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数日前に幾つか受けた依頼は残すところ一つとなっており、最後の一つはアダムの見つけたミュータントの巣の近くでスカベンジャーの遺失物を探すという物だった。運悪く巣に足を踏み入れ犠牲者を出しながら命からがら逃げる事に成功したが、その際に装備を落として来たのでなんでもいいから使えそうな物があれば、回収してほしいという依頼のようだが日付を見ると数か月は経過しているようだ。数か月も前の依頼が今さら残っている理由は分からなかったが、三馬鹿の道具を試すには都合がよかった。
「しかしこれ程のゴミの中から使えそうな装備品を探すなんて無茶に思えるが見つける事は可能なのか?」
視界に映る膨大な量のゴミを前に途方に暮れたように呟くアダムだったが、諦めたように辺りを探し始める。前回この辺りを探索した時には知識が無い状態で彷徨い歩くだけだったが、今はタカシの教えにより少しは見るべき場所も理解していた。
(不自然に崩れている箇所や物を動かした形跡がある場所を探せば掘り出し物が見つかる可能性があるんだったな。)
タカシの教えを参考にしながら見落としが無いように探索を続けるが、目当ての物は中々見つからない。普通のスカベンジャーなら気配を消しながら行動するような場所で自分の居場所を知らしめるかのように盛大に物音を立てながら進むアダムは、ミュータントに発見でもされ囲まれればバックパックにつけた道具の出番があるだろうと考えておりその瞬間を心待ちにしていた。
(この辺りまで来ればいつもなら巡回している犬やらネズミやらに会うんだがな。警戒でもされてるのか?めぼしい物も見つけれ無いしもう少し巣に近づいてみるか。)
徐々に巣に近づきながら時折細い道沿いのゴミ山を崩して探してみたりもしたが見つかるのはズタボロに壊された装備品ばかりで使えそうな物は見当たらなかった。その上いつも巡回しているミュータントの姿がある辺りまで来てもその気配は無く折角の道具を使う機会も得られずにいた。何をやっても上手くいかない気がして多少苛立ちを募らせるアダムがゴミの山を大きく蹴り出すとその拍子に見覚えのあるキューブが転がり落ちて来る。この辺りはシンディの調べたスカベンジャーがよく失踪する地点からは距離があり、ここにあるのは明らかに不自然だった。それに全体的に赤黒い色をしていたあの時の物より全体的に赤みがかっているように見える。違和感の正体を探るべく、手に取ろうとするとぬるりと表面が滑りキューブを落としてしまう。ゴミ漁り様に手には滑り止めのついた手袋をはめているアダムはいったい何が滑ったのかと自身の手に視線をやると、べったりと赤い物が手袋に付着していた。ジャンクヤードにおけるキューブの正体をドクターから知った今それが何を示しているのかを理解したアダムは顔をしかめる。
(ゴミの臭いに混じって分かりにくいがこれは間違いなく血の臭いだ。と言う事は俺が見つけたキューブの状態をかなり時間が経過した物だとして仮定すると、これは最近作られた物って事になるか?)
まだ乾ききってすらいないキューブに嫌な予感がよぎるアダムだったが、それを裏付ける様に地を揺るがすような咆哮が巣がある方から聞こえてる。予感が確信に変わってしまった事にさらに表情を硬くするとこの後の行動を考える。
(これはほぼ間違いなくミュータントの巣が例のロボットとやらに襲われていると見ていいだろう。今のは群れのボスか何かが戦闘を開始したって事じゃないか?見に行ってみるか?いや、普通のスカベンジャーなら間違いなく引き返して報告する事を選ぶだろうな。)
悩みながらも自然と足は巣の方に向かっている。よく見ると道には何かが這ったような跡が残っておりそれを辿っていくと、通り道はそこかしこで崩れているようだ。その場所の近くには必ずキューブが幾つか転がっていて交戦の痕が見られる。巣に近づくにつれその数は増していき、大きな咆哮以外にも様々な鳴き声が聞こえてくるが苦痛に呻くような物が多くミュータント側が劣勢に立たされているのは間違いないだろう。
(どちらも人間の敵と言えばそうなんだがどうもこの声を聞いて引き返すのは目覚めが悪いよな。)
言い訳をしながらも気配を消しながらジリジリと進んで行くアダムはすり鉢状になっているミュータントの巣までたどり着く。地面に寝そべり底の方の様子を伺うとおよそ十匹程のミュータントの生き残りと一機のロボットと言われる大人の人間ほどの大きさの機械が交戦状態にあるようだった。ミュータント側には、犬というより大型肉食獣に近い大きさのボスがいた。その周囲を、通常種とそこからさらに筋力の発達が見られるハウリングドックたちが傷つきながらも固めていた。普段群れの一員として見かける化けネズミの姿は既に無くやられたか逃げ出したのだろうということが伺える。
一方ロボットはというと機動力の無さそうな見た目をしているが移動用につけられたキャタピラを上手く動かしながら犬達の相手をしている。寸胴のような胴体に取って付けたようにくっついている腕は片腕を捥がれているようだがそれ以外は大した損傷も無く、残ったほうの腕の先から何かを発射し自分を囲む犬達に対して牽制射撃を加えている。頭部には目の代替なのか赤く光るモノアイが明滅しておりボスの指示に従い連携を取れた動きを見せるハウリングドック達に上手く対応しているようだ。
(うまく連携を取って機械による吸い込みの的を絞らせないようにしているがいかんせん攻撃力不足のようだな。倒れている犬の数を見るに群れの殆どはやられてしまっているか?)
懸命に戦う群れの生き残りのおかげで巣の内部で倒れているミュータントに関してはキューブに変えられてはいないが、地面を染める血液の痕から既にこと切れているであろう事が分かる。
(何故逃げようとしない?戦力差は歴然じゃないか勝てる見込みは無さそうだが。)
アダムがそう考えたとほぼ同じタイミングで上手く逃げ回っていた群れの生き残りの一匹に向けてロボット腹部の装置による吸い込みが始まる。寸胴のような胴体が開き凄まじい勢いで吸引が始まっているようで懸命に地面にしがみつく仲間を助けようと背後から他のハウリングドック達がロボットに攻撃を加えるが機体を揺らすだけでなんら痛痒を与える事は出来ていなかった。抵抗虚しく少しずつ少しずつロボットの方へ引き寄せられていくハウリングドックにいよいよ限界が来たのか悲し気な鳴き声をあげると、身体が地面を離れロボットの方へ吸い寄せられて行く。次に来る凄惨な光景をアダムは覚悟していたが、群れのボスが、迷いなく間に入り受け止めるように立ちはだかった。嬉しそうな鳴き声をあげる配下のハウリングドックに吠え声を一つ掛け距離を取らせると大きく遠吠えを上げる。その大音量の遠吠えに思わず耳を塞ぎ顔を逸らしたアダムがもう一度ボスの方に視線を向けると彼の身体が淡い光を発しているのが目に付いた。
(なんだあれは・・・?そう言えば図鑑には特殊能力を宿す個体もいるとか書いてあったな?あれがそうだろうか?)




