力まで持っているのか?群れのボスというのは伊達ではないようだな。)


予想が外れたのはアダムだけでは無かったようでロボットも同じだったようで警戒するように攻撃を控えると頭部についたモノアイだけが不気味に光らせていた。


一方でハウリングドック達も次弾を周囲から集めたボスの周りで姿勢を低く保ちいつでも飛び掛かれるように準備しているようだが、動きを止めたロボットが気になるのか警戒の色を強めるだけで指示はまだ出ないようだ。


(このまま膠着状態か?あのロボットが何故ここを襲ったのかは分らんが許されることは無いと思うが…)


 動きを止めたロボットにアダムが疑問を浮かべた直後モノアイが不規則に明滅を始める。


「機体ノ損傷ヲ・・・確認。当該地域ノ・・・安全ガ確保・・・サレルマデ・・・防衛レベルヲ・・・引キ上ゲ・・・マス。」


突如として声を上げたロボットだが、途切れ途切れな上に抑揚や感情といった物がまるで感じられず決められた言葉をただ流しているだけといった様子だった。だがそれが流れた事はこの場に明らかな違いをもたらす事になった。再び動き始めたロボットは先ほどまでとは打って変わり砂埃を上げながら激しく動き回りながら明らかに弱ったハウリングドックから仕留めようと動きを変え始めた。勿論彼らもただやられるはずも無くボスの能力を軸に抵抗を試みていたが徐々に弱った仲間を庇い被弾する事も増え動きに精彩を欠いていき戦況は劣勢へと傾いていく。


(あわよくばこれを使ってみたかっただけなんだが一方的な虐殺を見過ごして帰るというのも目覚めが悪いしな・・・。これがはっきりと魔物然とした相手なら見捨てて帰る事も出来るがあの本を信じるならこいつらは元をたどれば人間が飼育していたものらしいしな・・・。まぁなるようになるか!)


 人間の友人として過ごす犬とそう大差のない見た目をしているミュータントが一方的に蹂躙されているのを眺め続けるというのは流石に目覚めの悪いものがあり、寝そべりながら戦いの様子を観察していたアダムは立ち上がるとそれなりに傾斜のある斜面を下っていく。戦闘を続けている両者はおかしな介入者が現れた事により互いに距離を取り警戒を強める。


「あー、言葉が分かると思えんが、下がってていいぞ。ご先祖様に感謝しながら見守ってるんだな。」


 伝わらないだろうと思いながらも身振りで下がっているようにと示すと、激しく抵抗しながらも仲間を庇うために一番多くの傷を受けたボスは、一声吠え声をあげると傷ついた仲間を支える様にして下がっていった。その思いの外知性を感じさせる動きに眉を上げるアダムだったが、自分の目の前のロボットの動きに意識を向ける。


「新タナ・・・清掃対象ヲ確認・・・脅威度小・・・防衛レベルヲ引キ下ゲ・・・マス」


「俺があいつ等より弱いって?その判断後で後悔するなよ?」


 腰に佩いた両手剣を抜き打ち肩に担ぐようにして不敵な笑みを浮かべている目の前の男の装備は貧弱であり、自身の装甲を抜くことは出来ないとロボットは判断する。銃火器も持たず金属で出来たただの両手剣を振り回すだけの存在が距離を開けられてしまった他の清掃対象に勝っているとも思えなかった。このジャンクヤードで幾人ものスカベンジャーを清掃してきたAIによる判断は的確で使い手の事を考慮しなければその判断は間違っていなかっただろう。ハウリングドック達と相対していた時よりも動きを緩め緩慢な動きで射撃を開始した。


「そんなものがっ!俺に当たるかぁ!」


その攻撃をあっさりと回避したアダムはロボットへと肉薄するとその手に握る両手剣を薙ぎ払う。金属同士がぶつかる音が響きその衝撃に耐えられずにロボットが弾き飛ばされる。そのまま地面に倒れるかと思われたがキャタピラを上手く動かしたたらを踏むようにして体勢を立て直して見せた。


(――硬い!戦闘用じゃない言う機械ですらこんな強度なのか。信じられん。)


 ビリビリと痺れの残る手を振りながら吹き飛ばしたロボットの方を見ると切断こそできなかったが胴体には大きくへこんだ後が残されていた。この一撃でアダムの評価を改めたのか機体の損傷が引き金となったのかは分からないが音声すらなくロボットの動きが再び大きく変わる。


(これがこのロボットの上限か?俺の踏み込みにもある程度反応してるし、並のスカベンジャーなら太刀打ち出来ないってのが良く分かる動きだが攻撃があまりにも正直すぎる。)


 的確に相手の弱い部分を突くと言うのは間違いではなかったが逆にそこしか突かれないとなるとアダムにとっては対応も容易な物で隙をついては剣を叩き込んでいく。いかに堅牢な装甲といえど並外れた膂力に裏打ちされた剣戟を何度も叩きつけられた今剥がれ落ちその中に隠された精密機械を覗かせている。


(この分だと割とあっさり倒れてくれそうだが何事も起きてくれるなよ。)


両手に握る剣に力を籠め今一度大きく踏み込み止めになる一撃を叩き込もうとするアダムだったがそれまで激しく明滅していたロボットのモノアイが掻き消える。長年の経験からその行動に嫌なものを感じたアダムが足を止めようとした次の瞬間には掻き消えたモノアイから強い閃光が放たれた。


一瞬の閃光の後アダムが感じたのは自分の腕に走る熱と痛みそれと僅かな焦げ臭さだった。肩をかすめるように貫いたロボットからの正体不明の攻撃はアダムの鋼の肉体を削ぎ落し焼き切っていった。実に数十年ぶりの感覚に驚きながらも不用意にその一撃を食らったことに対して内心舌打ちする思いだった。


(油断したつもりは無かったが俺の身体を傷つけれる存在なんて早々いないと慢心はあったかもしれないな。ゴミ処理用ロボットとして侮ったか。)


自嘲気味に笑みを浮かべと一つ鋭く息を吐くとアダムは剣を握りなおす。


(この一撃は勉強代として覚えておこう。だがこれ以上は無い、さっさと倒させてもらうぞ。)


これ以上の被弾は許さないと立ち回るアダムとロボットの戦いはその後は一方的に進むことになる。あの選考による攻撃は切り札のような物だったようで連発できるような物でも無い上にエネルギー効率も悪いものだった様で動きに精彩を欠いたロボットは程なくして装甲の剥がれた個所にアダムの一撃を食らうと胴体を両断されるようにして崩れ落ちた。


「損傷甚大・・・周辺ノ僚機ニ・・・」


その不穏な言葉をアダムが最後まで聞くことはなかった。飛来した廃材がモノアイを貫き、モノアイから光が完全に消え去る事になったからだ。

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