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 酒場の窓から入ってくる陽の光が大分弱くなって来た頃にようやく紙束の確認を終えたアダムは従業員の女性のアドバイスを聞きながら幾つかの依頼を受ける事にした。その頃には店の中も客の数が増え始め、徐々に活気が戻ってきていた。


(そろそろ賑やかになってくる頃合いだからお暇するとするか。シンディは戻ってきてないがおばちゃんに言付けでも頼めばいいか。)


 アダムが座るカウンターの周りにもシンディ目当てで来ているスカベンジャーらしき男達の姿もちらほらと見える。彼らからしたら目立つ髪色の男がカウンターに陣取っているのが珍しいのか警戒の視線を向けていた。迂闊に彼らを刺激する気も無いアダムは従業員の女性に声を掛けると帰宅の準備を始める。


「おや?アダムさん帰っちゃうのかい?そろそろあの娘も着替えて出てくると思うけど?」


 男性人気絶大なドレス姿を見ることなく帰ろうとしているアダムに意外そうな表情をしながらも返された紙束を受け取る。


「あぁ、ファンの数も増えて来たしなこの場所を譲ろうと思ってな。よろしく言っておいてくれ。」


 カウンターに居座る邪魔者が帰ろうとしていると察したのか、向けられていた警戒の視線が外されるのを感じながら外へと出た。随分と陽が傾いており思いの外長い時間資料とにらめっこしていたことが分かる。


(依頼は受けたが今からジャンクヤードに出かけるのは流石に無理だな今日は大人しくしておくか。)


 夕暮れが近づき薄暗くなり始めている通りを歩きながら途中露店でちょっとした食料品等を買い込んで帰ることにする。十分うまくやっているがタカシ一人の力で運営されている孤児院の食糧事情は厳しいようで居候させて貰っている身としては家賃として納めるクレジット以外にもこうして食料などを差し入れたりしていた。


 孤児院の敷地内に入るとタカシの指示を出す声が聞こえて来る。今日も庭でトレーニングをしているらしくアキナがタカシの指示の元身体を動かしているようだった。


「あら、アダムちゃんお帰りなさい。今日も依頼を受けてたの?」


「そうですね。シンディから直接依頼を受けれるようになって報酬額が上がったんでこれは院長への差し入れです。」


「あら~いつもありがとう。気を使う必要なんてないのに。悪いわねぇ。今手を離せないから食堂まで持って行っておいてくれるかしら?もう少しでアキナちゃんの訓練も終わりだから。晩御飯は豪勢にさせて貰うからね。」


 アダムが両手に持つ袋の中に入った食料品を見て喜色を表すタカシだったが訓練に手心を加える気は無いのかアキナに激を飛ばす。


「ほらほら動きが鈍ってるわよ!そんなんじゃ一流のスカベンジャーになれないわよっ!アダムちゃんのおかげで晩御飯はご馳走なんだからもうひと踏ん張りしなさいな!」


 土にまみれ疲労困憊といった様子で身体を動かすアキナへの激励の声を聞きながら院内へ入ると、食堂へと向かう。食事の時間が近い事もあり食堂内にはよくタカシの手伝いをしているらしいヒナとノゾミの姿があった。


「あっ、アダムさんおかえりなさい。」


「・・・おかえり。」


「ただいま、食料品を買って帰って来たんだが、何処に置けばいい?」


 その言葉にきらりと瞳を光らせたヒナは素早く近寄ってくるとついて来るようにと身振りで示す。大人しくアダムがついていくとキッチンに入った所でパタリと扉が閉まる。後ろを振り返ると付いて来ていたノゾミが閉めたようだった。それを確認するとヒナが声を潜める様に喋り出す。


「いつもありがとうございます。三馬鹿に気づかれると盗み食いされるかもしれないんで気を付けて下さいね。」


 いつもはタカシに渡すだけで、その後どうなっているのかまでは分からなかったが、キッチンでは食料品を巡っての攻防が毎度のように行われているようだ。キョロキョロと三馬鹿の気配が無いか探るようにしているヒナとノゾミの様子から察するにあの三人は盗み食いやつまみ食いの常習犯のようで警戒されているようだ。


「この辺りに置いて大丈夫か?」


「あ、ハイッ大丈夫です。」


 キッチンに置かれた調理台の上に両手に持った袋を置くと中を確認したヒナは嬉しそうに笑顔を見せる。その様子にノゾミも中を見たそうにしていたが身長が足りない為上手く見えない様だったので、アダムが抱える様にして中を見せてあげると、表情に乏しいながらも小さく感嘆の声を上げていた。


「これだけあれば数日は豪華な食事が作れると思います。本当にありがとうございます。」


「ありがとう。」


「格安で住まわせて貰ってる訳だからなこの程度はさせてもらうさ。何か俺に手伝えることはあるか?」


「いえ、大丈夫です。時間的にそろそろ院長もこっちに来ると思うのでアダムさんは外に出てお疲れだと思うんで食事の時間まで休んでください。」


 依頼をこなしたと言っても今日は対して身体を動かしていた訳でも無いので疲れも無かったが、やる気を見せる二人の様子に自分がでしゃばるのも野暮かと思ったアダムは大人しく引き下がる事にした。


「わかった。晩飯を楽しみにしてるよ。」


「ハイッ!ありがとうございました!」


 元気よく頭を下げるヒナと静かに頭を下げたノゾミに見送られるようにしてキッチンを出ると、食堂の入り口からマサ、ヒロ、カズ、がキッチンを伺っているがの見えたが、アダムが出て来たのに気づくとすっと頭を引っ込めて立ち去って行ったようだった。


(もう気づいたのか、大した嗅覚だな。)


 荷物を持って歩く自分の姿を確認したとも思えなかったが、何か変化を察したのかキッチンを監視していた三馬鹿に感心しながらもアダムは自室に帰っていった。

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