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一人で歩くとき、他人の視線を気にする事はほとんど無い。だが自らの隣を歩くシンディの存在が、否応なくそれを意識させた。だが当の本人は、そんな事など気にも留めず堂々と通りを歩いていた。二人に向けられる視線はかなり多く通り過ぎざまに振り返って確認する人の姿も見られた。単純に美男美女の組み合わせが気になって振り返っているのか、シンディの事に気づいて確認しているのかは分からないため、ひやひやしながら歩いて来たが酒場にたどり着くまでに声を掛けられる事は無かった。
「ほら?大丈夫だっただろう?意外と皆気にしないのさ。」
分厚い眼鏡をクイっと上げながらドヤ顔を見せるシンディは扉に手を掛け店内へ進んで行く。アダムは何とも言えない表情を浮かべていたが後に続いて中に入る。客の数が少ない時間帯である事もあり、店内は閑散としていた。カウンターにはいつもと同じ年配の女性従業員が暇そうに待機しており、揃って入ってきた二人に気づいたようで面白い物でも見つけたような表情を浮かべていた。
「同伴とは見せつけてくれるじゃないの。いつの間にそんなに仲良くなったんだい?」
「そんなもんじゃないさ、受けた依頼の情報を得るためにドクターの所に連れていって貰ってたんだよ。」
ひやかすような言葉を否定しながらカウンターに腰掛けると後ろから纏わりつく様にシンディが抱き着いてくる。
「私はデートしてもよかったんだけどね。この色男に振られちゃったんだよ。」
「アダムさんそりゃもったいないことしたねぇ。有り金はたいてでもこの娘とデートしたいって輩はごまんといるってのに。」
「そんなに人気ならデートなんてしたのがバレたらいろんな奴に恨まれるだろうそれだけはお断りだな。そんな事よりさっさと依頼の話をしてほしいんだが?」
話の邪魔をしようとするシンディを振り払うと本来の目的を果たそうとするアダムはさっさとしてくれと言わんばかりの態度でカウンターをコツコツと叩く。
「しょうがないねぇ。それなら初めに今回の依頼の清算からしておこうか。」
「一か所しか調査できてないのに本当に報酬を貰ってしまっていいのか?俺のやった事なんてキューブを拾って帰ってきただけだぞ。」
「結果的にはそうだけど、もし調査の段階で例のロボットに遭遇してたら他のスカベンジャーと同じ結果になってたかも知れないんだからそれぐらいはちゃんと支払わせてよ。」
暴走してしまっているロボットとはいえ自分より強い事は無いだろうと考えているアダムからすれば、命がけでも何でもないお使い程度の感覚ではあったが、確かに普通の人間が遭遇した場合の結果は見つけたキューブが物語っている。そのキューブを持ち帰った事よってようやく脅威の存在が判明したので対応も取る事が出来ると考えると、報酬を受け取れと言われるのも分かる気がした。
「ならありがたく貰っておくよ。いくらぐらい貰えるんだ?」
「1000クレジットだね。額が低いなんて文句言わないでよ。原因が暴走したロボットだなんて予想してなかったんだから。」
「とんでもない、むしろそんな金額を貰っていいのか不安になるぐらいなんだが。」
何時も受けている汎用依頼の三倍以上の金額を提示されアダムは動揺を見せる、キューブを見つけた事を途中報告しただけで、後の事はドクターとシンディが進めたような物で、アダムとしては普段の依頼の方が手ごたえがあるぐらいだった。
「暴走機械に出会うかもしれない依頼がこれっぽっちの報酬しか貰えないなんて格安もいい所だよ。こんなことになるなんて思っていなかったから悪いね。追加報酬でもだそうか?」
「いや、これで十分だよ。色々いい経験させて貰ったからな。それよりそっちも色々物入りになるだろうからそっちに回して早く解決してくれよ。」
「悪いね、本当に助かるよ。口座に振り込んどくから今度確認しといてね。」
報酬の送金が済むのを待ちながら考えるのはシンディから受けれる依頼の報酬の多さだった。確かに今回の依頼は運よくトントン拍子に進んで行き労せずして報酬を得ることが出来たが、運が悪ければゴミ処理ロボットやらと交戦する可能性も有った訳で危険度も上がっていたが、一般的なスカベンジャーにとっては命がけの仕事でも、アダムにとっては然したる問題でもなかった。
「あぁ、ありがとう。他には優先すべき依頼は無いか?」
「うーん熱心なのはありがたいけど、個人で受けれそうな物だと後はどれも同じような依頼が多いかな?おばちゃん何かあったっけ?」
「特に思い浮かぶ物はないねぇ。チームを組んで受けるような依頼ならミュータントの巣攻略なんてのがあった気がするけどアダムさん一人だろう?なら適当に選んでこなして貰うしか無いんじゃない?」
そう言って従業員の女性は依頼がまとめられた例の紙束を取り出すとアダムに手渡す。相変わらずの威容を誇るそれをぺらぺらとめくると内容の確認を始める。
「時間かかるだろうから私は席を外すけど適当に目を通してみて気になる物があればいつでも私やおばちゃんにいつでも声かけてくれていいからね。」
資料に目を通しているアダムにそう告げると自身はゴミ処理ロボットへの対応をするために裏へと引っ込んで行く。残されたアダムは時折女性従業員に声を掛けて依頼の内容の確認を進めていく。




