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帰りの道中はアダムも体調を崩すことなく無事シンディの自宅へと戻って来る事が出来た。停車した車から下りると体をほぐすように一つ大きく伸びをする。
「今日は世話になったな。とりあえず他の地点を回る必要が無くなったからこの端末は先に返しておくぞ。」
アダムから貸した端末を手渡されたシンディはそれを受け取り今回の依頼の為に登録した情報を削除する。
「いやーミュータントかスカベンジャー崩れのごろつき共が犯人かと思ってたけど、暴走機械だったとはねぇ。アダムさんが運よくあのキューブを持って帰ってきてくれなかったら分からない所だったよ。」
「何か所か回っていたら俺も件のロボットに出会っていたかもしれないしな。そういう意味ではあの時間に調査に出たのは幸運だったな。」
「そうだねぇ、それなりの腕の持ち主でも帰ってこなかったのはそういう事だったんだろうね。」
ジャンクヤードの奥部に封じ込められているはずの暴走機械が行方不明の犯人だというのはこの街の住人には予想外の出来事でそれが調査に出たスカベンジャーの被害が拡大した結果に繋がったのだろう。
「まぁ犯人が分かれば対処する事は出来るんだろう?他のスカベンジャーも今は近づいていないようだしこれ以上被害が出る前に解決するといいな。」
「そうだねぇ。暴走機械が相手だと始めから分かっていれば対応できる連中を呼べばいいだけだからね。まぁすぐにとはいかないだろうけど一か月以内には解決できるんじゃない?」
「色々やらなきゃいけない顔役も大変だな。依頼以外でも雑用程度なら手伝う事は出来るし手が足りなければいつでも言ってくれ。」
そう言い残すと立ち去ろうとするアダムだったが背後から伸びた手に服の裾を掴まれる。
「ちょっと何処へ行こうってんだい!?どうせうちの店で報酬を貰おうと思ってるんだろう?一人で行こうとするんじゃないよ!」
「アンタの家から一緒に酒場まで行くって?冗談はよしてくれ万が一アンタの親衛隊に見つかったらどうするんだ?昨日の事があった直後なんだぞ?」
昨晩酒場の華である彼女を独占したアダムが今日も同伴して酒場を訪れる所を彼女の親衛隊に見られれば流石にひと悶着あるかもしれないと危惧していたがシンディはそう思ってはいないようで服を掴んだ腕が離れる事は無かった。
「いつもの服装とは違うんだからバレやしないよ。女性スカベンジャーなんてこの街でも珍しい物でもないしね。」
確かにそれはシンディの言う通りだが、これ程目立つ女性スカベンジャーがこの街で活動していれば、今さら噂にならないはずがない。そんな事は考えるまでも無かった。
「結局向こうで会うならそれでいいじゃないか。態々一緒に行く必要は無いだろ?」
「今一緒にいるんだから別に分かれて行かなくてもいいじゃないのさ。別々に向かって私が万が一途中で暴漢に襲われたら後で後悔するだろう?」
まさか自分の頼みが断られると思っていなかったのムキになったように食い下がるシンディはアダムの腕を抱え込むようにしっかりと掴み直すと意地の悪い笑みを浮かべ上目遣いに見上げて来る。
「私はこの状態のままついて行ってもいいんだよ?」
シンディを引きはがすのは簡単だがそうをした所で彼女は同じことを繰り返すであろうという事はその表情を見れば一目瞭然の事でアダムは少し逡巡を見せるが観念した様に言葉を絞り出す。
「・・・わかったよ。一緒に行けばいいんだろ。」
「最初っからそう言っておけばよかったんだよ!ほらちょっとこっち来な!」
抱き着くようにして腕を抱え込んでいるシンディと生産性の無いやり取りをしながら酒場へ連れて行くよりかは言う事を聞いて少しでもマシな状態で酒場へ向かった方がいいと判断しての事だったが、その思惑通りに腕を開放したシンディはその手をしっかりと握ると引っ張るようにして二階へと上がっていく。
「じゃあ少しそのままで待ってるんだよ。私がいない間に出て行ったら目にもの見せてやるから覚悟しておきなよ。」
「分かった分かったから、さっさと用意してきてくれ。」
内心で少し考えていたことを言い当てられ少し動揺しつつもソファに腰かけリビングから出て行ったシンディを待つ事にした。行きと同じようなが掛かるかと思っていたがすぐに戻って来たシンディは分厚い眼鏡を掛けており申し訳程度の変装を試みてくれたようだ。だが見た目の上では大きくは変わっておらず、眼鏡を付けても昨日ほどの効果は見られそうにない。
「それを付けても変わらんと思うが・・・」
何か言いたげな様子のアダムをギロリと睨み圧を掛け黙らせると満足そうに頷いた。
「心配性だねぇ今の時間なら対して人もいやしないんだから大丈夫さ。ほらさっさといくよ」
謎の自信をみなぎらせるシンディは、嫌そうにしているアダムを立たせると背中を押しながら進んでいった。




