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「とにかく知りたかった情報は知れたんだそろそろお暇しないか?俺はともかくシンディ忙しくなりそうだしな。」
「それもそうだね。色々やらないといけない事が出来ちゃったし早めに帰らないとまずいかも。」
ドクターの優秀さ故にキューブの正体があっさりと判明したが、それによって新たな脅威の存在が判明する。ジャンクヤードの壁内に押し込められているはずだった暴走機械の存在は、ジャンクタウンの殆どの住人が実物を目撃する事は無く、都市伝説のように実在しているかどうかも不確かなものだったが、キューブの存在により不意に輪郭を露にする。これにシンディは対処しなければいけなかったが、何機のロボットが存在しているのか、どこから現れたのか、他の機体は居ないのか等情報がまるでない現状では不測の事態に対応できるような実力の確かな者達に声を掛けるしか無かった。それにかかる費用の事を考え内心頭を抱えたくなるが、この被害が出だして一年近く経過している以上早めに対処しなければいけなかった。
「うーん大変そうやねぇ。ウチに出来る事があればいつでも言ってや。出来る限り協力させて貰うで。」
「アンタの言葉はいまいち信じれないけど何かあればまた連絡するよ。」
「えー!?なんでなんよ。」
「日頃の行いってやつだよ。ショックを受ける前に研究に集中して約束をすっぽかすのをどうにかしな。」
今日ここに来るまでにあった苦労をかなりの確率でしているであろうシンディの言葉には気持ちが込められており、日頃の苦労が伺える。
「ウチはこんなにシンディちゃんに協力してんのに。アダムさんもひどいと思わん?」
「初対面でこんなこと言いたくないが俺も同意見だな。今日一人で来ていたらドクターに会うことなく帰る事になっていただろうからな。」
初対面のアダムにすら苦言を呈されてしまい力が抜けたように座り込むと悲しげな表情で項垂れしまう。
少し言い過ぎただろうかと思い口を開こうとすると、シンディによって止められる。
「イロハはいつもこの調子だから気にするんじゃないよ。アタシが初めて他の人連れて来たから構ってほしいだけなのさ。」
そう言って立ち上がると帰ろうとするシンディの腰に抱き着きそれを阻止しようとするがあっさりと振りほどかれその反動で盛大に転ぶと小さな子供が駄々をこねるかのようにヤダヤダと騒ぎ出す。静かにしていればクールな美女といった印象を受けるドクターがそのような姿を晒しているのにいたたまれない気持ちが生まれるアダムは手を差し伸べると抱き起こす。
「いやん、アダムさん優しいー!好きになっちゃうわ。何かウチに聞きたい事無い?3サイズ以外ならなんでも教えたげるで!」
「ならこのキューブの処分はどうしたらいいんだ?売れはしないんだろう?」
「えーそんな事でええの?面白くなーい。本来やとこれを別の機械で細かく砕いて自然に還したりしてたらしいけど、使い道はないやろね。邪魔やったらウチが処分してあげよか?」
「それはありがたいが本当にいいのか?」
「ええで、でもこの大きのはウチには持てんから帰る前に別の場所に移してもらうで。」
換金できない以上処分できなければ嵩張り場所を取るキューブは邪魔になるためドクターの提案は渡りに船と言えた。
「ならさっさと移動させてここを出ようじゃないか。」
シンディの言葉に急いでキューブを詰めると、ドクターに先導を頼む。こっちやで。と長い廊下に出るとそのまま並ぶ部屋の内の一つに案内される。中はアダムには用途が分からない器具や機械が並べられていたが、魔術の研究や実験に使われる使われる部屋によく似た雰囲気を感じていた。
「こっちの台の上に置いてくれたらいいし。」
指示された台の上にキューブを二つ並べるとドクターは満足気な表情を浮かべる。どういった方法で処分するかは想像が出来なかったが、手間がかからずに済んだので礼を言うと部屋の入り口にもたれかかるようにして待つシンディの元に戻る。
「じゃあイロハまた何かあったら連絡するから、その時まで今日言った事忘れるんじゃないよ。」
「んー?大丈夫大丈夫またねー。」
その明らかにおざなりな返事に、ドクターがキューブに興味を惹かれている事が分かる。優れた集中力を持つ彼女が何かに興味を向けた場合それ以外の事にはあまり反応を示さない事を理解しており、何を言っても無駄だと悟りそのまま帰路に着くことを選択する。その後ろに続くアダムがちらりと部屋の中を見ると不気味な笑みを浮かべながら何やら実験の準備を始めているドクターの姿が目に入る。その異様な姿からスッと視線を外すと見なかった事にして去っていった。二人が遠ざかっていった部屋からはドクターの楽し気な独り言だけが響いていた。




