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差し出されたサンドウィッチを頬張るとアダムは少し驚いたように目を見開く。シンディが自ら作ったと言うがその味は酒場で出している品物よりも良い出来になっている。
「こりゃうまいな、あんた料理できたんだな。」
「これぐらいで料理が出来るとは言ってほしくないけどねぇ。ま、一人暮らししてるんだ出来て当然だと思わないかい?」
「いーや、俺の知り合いである程度の地位についていて料理が出来る奴はかなり少なかったぞ。人に任せきりになりそうなもんだが自分で作るのは大したもんだと思うぞ。」
「そんなに褒めて貰えるほどの出来じゃないと思うけど、ま、褒められて悪い気はしないね。」
素直な称賛を受けて嬉しそうにしているシンディは最後のサンドウィッチを頬張るとまだ食事を続けているアダムの事をじっと見守っている。
「・・・あまり見られると食べづらいんだが。」
「いいじゃないか別に人に料理を振舞うなんて事そうあるもんじゃないんだ。反応ぐらい見せとくれよ。」
聞く耳を持たない様子に小さくため息をつくとアダムは上機嫌なシンディの視線を感じながらも食事を進め、用意されたサンドウィッチを片付けるとシンディに礼をする。
「美味かったよありがとう。」
「お粗末様、腹ごなしも出来たしそろそろ出発しようじゃないか。」
ソファから立ち上がりそう言うシンディはキッチンへ食器を運ぶとそのまま部屋を出る。階段を降りるにつれ、周囲の空気はひんやりとし、視界も次第に暗くなっていった。シンディが壁に手を伸ばし、スイッチを入れる。かちりという音と共に、広い屋内に明かりが灯った。
玄関脇の通路を抜け、扉を開くと、その先には窓のない部屋が広がっている。再びスイッチが入れられ、薄闇に包まれていた室内がゆっくりと姿を現した。雑多に置かれた物の中で、アダムの目を引いたのは、静かに鎮座する一台の車だった。その車は武骨な見た目をしておりとても俊敏に動くような物には見えなかった。始めてみる異界の乗り物を珍しそうに眺めているといつの間にか背後に立っていたシンディに声を掛けられる。
「アダムさん車を見るのは初めて?」
「見るのも乗るのも初めてだな。知識としてはどういった物なのか少し理解してるがこれが本当にそんなに便利な代物なのか?」
実物を目の当たりにしてもその性能に関しては半信半疑といった様子のアダムだったがシンディは自信ありげな笑みを浮かべると静かにたたずむ車に手を伸ばす。ただ触れただけにしか見えなかったが突然車内の明かりが灯り内部を照らす。アダムが驚いてる間に車内の座席に座ったシンディが何かを操作すると今度はひとりでに車両後部の扉が開く。一連の光景は魔法技術を研究し高みに至った術者が扱う魔法とも見まごう物だったがこの世界の住人であるシンディが扱えるはずもないためこの世界の技術による物だろう。
「アダムさん驚いた?じゃあ今開けたドアの方においでよ。」
あまりにも狙い通りの反応を見せるアダムを見て楽し気なシンディはひとりでに開いた扉の元へとアダムを案内する。そこはちょっとした収納スペースになっているようで荷物を置いて置けるようになっているらしい。動揺冷めやらぬまま指示に従い荷物を預けるとゆっくりと扉が閉まっていく。
「今のはどうやって扉を開けたんだ?」
「これはこの車を制御するシステムが自動的にやってくれてるのさ。私の車は少し古い型だからあまり多くの事は出来ないけどね。それでも凄いもんだろう?」
「確かに凄いがそれは危険じゃないのか?今でも人間を襲う機械と争っている所もあるんだろう?」
「この国で機械が暴走する原因になった大元の人工知能は既に破壊されてるし、余程高難易度な遺跡や遺構にでも足を運ばない限りはハッキングされる事なんてありはしないよ。そもそも古い型とはいえ戦後に作られた物だからねある程度の対抗策は講じられてるし心配いらないよ。」
付け焼刃の知識しか持ち合わせていないアダムはその対抗策が何なのかは想像すらできなかったが、この世界の理解しがたい謎の技術に頭を悩ませたところで意味は無いという事はこれまでの生活で理解しているので深く考える事は放棄してしまっている。
「こういった物とは無縁の生活を送っていたから良く分からんが持ち主がそう言うならそうなんだろうな。」
「私ぐらいしか車を持ってないこの街じゃあ車に縁が無いってのは当たり前の事なんだけど剣を武器にしてる人にそう言われると真に迫った物言いに聞こえるね。」
その言葉にアダムは一瞬ドキリとしたが、まさか目の前にいる人間が別の世界からやって来ているなどとは夢にも思わないシンディは気にする事無く助手席の扉を開くと手招きする。
「それじゃあそろそろ出発するとしようじゃないか。ほら、アダムさんはここから乗り込みな。」




